第39話 君を見ていた(2)
「ああ、喉渇いた。誰か飲み物買ってこいよ」
みんなで行けばいいのに、一、二人を選ぶため、わざわざじゃんけんをした。女の子たちは外し、男の子たちだけでやることになった。なかなか決まらず、何度も繰り返すうち、また声が大きくなっていった。
「おい、ちょっと静かにしろよ。じゃんけん、ぽん!」
ヒジェがみんなを注意するふりをして、不意に始めてしまい、ジフンは一瞬、タイミングを逃した。
「イム・ジフン、出してねえ。当たり」
みんなはくすくす笑い、ジフンは腹を立てたが、頼むから静かにしろと逆にたしなめられ、仕方なく立ち上がった。
「私も行くよ。一人じゃ、全部持ってこられないでしょ」
ちょうどソヒョンがついてきてくれた。二人はハイタッチをして、コンビニへ向かった。
「九……十本。よし、行こう」
会計を済ませたジフンは、ソヒョンを呼んだ。二人は飲み物を分けて持ち、コンビニを出た。
「ジフン、ちょっと話してもいい?」
急に呼び止められて戸惑ったが、すぐに頷き、コンビニのパラソルの下の椅子に腰を下ろした。ソヒョンはバッグからタバコを探した。ジフンも、それを見て火をつけ、話し始めるのを待った。
「セハのこと、好きでしょ」
「うん」
もう、セハ以外に知らない人はいなかった。公然と広まっていることなので、ためらわずに答えた。
「セハはどうなの? 見てれば、何となくわかるでしょ」
ジフンはしばらく黙った。すぐには答えが浮かばなかった。
「わからない」
セハはほかの人を好きで、ジフンはそれを知っていた。けれど、誰にも話せなかった。口にした瞬間、言葉は音もなく広がって、デヒョンの耳にも、セハの耳にも届いてしまうかもしれなかった。
「ヒョンソ、ジフンに気があるんだって」
「え?」
思いがけない話に、戸惑った。これといった接点はなかったと思っていたので、なおさらだった。
「俺のこと? 何で?」
「私にはわかんないよ」
ソヒョンは、謎めいた秘密を見つけたように、くすくす笑った。
「結構前に、みんなの写真を見せたときから、ちょっと気にしてたんだ。それで、いつか紹介しようかと思ったんだけど、ジフンがセハを好きなの、すごくわかるから、紹介しづらくて」
ジフンはゆっくり煙を吸い込み、話を聞いた。けれど、その間も、頭の中には別の考えが浮かんだ。
「そしたら、セハと塾に行くために、学校の前で待ってた子が、ジフンだったんだって。おかしいよね。それから、みんなと遊ぶときに連れてってって言われて、こうして来るようになったの」
ジフンはタバコを弾いて火を消し、吸い殻をぽいと捨てた。
「誕生日のとき……だからセハを呼ばなかったの?」
ヒョンソの話より、なぜかセハを仲間外れにしているようで、気分が悪かった。自分がそんなふうに感じていいのかわからなかったが、隠すこともできなかった。
「それだけが理由じゃないよ。セハも、もちろん友達だよ。でも、気まずくなるかもしれないと思って、連絡できなかったのはある。別に電話はしたから、それは心配しなくていいよ」
「そっか……」
「ジフン。ヒョンソも、すごくいい子だよ。かわいいでしょ。性格もいいし」
「わかってる」
話は続いたが、ジフンの心は、だんだん複雑になった。考えがほかへそれてばかりで、返事は短くなった。
「そんなにセハが好き?」
それ以上、話せなかった。自分を好いてくれる人。それも悪くはなかった。けれど、そう簡単に気持ちを移すには、もう思いが大きくなりすぎていた。軽はずみなこともしたくなかった。
「よく考えてみて。セハは、ちょっと難しいかもしれないよ。ヒョンソのほうが合うかもしれないし」
「うーん……」
何か答えたかったが、やはり何も思いつかなかった。
「ジフン」
不意に、はっきりとした声でまっすぐに名前を呼ばれ、ソヒョンと目を合わせた。
「ジフンも私の友達だし、セハも、ヒョンソもそうだよ。私は、みんなに幸せになってほしいんだ」
ソヒョンの目は揺らがなかった。いい加減なことを言う子ではないのは、確かだった。
「でも、ほら。それって、すごく難しいでしょ。だから、ジフンは自分のことだけ考えて」
ようやく、笑顔が戻った。ソヒョンの温かい言葉に、自然と微笑んだ。
「私が余計なこと言って、負担にしちゃったなら、ごめんね」
「そんなことないよ。ありがたいと思ってる」
ソヒョンは顔を近づけ、小さな声で続けた。
「そのうちヒョンソから連絡が来るよ。気軽にご飯でも食べて、遊んでみなよ。それから考えても遅くないでしょ?」
「うん……わかった。そうするよ」
ソヒョンはぱっと笑って立ち上がった。
「行こう。みんな待ってるよ。私がこんなこと言ったのは、内緒だよ?」
「わかってる。心配しないで」
二人は肘でつつき合い、ふざけた。ふと気になって、ジフンはソヒョンに尋ねた。
「ソヒョンは? 好きな人いないの?」
ソヒョンは黙って歩いた。それから、にっと笑い、ジフンを振り返った。
「どうだろうね。そのうちわかるかも。今、私のことはいいでしょ。自分のことだけ考えてってば」
よくわからない答えに、ジフンはそれ以上聞くのをやめた。友達は、まだ遊び場に集まり、小声で話していた。




