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※この作品には性別転換・ダークファンタジー要素が含まれております。
※誤字脱字があれば申し訳ないです。
それから三日後、ラヴは一人になることがあれば必ず星空の舞台会場に行き、シュベールと沢山天文学について話し合いをした。
「ここの回路がどうにかなりませんかね?」
魔法の回路を目視出来る盤を見つめ眉間に皺を寄せながら、ラヴはシュベールにそう訊ねた。
「そうだね、確かにここにこれがあると魔力が通り難くなって中々やりにくい」
最近騒がしくなった星空に星たちだけでなく、ひっそりと月と太陽も盗み聞きする。
「例えばですよ。屑から星になったばかりの子を見つけた出してその子にほんの少しの知識と魔力を与えるとすればどうでしょう?その子自身には成る可く影響がないほどの物で」
ふーむ……と少し間を開けてからシュベールは言った。
「確かにこの魔法を開発しようとすればその星が出来るだけ純粋な子が良いのは分かるんだけど、ただそうなると更に天文学を広めることが出来なくなる。僕らは親和力が高いからいいけど、他の人は面倒に感じるだろうね」
その正論にラヴはぐうの音も出ない。
ここ数日、二人は何時も通り天文学について話していた。
しかし余りにも現世に天文学という魔法が浸透していないことが腑に落ちなくて、それなら、天文学をもっと人間に知ってもらおうと閃いた。
そしてせっかくなら、更に手軽な天文学や占星術の魔法が開発出来ないかと頭を捻らせていたのだった。
「双子の兄に天文学をやらないかと訊ねてみたんですが、矢張り面倒だから嫌だと言われました。やっぱり面倒くさいのが重点ですね」
シュベールは、だねと頷き続いて言った。
「何せ天文学の魔法の殆どが、運と天気と星たちの気分によって左右される。僕たちは大体の星と仲が良いからまだ気楽に魔法が使えるけど……」
ねぇ……と首を傾げてため息をシュベールはつく。
するとラヴは唐突に、そうだ!と立ち上がった。
「どうしたの?」
目を輝かせるラヴを見上げてシュベールは訊ねた。
「魔法を補助する魔道具を作ったら良いんですよ」
「魔道具?でも天文学に魔道具って言ってもどんなの?」
例えばですよ、と言いながらラヴは器用に魔法で図を書いていく。
「星の位置が分かる星球儀というものが何十年も前からあるんですけど、あれとっても使い勝手が悪いんです」
金色の線が星球儀を形取る。
「それにそもそも、あれの著作権はもう無くて本当は誰でも真似して作れる筈なんです。なのにコピーしようとしないのってやっぱり使い勝手がとっても悪いからなんですよね」
どんな風に悪いの?とシュベールは訊ねた。
「元々星球儀って星の位置や種類や形などを見られる物なんですけど、何とあれ致命的なミスがあって。星の位置は分かっても星空を見上げたらどれがどれが分からなくなるんです」
「えっ……どういう意味?」
「つまり、星座の形が正確じゃないんです。夏の大三角なんてあんなの三角って言えないし、更には星座以外の星は載ってないっていう意味不明なミスまであって作った人の顔が見てみたいです」
そこで!とラヴは仕切り直したように笑顔を浮かべて続いて言った。
「それらを全て修正した上で、プラスα星と簡単に契約出来るちょっとした本を一緒に売る!」
「売る?布教するんじゃなくて?」
「もちろんです。生産する上で矢張りお金がかかりますから。まぁ出来るだけ安く売ろうと努力はしますが、それでも私の財力にも限りがありますし」
公爵令嬢なのに?とシュベールは心底不思議そうに首を傾げる。
「いや、そりゃあ他の貴族の令嬢に比べれば持っているかもしれませんが、それでも商売となれば一筋縄ではいかないでしょ?一度改良したときのお金、試作品が失敗したときの用のお金、店を持つ時のお金、従業員の給料……お金お金、数えたらキリがありません」
もしかして……とシュベールは何かに気付いたように呟く。
「この目標って大分遠い?」
「今更ですか」
呆れたようにラヴはため息をついた。
「まあ、まずはどれだけ利益を出せるかの予想ですね。利益=天文学が世に知れ渡ることでもありますし」
