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第22話 海は若さを運ぶ(4)

 夜はあっという間に過ぎていた。途中でビールがなくなりそうになると、チョンウォンがコンビニへ走った。ほんの数分で、ビールとつまみの入った袋を振りながら戻ってきた。友達は息の合った一つのチームになっていた。ジフンは別だった。後ろにもたれ、友達の話を聞いているだけだった。ときどき一人で歌を口ずさんだ。一日中、何か別のことを考えているようだったが、特に場を壊すわけでも、一緒に楽しむわけでもなかった。初めからビールをがぶ飲みしたせいで何の役にも立たなかったが、むしろ静かにしてくれたほうがいいと思った。


 十人の大所帯で、さっきまで男だけでしていたゲームを始めた。確かに、男女が混ざると雰囲気が変わった。笑い声は一層大きくなり、酒のコップが行き交った。声をかけてきた女の子が、楽しそうに言った。

「ああ、今日が終わったら寂しくなるくらい楽しいね」

 女の子たちはカンヌンの女子高校に通っていた。名前を言い合い、年齢を明かすとちょうど同い年だったので、敬語はやめることにした。同い年の彼らは、昨日も会っていたかのように、あっという間に仲良くなった。

「寂しかったら連絡先くれよ。連絡取り合えばいいじゃん」

 チョンウォンはいつになく動きが早く、積極的だった。こいつもやるときはやるんだなと思った。ヒジェもヒソルを気にしている様子だったが、場の空気は壊さないようにしていた。デヒョンは隣の子のコップに注ごうと、ビールを持ち上げた。

「ねえ、その子はお酒飲まないってば」

「あれ? これ、コーラじゃねえな」

 デヒョンはふざけて腕を引き戻し、自分のコップにビールを注いだ。困った様子の女の子は顔を赤らめ、持ち上げていたコップにコーラを注いだ。


「ブサイクのくせに……」

 そのとき、一人でつぶやくジフンの、嫌味な声が聞こえた。

 場の空気が凍った。

 最初に声をかけてきて、自分の友達に気を配り、酒を飲めないのだと止めていた子が、低い声で答えた。

「何?」

「聞こえなかった? ブサイクのくせに、酒くらい飲んだっていいだろ」

 怒った様子のその子は、黙って目を伏せると立ち上がり、友達に手で合図した。女の子たちはぎこちなく笑い、ためらいながら立った。


 インスは腹が立ってきた。不機嫌をあらわにするジフンが煩わしかった。

「イム・ジフン。ちょっと来い」

 険悪になる空気に、女の子たちは帰りを急いだ。友達が立ち上がり、インスを止め始めた。

「喧嘩しねえよ。話すだけだ。あいつとは幼稚園から一緒なんだぞ」

 顔は険しかったが、口調は穏やかだった。本当に喧嘩をしたいわけではなかった。もう十年以上を一緒に過ごしているのに、何も言わず一人で抱え込んでいるのが、どうにも気に入らなかった。友達はインスをつかんでいた手を離した。ジフンが先に立ち、ふらふらと歩き出した。そんなときにも酒を持っていく後ろ姿に少し笑ってしまったが、すぐに表情を戻した。


 デヒョンは立ち上がった女の子たちに近づいた。

「ごめん。友達、かなり酔っててさ。でも、本当に普段はあんなやつじゃないんだ。楽しかったのに、残念だな。気をつけて帰って」

 リーダーらしいその子に謝った。女の子は表情を和らげた。

「大丈夫。そういうこともあるよ。酔ってるみたいだったし。旅行、楽しんでね」

「あ、あのさ」

 先に行く友達を追いかけようとしていた子が、振り返ってデヒョンを見ながら首をかしげた。

「電話番号、聞いてもいい?」

 女の子はふっと笑った。

「電話番号聞いてどうするの。ソウルに住んでるんでしょ?」

「縁があったら、また会えるだろ。同じ学年だし、いろいろ話もできるし」

 デヒョンなりに勇気を出して言った。断られたら仕方ない。それでも、このまま別れてしまうのは惜しいと思う子だった。気持ちが伝わったのか、女の子はポケットから携帯を取り出し、開いて差し出した。デヒョンは自分の番号を打って返した。すぐに、自分の携帯の着信音が鳴った。

