第7話「小竜の巣」
それは、宝の山に見えた。
通路の先、開けた空洞。岩の隙間という隙間に、金色の小さな竜がびっしりと止まっていた。
手のひらサイズ。鱗は本物の金貨みたいに光ってる。鳴き声は鈴に似て、敵意はまるで感じない。
「おお……! 一匹捕まえれば一財産では?」
ヴァーノの目が完全に金貨になってた。
「よせ」
俺の中で、また例の引き出しが開いた。
──金鱗竜。通称、小竜。
攻撃はしてこない。噛みもしない。ただ、触れた者に〈利の呪印〉をひとつ刻む。
呪印は痛くない。最初は。
「触れなきゃいいんだな? 通り抜けるぞ。壁沿いに、ゆっくり──」
言い終わる前だった。
「うおおおお!」
ガルドが剣を抜いて空洞のど真ん中に踏み込んでいた。
「魔獣の巣なら潰すのが冒険者だろうが!」
「待て馬鹿!」
小竜たちは逃げなかった。ふわ、と数匹が舞い上がって、ガルドの籠手に、肩当てに、ちょん、ちょん、と止まった。
鈴の声で鳴いて、飛び去った。
それだけだった。ガルドは無傷。竜も無傷。
「……なんだ? 拍子抜けだな」
「腕、見てみろ」
ガルドが籠手を外した。
手首の内側に、金色の紋様が三つ、刺青みたいに光っていた。
小さい。綺麗ですらある。
「〈利の呪印〉だ。今日から毎日、そいつがお前の体力を吸う」
「は? ……この程度の傷でか? 屁でもないわ」
「今日はな」
俺は引き出しの中身を、そのまま読み上げた。
──呪印は日ごとに育つ。吸われた分を取り返そうと無茶をすると、その無茶がまた呪印を呼ぶ。
雪の玉と同じだ。転がるほど、でかくなる。
「じゃあどうする、この竜どもを皆殺しにすれば」
「消えない。呪印は本体を殴っても消えない」
「なら親玉は」
ガルドが空洞の奥を睨んだ、そのときだった。
空洞全体が、ぐ、と暗くなった。
奥の闇の中で、何かが身じろぎをした。
小竜が金貨なら、あれは──山だった。金の山が、呼吸してた。
鈴の音が、一斉に止んだ。
「「「後退」」」
三人の意見が初めて一致した。
先輩冒険者Aのメモ
※現実世界の諸君へ。小さい借りは、小さいうちに返せ。育ってからだと、利子は体力で払うことになるぞ。