ラヴが『利益』という言葉を口に出した刹那、静観していた星たちがざわめき始めた。
『利益だって』『つまり、このことが成功すれば僕たちの利益が大きくなるってこと?』『ねえねえそういうこと?』
沢山の星が二人に詰め寄る。
二人は戸惑いつつも「そうなるように努力するつもり」と言うと急に二人を囲んでいた星たちが散り散りになった。
その代わりに、炎よりも赤い髪を持っている太陽と、腰よりも長い銀髪を光らせる月がやって来た。
久しぶりに二人の姿を見たシュベールは瞠目し、太陽はその様子に微笑みながら言った。
『お久しぶりね、シュベール君』
えっ……!とシュベールは眉間に皺寄せた。
「あっ、えっ、今の喋り方……本当に、太陽?」
『そういえば、こうなる前だったかしら。今は逆なのよ』
逆?逆って……そうシュベールは太陽の言葉を頭の中で反芻する。
『まぁとにかくだ。今は我がこうで太陽がこうだ。別に良いだろ、減るものでもない』
「あっ……あの月が我なんて言い方に……」
心底怯えきっているようで、シュベールにラヴは宥めながら何の用か訊ねた。
『お前たちのその天文学を広げるプロジェクト。それを我らも応援したい』
「応援?急にどうして?」
ラヴが訊ねた。
『さっき貴女が言っていたようにこれは私達の――』
そこまで太陽が説明すると、シュベールが太陽に手を伸ばして待ったをかけた。
「ごめん。ごめんだけどちょっとあの太陽がその喋り方をするのは鳥肌があり得ない程立つから少し席を外させて、また戻ってくる。ちょっと本当に悪寒が……」
踵を返し腕を擦りながらシュベールは何処かに歩き出した。
その背中を見ていると、ラヴは自分が本当は男だったって知ったらあんな反応をするのだろうかと少し気分が落ち込みなから太陽に続けてと言った。
『話を戻す前に一つ訊きたいことが増えたから訊くけど、貴女たちがやろうとしていることは本気なのよね?』
少しの間沈黙したあとラヴはこたえた。
「私はその予定。まぁ預言もあるし期待はしてない。取り敢えず今は彼が、天文学が人間に広まって欲しいって思ってくれてるのが嬉しいからそのつもり」
『えっじゃあ貴女は本気じゃないの?』
「商売をやりたいのは本当。でも、その前に私には仮面舞踏会のこともあるし、そもそも私の立場がそれを許さない」
それに……と視線を下にしながらラヴは続いて言った。
「今はおままごとをしているって思っている方が気が軽いの、何よりお母様の詳しい死因も中々調べられてなくて何にも進歩してないし……」
軽くため息をつきながら視線を太陽と月に戻した。
「天文学の魔道具を売りたいのは本気、これは心の底から本当。貴方たちの為にも私たちの為にも。星人夜としても」
太陽は笑みを浮かべて頷いた。
『貴女たちが今困っているのはお金だっけ?』
それもある、とラヴは頷き続いて言った。
「そもそもそれ以前に、誰が売るかなのよね。私は学校があるから偶にしか顔が出せないし何より目立つでしょ?自慢じゃないけどね」
その意見には月も真面目に同意した。
『確かにお前の容姿は冗談抜きに目立つ。金はこっちが……あれだ人間が言うところの投資という物をするから任せとけ』
「そういえば理由は?利益の為だと言っても、こんな面倒事を貴方たちがこんなに淡々と引き受けてくれるのは違和感を覚えるのだけど」
月と太陽は顔を見合わせたあと、太陽がどことなく暗い笑みを浮かべながら言った。
『私たちも不滅ではないの。特に星たちはね。これ以上天文学を忘れられたら星たちが魔力を持って存在する意味が無くなってしまう。そしたらいずれ宇宙にはただの「星」だけになる所謂貴女たちが言う恒星という存在だけになってしまう。そうすると私たちも同様に段々魔力が無くなりただの衛星の「月」と恒星の「太陽」になってしまう』
つまり?と、いつの間にか戻ってきていたシュベールが深刻そうな顔をして訊ねた。
『つまり、次第に貴女たちが居た世界にも私たちの魔力が提供出来なくる』
そこに月が、四方八方に広がる星空を見つめ補足した。
『お前達が居た世界には世界樹があるだろう?』
世界樹とは大陸の真ん中に位置する『妖精が住む森』という地域の、更にど真ん中に堂々と佇む太古の木のことだ。