「私の番号。登録しといて」

「あ、えっと、名前は……?」

 女の子は後ろ向きに遠ざかりながら答えた。

「ソン・ミラ」



 屋上には穏やかな風が吹き、昼間干した洗濯物を揺すっていた。二人は海の見える向きに置いた椅子に、並んで座った。

「機嫌悪いのはわかるけど、初めて会った人にあんな言い方しちゃだめだろ」

 インスが先に口を開いた。ジフンはため息をついた。

「悪かった。いい雰囲気だったのに。ただ……」

 しばらく静けさが訪れた。民宿は海のすぐそばで、寄り集まって座る他の友達が一目で見えた。女の子たちは帰ったようだった。

「正直、あの子らが怒ったとか、飲み会が台無しになったとか、そんなのはどうでもいいんだよ。でも、本当に腹立つのは、お前が俺に何も言わねえことだ」

 インスは何となく海のほうへ顔を向けた。ジフンはビールを二杯注ぎ、一つを差し出した。

「言う……か」

「ここまで言ってんだから、お前も話してみろよ。何だ、セハに振られたのか?」

 ジフンはじっと考えながら、コップを口へ運んだ。

「まあ、そういうことになるな」

 インスは、来るべきものが来たと思った。だが、女の子一人に振られただけで、世界が崩れ落ちるような顔をするのは理解できなかった。

「今日までにしろよ」

 煙を吐き、灰を床に落とした。

「今日までにしろって。そんなふうにしてんの、みっともねえよ」

 気の毒ではあった。だが、黙ったままの友達を見ていると、優しく話してやる気もなくなりそうで、言葉がとげとげしくなった。

「わかった。悪かった。今日で終わりにする。いや、今ここで終わりにするよ」

 ジフンは紙コップを置き、煙草に火をつけた。まだいくらも話していないのに、顔からは酔いが引いたようだった。インスにも言いたいことは多かった。どう言えばいいか、慎重に言葉を選んだ。


「それと、お前のこと、ちょっと水くさいと思ってるんだよ。でも、態度には出してねえだろ」

 正気に戻ったような目で、ジフンが尋ねた。

「水くさいって?」

「お前、俺にだけ自分の話あんまりしねえよな。他のやつはみんな知ってんのに、俺だけ知らねえこと、結構あるんだよ。セハのこともあとになって知ったし。俺ら、何年一緒にいると思ってんだよ。それはねえだろ」

 ジフンは考え込んだ。振り返ってみると、そうかもしれなかった。

「ああ、それは……」

 二人はまた、黙って海だけを見た。友達に言ったことが、何となく照れくさくなった。

「仲良すぎるからかもな」

 ジフンの言葉は思いがけなかった。仲が良すぎて言えないこともあるのだろうか。ジフンは続けた。

「ほら、そういうのあるだろ。あんまり仲いいから、言わなくてもわかると思ってたのかも。それに何か、恥ずかしいんだよ。お前には」

 インスも、何となくわかるような気がした。

「だから、途中のことを一つ一つ、細かく話せねえのかもな。お前に言われて考えてみたら、そんな気がする」

 ジフンは少し息を整え、続けた。

「結果だけ伝えたいんだよ」

 海を見ていたジフンが、煙草の灰を落とし、低く笑った。

「それで、よくやったって言ってほしいんだろうな。お前に。お前からしたら、水くさいよな。俺だってそう思うよ」

 インスは最後まで黙って聞いた。ジフンの言うとおりだった。自分は何もかも話していたかと考えれば、そうでもなかった。結果を分かち合いたい友達なのだと思った。そして、一緒に笑うのが好きだった。

「まあ、これからはちゃんと話そうぜ。お互いにな」

 話を締めくくるように、インスはジフンの肩に腕を回した。もう、これ以上言わなくても十分わかる気がした。


「うん、ありがとな」

 ジフンの目に涙が浮かんだように見えたが、インスは気づかないふりで顔をそむけた。

「戻ろうぜ。続き飲もう。あの子ら帰っちまったから、酒もクソほど残ってんだろ」

 二人はまた笑いながら、友達のところへ戻った。友達は内心心配していたが、二人の姿を見ると、ふっと笑った。


 深まる夜を、酒が慰めてくれた日だった。


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