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「本当にそうなってると錯覚するくらい、信じ切る必要がある」


ノクスはソファに座り、隣に座るリーリエに白状した。


「それで、その空気がどんな状態の時に相手がどんな状態になるか見るんだ」

黙っててごめん、とノクスは頭を下げた。

リーリエは興味深そうに話を聞いていた。


「反応を見ながら調整するって事ね。見えないなりにやり方があるのね」


ノートに何やら書き込みながら、時々一人で納得していた。


「前にビアンカに話したら、精神論だって切り捨てられたけどね」


ノクスが横目で盗み見ながら言うと、リーリエのペンがピタリと止まり「そう」と素っ気ない声が返ってきた。

ノクスは思わず目を逸らして、こそばゆそうに笑った。


「ノクス、魔法陣の中央でそれができる?」


ノクスは頷いて、カードを踏まないように歩を進める。

黒い魔力にパタパタと倒されるカード達は、ノクスにお辞儀しているみたいでリーリエは微笑ましく見守った。

やがて中央に立つノクスは手を挙げた。

今、カードはほぼ全て内側に向かって倒れている。

ノクスは居住まいを正し、深く息を吐いた。


ノートを片手に観察するリーリエが小さな歓声をあげた。


カードが、内側からゆっくり立ち上がって行く。

それはまるで花が開くようで、中心で泰然と立つノクスがなんだか神々しい。


「すごい!すごいよノクス!」


はしゃいで拍手するリーリエに集中を切らされ、カードはまたパタパタと倒れた。


「なるほど、吸うのをやめても周りに黒い魔力は漂い続けるのね」


リーリエは文字や数式や時には図も書きながらブツブツ言って一人で納得していた。


「ねえ、リーリエ。ビアンカにあげたような魔道具とか、魔法陣で何とかできないの?」

疲れた様子のノクスが言う。


リーリエは1番外側のお辞儀カードから視線を上げ、ノクスに言った。


「ないわね。カード見るまで気づかなかったけど、あなた白い魔力も少し吸ってるみたい。これじゃあ魔法陣も魔道具も使い捨てだわ」

もちろんこのカードもね。と言って乾いた笑いをこぼした。


「森の別宅に行ったら、たくさん練習しましょうね」


沢山カードを作るからと意気込むリーリエに、ノクスは情けなく「うん」と頷いた。少しでも楽をしようとした自分を恥じた。

二人の未来のためにと健気なリーリエに、ときめいてもいた。


しかしこの日、リーリエから「寝ているノクスもみたい」と、まるで寝顔でも見たいかのようなおねだりをされ、ノクスは魔法陣の上で眠った。

リーリエ、もしかして


「……実験自体、楽しんでる?」


「――早く寝て」


リーリエは、息をひそめるようにしてノクスを見つめていた。

その表情は、どこかやわらかかった。




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