あの場所に行くことはとても困難で無理に突き進むと妖精の鱗粉による幻覚にやられ、最悪命を落としてしまうという。
ラヴとシュベールは同じタイミングで頷いた。
二人とも一切表情を揺がさず、真剣な顔で月と太陽の話しに耳を傾ける。
『あれが我らの世界に溢れる魔力とマナを、お前達の世界にある魔力やマナと交換するパイプ役をしている。また同時に世界樹は生命を作り出す源でもある魔力を全ての人間に加護する役割を持っている』
星たちの静かな笑い声を上げ月の髪で戯れる。
『そしてその魔力を加護する為に使うエネルギー源は我らの魔力とマナだ。つまり、世界樹だけではなくお前達が住む世界にとって我らの存在は命綱そのものだ。我らがいなくなればお前達が居る世界の人間は魔力を持てなくなるからな。そうなるとどうなるかは我らでも予想がつかない』
ラヴは少しの間なにかを悩んだあと月に訊ねた。
「……あぁだから、私をあんなに必死で占ったの?」
もちろんそれもあると月は頷いた。
『現にお前は這いつくばって何とか幸福や楽しい時間を探し回った結果、こうやって天文学の復旧の計画に向かっている』
なるほど……と次はシュベールが口角を上げ誂うように納得した。
「天文学をこれからも覚えて貰う為の手段の一つとして必要だから、僕にあの占星術とかいう奴を教えろって必死だったんだね」
『必死だったかどうかは覚えないが、まぁそういうことだ』
月はシュベールの見解に頷いた。
取り敢えず、とラヴはヒールを履いて足の裏が痛くなったのか一度しゃがみこみ、ヒールを脱ぎ傍らに置くと続けて言った。
(どうやらここで素足を見られることに違和感は覚えないらしい)
「理由は理解したわ。まぁ根本的なことは何一つ解決していないわけだけど」
「だね、先は長い」
背伸びをしながらシュベールは言った。
すると、ある一つの星がラヴの傍らに出てチカチカ点滅して言った。
『教授がすぐ近くまで来そうです』
この子はシュベールの手を借りて作った星の一つで、もしここに意識があるときに誰か人が来た時に知らせてくれる子だ。
その知らせにラヴは心底嫌そうな顔をしながら言った。
「えぇなんでこのタイミングに?すいませんまた出直します。直ぐまた戻ってきますから!」
そしてラヴは金色の粉のようになりながら消えた。
それを見届けた刹那、月と太陽は所謂ヒソヒソ話をし始めた。
何とか耳を澄まして聞こうとしてみるが中々聞こえないのに、シュベールは不愉快を感じながら腰を床に降ろした。
それからしばらくすると太陽と月は話し終わったのかシュベールの方を向いた。
二人の真剣な表情にシュベールは思わず立ち上がる。
まず口を開いたのは月だった。
その口調はどことなくシュベールは会った時を彷彿とさせた。
『一つお前に提案がある。引き受けるか受けないかは何方でもお前の好きにして構わない、我らは決してそれ以上は追求しないから』
これほど真剣に話す月の口調に思わずシュベールは唾を飲み込んだ。
次に太陽が、先程までの柔らかな口調とは打って変わり、真剣で冗談など一切含まれていない声色でシュベールに訊ねた。
『シュベール、貴方。生き返るとしたらどうする?』
「……は?」
————
一方その頃ラヴもまた面倒ことに巻き込まれていた。
目の前には青緑色の髪の毛をした現在もっとも支持されている聖女候補であるアカーシャと、そのアカーシャに腕を抱かれ心底嫌そうに嫌悪感を顔全体に丸出しているナタールがいた。
それも運悪く、課題を腕の中に抱き早足で目的地まで行こうとしているラヴと教室の外で鉢合わせてしまったのだ。
「あら、こんにちはラヴベリー様」
極々自然にアカーシャはそうラヴに軽く挨拶をした。
王太子の話は本当だったのかと意外に思いながら、ラヴはこんにちはと頭を下げた。
ナタールの嫌悪感丸出しな様子も気になったが、付き合ったばかりはこんなことなのだろうかと勝手に納得した。
教授に指定された場所に向かおうと早足に足を動かそうとすると、アカーシャは図々しくラヴの足の前に己の左足を出し邪魔をして満面の笑みを浮かべ訊ねた。
「そういえばラヴベリー様はもう仮面舞踏会のお相手を決めてらっしゃるのですか?」
「はい」
その一通りの動きを見たラヴは一瞬にしてアカーシャは敵だと察する。
