↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/111

第50話「世界線の岬」


 岬は、本当に岬だった。


 最上層の北端。岩の大地が、すっぱりと途切れて、その先は——霧。白い、底のない霧の海。岬の突端だけが、細い舌みたいに、霧の中へ突き出してる。


 そして、突端に近づくにつれ、霧の中に、見え始めた。


 景色が。


 無数の。


 泡みたいに浮かんでは消える、無数の景色。どこかの街。どこかの部屋。どこかの奈落。そのどれにも——俺が、いた。


 「うわ、っ……」ヴァーノが、後ずさった。「お、おい、今の見たか。僕がいた。すげえ痩せた僕が、どっかの牢屋みたいなとこに」


 「儂も見えたぞ。……腕のない儂が、酒場で管を巻いておった」


 ミナは、何も言わなかった。何かを見たらしく、袖を、久しぶりに、強く掴んでた。


 「——よう。来たかw」


 岬の突端の岩に、Aが座ってた。


 フードは、被ってた。三人の手前だろう。


 「A! あんた、こんなところで何を」


 「番人みてえなもんだ、ここのな。……いいか、お前ら。岬の決まりを言う。よく聞け」


 Aは、指を三本、立てた。


 「一つ。見えるのは『ありえた道』だ。作り物じゃねえ。全部、どこかで本当に進行してる、本物の道だ。


 二つ。干渉はできねえ。声も届かねえ。手も届かねえ。見るだけだ。


 三つ。——これが一番大事だ。長く見るな。他人の道を見続けるとな……自分の道が、薄くなる」


 薄くなる。


 その言葉に、俺は、Aの右手の袖を見た。Aは、視線に気づいて、笑った。


 「ま、そういうこったw」


 「……見るのに、条件は」


 「霧に向かって、問いを一つ、持ってくことだ。岬は、問いに応える。漠然と覗けば、漠然とした地獄を無限に見せられる。——で?」


 Aは、フードの奥から、俺を見た。


 「お前の問いは、何だ」


 俺は、霧の海を見た。


 無数の俺が、泡の中で、生きたり、死にかけたりしてる海を。


 問いなら、決まってた。門に弾かれた日から、ずっと喉に刺さってるやつが。


 「——俺が、一番強くなった道を見せろ」


 霧が、動いた。



先輩冒険者Aのメモ

※現実世界の諸君へ。明日から数回、しんどい回が続く。──途中で閉じてもいい。ただ、戻ってこい。それだけだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。