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廊下に出ていたシュトラウスはフリードリヒの顔を見るなり険しい顔をした。


「王国の太陽にご挨拶申し上げます」と、曇り空みたいな挨拶をした。


「お待ちしておりましたぞ、スヴァルトハイム公。陛下はどうなさいました」


シュトラウスは冷たい声を出す。


「公とは馬車が一緒だったのでな。付いてきてしまったのだよ。シュトラウスと仲がいいとは知らなかったのでね」


フリードリヒも金の瞳を冷たく揺らした。

シュトラウスは「お優しいことですな」と口元だけ笑い、リーリエを見た。


「最近は手紙のやり取りなどさせていただいておりますよ」


ねえ、と水を向けられ、リーリエは「ええ」と借りてきた猫のような声を出した。


「ほう、それは初耳だな」


聞いていないぞという顔をするフリードリヒの視線を伏し目がちに避け、リーリエは「挨拶のお手紙ですよ」と口元に手を添え、ぎこちなく笑った。

フリードリヒは怪訝そうに片眉をあげると、シュトラウスに向き直った。


「公は貴殿と腰を据えて話すのは心細いのではないかな。私も参加しても良いだろうか」


一歩、進もうとするフリードリヒに、後退すること無くシュトラウスは笑う。


「なに、ごく個人的な話をするだけですよ。陛下のお耳に入れるようなことは何も」


「そんなことを言って、私の可愛い公爵に何を吹き込むつもりかな?」


「わたくしは可愛いスヴァルトハイム公爵と個人的な親交をあたためたいだけでございます。ですので陛下はご容赦ください」


のらりくらりとコケにしてくるシュトラウスの目をくり抜いてやりたい気持ちを抑え、フリードリヒは大仰にため息を吐く。


「侯は私の右腕に危ない橋でも渡らせるつもりかね」


つい、と眉をあげて不機嫌さを隠そうともしないフリードリヒ。

政敵と密会しているとリーリエに噂が立つと言外にシュトラウスを詰める。

シュトラウスは口の先だけで笑った。


「右腕と仰る割には、最近連れ立っているようには―――」


「シュトラウス様!私の陛下に!不敬ですよ!」


大仰な態度で間に入るリーリエに、ふたりは彼女を見た。


「私の、だと?」


フリードリヒがリーリエの言葉を反芻する。


「なんて、私の方が不敬でした」


シュトラウスににっこり微笑むリーリエ。彼女は振り返るとフリードリヒの胸を押した。

フリードリヒはとと、とたたらを踏んで数歩下がる。


「いつまでも子供ではないのですよ。大丈夫、ちょっと世間話をしてまいります」


扉は閉ざされた。

フリードリヒの胸には「私の陛下」が刺さったままだった。

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