こういう時の最適解を幾度も学んだラヴは間髪入れずに二人を避けるようにそそくさと逃げようとした。
それでもアカーシャは更に邪魔をして負けじと話しかける。
「何方ですの?」
少し度が過ぎていると思ったラヴは、彼氏のナタールに目を向ける。
だが、ナタールも何かアカーシャに言いたげに視線を送るだけで口籠り言えないらしい。
その様子を横目にラヴは折角気分が良くなってきたところだったのに面倒なことを……
とため息をつきながら聞かれるだろう事を一纏めにしてこたえる。
「学園外の方です。ただの文通相手ですよ、友達です。それ以上でも以下でもありません。これで良いですか?」
「名前は言えないのですか?」
「教える義理はありませんので」
何をどうしたら初対面の人にここまで嫌われてしまうのか、とラヴは内心己に呆れながらも軽く睨んでくるアカーシャの緑の瞳をただ見つめ返す。
「仮面舞踏会では本当にその方と踊るのですか?」
まだ訊くか!と内心うっとおしく指摘しながらも、表に出さないよう工夫しラヴはこたえた。
「そのつもりです。仮装はまだ決めてませんがね。もう良いですか?これから用があって急いでいますので」
仮面舞踏会はハロウィンパーティーみたいな物で、それぞれがパートナーを連れてお揃いの仮装をする。大体みんな動物の仮面と、その動物に似合ったドレスなどを身につけている。
まだ何か言い足りなかったようだが諦めたようにアカーシャは、はいと頷いた。
本当に何の用だったのか意味不明なラヴだがナタールに軽く「お兄様もまた」と別れの挨拶をすると、皆の元に戻りたい一心で、早足で用事を済ませに行った。
——————
さらに一方シュベールはその生き返りという提案に混乱していた。
「生き、返り?そんなの世の摂理に逆らうことでは?」
月は当たり前だというように頷いた。
『もちろん。ただ、それはラヴが居る世界に対しての人間相手への摂理だ。我ら星空の民たちには効かない』
「つまり、君たち同様星になれってこと?」
すると太陽は、まさか!と瞠目して否定した。
『人間を星だなんてそんなおぞましいことを誰がするのよ』
おぞましい……とシュベールは苦笑いをした。
『あの世界に貴方を送るというのは間違ってないの。ただね、それだけじゃなくて――』
少し太陽が言葉に詰まると、月と横目に目を合わせて続いて言った。
『少し、条件があるのよ。もちろん貴方にもメリットはある』
不審に思いながらシュベールはどんな条件なのかと二人に訊ねた。太陽は息を吸いながら何か苦しい表情をしてこたえる。
『私たちが屑になって滅ぶまで貴方は死ねなくなるというよりも滅ばない。ほぼ不老不死になってしまうの。これから先、貴方に愛する人が出来てもその人達皆貴方を置いて死んでしまう』
「僕のメリットは何ですか?」
次は月がこたえる。
『お前に我ら母なる宇宙の加護と人間では絶対踏み入ることは許されない星の絶対領域に行く許可を出す。そして、我らのことも何でも調べてくれ構わない』
最後の一言にシュベールは目を見開き訊ねた。
「えっ……何でも?」
何でも、と二人は声を合わせて頷いた。
するとシュベールは、うわわあ!と唸りながら頭を掻いて悩み始めた。
「正直、そのメリットは僕にとってデカすぎる。というより魅力的過ぎるんだ。もちろん、この先僕が恋した人が先に亡くなってしまうのはとても耐えられないけど、それを凌駕していしまうというか。君たちが滅ぶところを見られて、更に調べられて、ていうか人間が踏み入れない領域って何だろう、もしかして……」
余りにも思っていた反応と違い戸惑う二人は苦笑いをしながら肩をすくめた。
ハッ!とシュベールは言葉を止めると少し顔を火照らせながら二人に訊ねる。
「あの、でもそれって逆に貴方たちのメリットは?」
『さあて、それが本題なのよね。彼女が戻ってからまた話すけど、貴方たちがやろうとしてるあのお店のことね。やっぱりラヴ一人だけだと大変だとおもうの。だって他の人間に任せるにも人探しがまた大変でしょ?』
シュベールは頷いた。
腕を組みながら太陽はそれにと言うと続いて言った。
『貴方が居れば少なくとも天文学が滅ぶことは無いかもしれないし』
微笑みながら太陽は呟いた。
『あの子の力になるかもだしね』
