第16話 十字架に咲いた花(2)
それからは、慌ただしく時間が過ぎた。短い開会式のあと、名前を覚えるゲーム、レクリエーション、賛美の歌に合わせた振り付けまで続き、すっかり疲れ果てた。
朝早くから動いていた子たちは、夕食を終える頃にはみんな眠そうだった。それでも、まだ出し物の時間が残っていた。事前に準備してきた子たちが申し込み、出演順が決まった。
最新の歌に合わせて踊る子もいれば、コミカルな口パクの演技や、ギターの演奏を披露する子もいた。神父様のものまねをするコントを用意してきた子たちまでいて、神父様もシスターたちも手をたたいて大笑いした。
「さあ、その辺で! これ以上やると、今夜は朝まで告解しなきゃいけなくなるかもしれませんよ!」
先生がちょうどいいところでコントを止めた。ものまねをされた神父様も、わざと大げさな身振りでうなってみせ、笑い声はいつまでも続いた。
「いよいよ最後は、トゴク洞教会から来た子ですねー。歌を聴かせてくれるそうです。拍手!」
紹介が終わると照明が落ち、白いドレスを着た女の子が現れた。穏やかなピアノの伴奏とともに歌が始まると、みんな手を止めて耳を澄ませた。次の出し物が始まったことにも気づかず笑っていた子たちまで、いつの間にか舞台から目を離せなくなっていた。
……愛はあなたには贅沢だと思えたのでしょうか
凍えるほど冷たい、あなたのその涙を……
切ない歌詞と声が重なり合う一番が終わると、伴奏が途切れた。今度は華やかな音楽に合わせて、同じ衣装を着た二人の女の子が舞台の奥から現れた。
S.E.Sの「君を愛してる」という、明るく軽やかな曲だった。みんなリズムに合わせて楽しそうに手をたたいた。デヒョンも、最初のバラードからダンスへなめらかにつながる舞台に見入っていた。
三人は入れ替わりながら中央に立ち、それぞれのパートを歌った。歌声と拍手が講堂を満たしていたが、デヒョンの目はどうしても、最初にバラードを歌った子を追ってしまった。
五分にも満たない舞台だったが、それよりずっと短く感じた。周りからも、名残惜しそうな声が上がった。やたら大げさに「アンコール!」と叫ぶ子がいて、デヒョンも思わず笑った。
先生まで残念そうに、もっとやってくれないのかと大げさな身振りをしてみせた。それから拍手をしながら、舞台の中央へ進んだ。
「さあ、終わってしまうのが惜しい舞台でしたね。皆さん、今夜は楽しんでいますか?」
声にはさっきと変わらない力があったが、どこか温かみがにじんでいた。神父様が立ち上がってさりげなく合図すると、班長たちはそれぞれ立ち上がり、ろうそくを一束ずつ受け取ってきた。
先生が話し続ける間に、講堂の照明は少しずつ暗くなった。
「夜も更けてきました。今日の楽しかった思い出が、皆さんの心を育てる糧となりますように。班長さんたちは、ろうそくをともすのを手伝ってください。それでは、神父様にマイクをお渡しします」
子どもたちは班ごとに輪になって座り、ろうそくを分けてもらって、一つずつ火をともした。
マイクを受け取った神父様が話し始めた。さっきまでの騒がしさなど忘れたように、ろうそくの間を穏やかな声が広がっていった。
神父様は、心の中で祈るようにと言った。悩みやつらいことを神様に打ち明け、ろうそくの火で燃やして、遠くへ飛ばしてしまいなさい、と。
みんなすぐに黙想に入った。目を閉じ、慌ただしく過ぎた一日を心の中で振り返っていた。
デヒョンには、祈りの言葉がなかなか浮かばなかった。何百回も唱えた祈りなのに、頭の中でさえ言葉がつかえてしまうようだった。
座り直し、ろうそくの炎の中の黄色い点を見つめた。炎の先から、煙が細く立ち上っていた。
そのとき、かさりと音がした。最後の出し物を終え、着替えを済ませた三人が、それぞれの班へ戻ってきた。
あの子が、きらめくろうそくの間を漂う姿は、まるで蝶のようだった。どの班かはわからなかったが、ほんの数歩離れたところに舞い降りた。そして静かにろうそくを受け取り、火をともして座ると、目を閉じた。
輪になって座った子たちの前で、ろうそくが小さな光を放っていた。その光はすぐに闇にぶつかってしまったが、あの子の名札を照らすには十分だった。
――……名前覚えんの、くっそ簡単だな……




