第51話 ミントの香りがする子(4)
「どうしたんだよ、こんな時間に」
デヒョンは、低い声で電話に出た。
「話したいことがあって、聞きたいこともあるんだ。ヤンジェ川で、焼酎でも飲まない?」
「今? こっちに来るのか?」
唐突な時間だったが、結局、デヒョンは承諾した。ポケットを探ると、タクシー代にも足りなかった。今日は映画にレストラン、タラクパンまで行って、持っていた小遣いをほとんど使ってしまった。ヒョンソと分けて払っていなければ、これさえ残っていなかった。ジフンは、今日を逃したくなかった。せめてデヒョンにだけは、言いたいことを今日、全部話さなければならない気がした。
歩いていくことにした。デヒョンの家までどのくらいかかるかわからなかったが、とにかく家を出た。普段なら当然バスに乗る、バスでなければ行こうとも思わない道を、大股で歩いた。
デヒョンに何を言われるかは、わからなかった。山で交わした、二人だけの話だった。赤く沈んでいく太陽と一緒に、山頂に埋めておくべき言葉だった。それをもう一度掘り起こすことは、きっと大きな傷を残す。罵られても、叱られても、もう会いたくないとまで言われたとしても、まずデヒョンに正直にならなければ、セハにも何も言えない気がした。あれこれ考えながら、走るように歩いたので、三十分でヤンジェ川が見えてきた。デヒョンの家が近づくほど、不安になるのは確かだった。それでも、どんな不安も、ジフンをためらわせはしなかった。
「もう着くよ。出てきて。コンビニの前で待ってる」
「何だよ、もう着いたのか?」
持っているお金は、ちょうど焼酎一本と菓子が買えるだけだった。袋に入れて待っていると、デヒョンがサンダルを引きずりながら歩いてくるのが見えた。
「こんな時間に、お前もよくやるよ。もう寝るところだったのに」
「おいおい、ここまで駆けつけたのに、寝られたら困るって」
二人は、よく行くベンチに腰を下ろした。さらさら流れる川の音と風が、心地よく耳に届いた。けれど、いざデヒョンの顔を見ると、何から話せばいいのか、迷った。
「お前がすごく好きな子と付き合える確率が三十パーセントで、お前を好きな子と付き合える確率が九十九パーセントだったら、どっちに『付き合おう』って言う?」
紙コップに酒を注ぐなり、とにかく口を開いたが、これでいいのかはわからなかった。ようやく口にしたのは、あんなに嫌だと言っていた、天秤にかけるような言葉だった。自分が情けなかったが、もう言ってしまった。
「そんなこと聞くために、こんな夜中にわざわざ来たのか?」
もちろん、話したかったのはそれではなかった。デヒョンは、ジフンのばかな質問に、紙コップを口元に当てたまま考え込んだ。それから、ちらりとジフンを見て答えた。
「その顔を見ると、もう答えは決まってるみたいだけど?」
わかりきったことを、何で聞くのかという様子だった。ジフンの顔には、それほど何もかも出ていた。
「三十パーセントか……それだけあれば、やってみる価値はあるだろ。セハに告白しろよ」
「するよ。ちょうど、もう言わなきゃって思ってたんだ」
三十パーセントというのも、適当に言っただけだった。ゼロかもしれなかった。何とか自分の存在に気づいてもらおうと、光の消えかけた蛍のように、周りを飛び続けた。その時間が無駄でなければいいと思った。
たとえそうだったとしても、百パーセントを超えた自分の気持ちを確信した以上、もう迷うことはなかった。
「でも、何で三十パーセントなんだよ。何かあったのか?」
「いや、そうじゃない。言ってみるまでは、わからないだろ」
ジフンは、どこから話そうかと考えをまとめた。一緒に塾へ通い、終われば勉強しながらいろいろな話をして、それから週末の図書館、映画を見たことを話した。そして、その間の気持ちを打ち明けた。話のところどころには、デヒョンへのセハの思いや、デヒョンの秘密を話してしまったことを抜きにしては、説明しにくい出来事があった。
だから、ジフンは心を決めて口を開いた。
「でも、実は……お前に謝らなきゃいけないことがある。今日は、そのために来たんだ」
足先ばかり見ていたので、顔は見えなかった。それでも、わかった。気になりながらも、まさかあれではないだろうと戸惑う、デヒョンの気配が感じられた。
「謝るって、何だよ。何で急に深刻になってんだ?」
「その……言わずに済ませることもできたけどさ。自分が楽になりたくて、話すんじゃないんだ。言わないと、お前の顔を見るたびに思い出しそうでもあるし」
デヒョンは持っていたコップを置き、タバコに火をつけた。ジフンも一本取り出してくわえ、話を続けた。
「そうするのが、お前への礼儀だと思って。罵られても、まずお前に謝って、それからセハに告白するのが順番だと思ったんだ」
「前置き長えよ。そういうのはわかってるから。まず言ってみろよ」
着いてから飲んだのは、焼酎一杯だけだった。さっきまで冴えていた頭が、またぼんやりしてくる気がした。
「セハに……お前のこと、話したんだ」