最後の一言が何と言ったが聞こえなかったシュベールは訊ねようとしたが、それよりも先に盛大なため息ともに美しい似合うビスクドールのようなラヴが帰ってきた。
「ただいまです。馬鹿なことに課題を渡すの忘れてました。何の話でしたっけ」
太陽と月はラヴに先程までの話しを全て話した。
ラヴは驚愕し言葉に詰まりながらシュベールに訊ねた。
「そんなの……引き受けたんですか?」
シュベールは少し悩むと難しい顔をして言った。
「僕は別にまぁ良いんだけど問題は衣食住なんだよね。だって今の時代……多分だけもう殆ど住まれてるでしょ?僕が生きていた時は戦争が終わった直後だったから殆どの家が空き家だったけど」
それには確かに、とラヴも同意見したがいやっと直ぐに首を横に振り自分の言葉を否定した。
「それは私が手配できるかもです」
「家を?」
「はい、都市なら高値にはなりますが様々な物件があるので貴方が住む家と同時に魔道具を売る店を兼用出来る物件があるかもしれませんし。何より都市に近いほどちょっとずるいですけど、私の名前が使えますから」
公爵令嬢がその不動屋さんを使えばそれだけでその会社の広告になり値引きされたりより良い物件を紹介される。ということだろう。
「君が物件を買うっていう噂が広まっても良いの?」
「はい、それは別に。その噂が広まるのと同時に店の噂が広まるということですから。何より人の噂の的になるのは慣れてますし」
それに……とラヴは満面の笑みを浮かべ、ねだるように月と太陽を見て言った。
「お金は出してくれるのでしょ?」
二人は当たり前だというように頷くと、月はシュベールに訊ねた。
『それで、お前は提案を受け入れるのか?急がなくても良いがな』
正直、とシュベールは下を向いて言った。
「怖いという方がデカいです。何百年も前に土砂崩れに押し潰されて死んで以来世界がどんな風に変わっているか想像がつかないから、生き返るというのは別にそこまで執着はないから良いんです。けれどやっぱり怖くて。それでも、太陽と月のことを調べられるというのはこの上ないメリットですし……」
そう悶々とシュベールは考える。
するとラヴはつまりと腕を組みながら訊ねた。
「今の世界がどうなっているか分からないからってことですか?」
「うん。だって、僕が生きていた頃ってあの大戦争が終わって間もなかったからどこを見てもボコボコのボロボロで……住んでいた家なんていつ壊れてもおかしくなかったし。というか実際に壊れて押し潰されたし……」
ジュベールの瞳に昏い影が落ちた。
「戦争を終わらせたあのブロード公爵が代わりに政治はしていたけどさ、王家は崩壊寸前だったし。何より被爆して汚染された場所とかどうなってるか分からないし、地雷だってまだあるかもしれないじゃん?」
そう長々と語られる戦争の話しにラヴはシュベールはシュベールでとても苦労しているんだな、と同情すると本人は自覚していないが、たとえようもない美しい笑みを浮かべ言った。
「そこまで、心配しなくても大丈夫ですよ。地雷はもう魔法によって取り除かれていますし、被爆した所は現在被爆博物館になってますから。それにそこまで怖いというならしばらく私と生活したら良いんですよ。今の建物の頑丈さを見て下さったらきっと分かって貰えると思います。あとシュベール様が嫌だと仰るのでしたらもちろん無理にとは言いません。こちらで出来る限り力は尽くしますので」
その笑みに見惚れると、シュベールは言葉に詰まりながらいやいやと首を横に振る。
「別に嫌だという訳じゃなくて。その……いや、本当に生き返ることは僕のメリットの方が本当、大きいから良いんだよ。ほんと。うん、そりゃ怖いけどそれは、なんというか、食わず嫌いというかそいう感じだから」
『つまり、お前は生き返ることは了承ということか?』
「うん。まあね」
でも、とラヴが話しに割って訊ねた。
「まだ物件を探せてないからしばらく宿に泊まらないと行けなくなります。なので生き返りは今すぐではなく明日でも良いでしょうか。明日なら学園も祝日でお休みなので」
三人は同時に頷きその後四人はしばしの間談笑し天文学の話になると熱弁した。
読んでいただきありがとうございました(*'ω'*)




