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触って! ヒーラーサノ先生!!  作者: 茶柱春子
♢ 第三話 吸血鬼と腰の不調 ♢
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3-6

(あああああああああ今でもまだムカムカするなにこれどう言う事っていうかあのおませちゃんってばなんてことをしてくれやがりますのでも可愛いから許したいでもでもムカムカするううううううう!!)

 今日も今日とてノドゥスの出張整体の為に訪れてくれた佐野とアエラを、出迎えたカトゥ。その表情はいつもと変わらず冷静を保っているが、その心内(こころうち)は数日前の出来事に未だ荒れ狂っていた。

「えっと、カトゥ、今日は機嫌が悪いの?」

「いいえ、特には」

「そ、そっか……」

(アエラごめんねええええ。貴女は何も悪くないの!! 私が! 一人で! 悶々としてるだけなの!!)

 八つ当たりに近い返事に落ち込んでしまったアエラに、届かない謝罪をし続ける。

「えっと、その後のノドゥス様のご様子は……」

「特に支障は出ていないわ。ただ、前回のお説教が効いているみたいで、諸々の自己申告はきちんとするようになったわ」

 が、佐野に対しては先日の事もあって、割と塩対応だった。

「とりあえず、今日もこの部屋で待機してもらっていますから」

 思わずため息を吐きながら、辿り着いた部屋の扉を開けようとした、その時である。

「せんせー!!」

(なんでいるの!?)

 バンッ、と勢いよく扉が開き、中から少女が飛び出してくる。弓の名手が放った矢の如く佐野に飛びついたのは、カトゥが抱えるモヤモヤの元凶でもあるフロースだ。

「フロース! お前はまたその男にベタベタと……!!」

 開け放たれた部屋の中では、整体用のベッドに腰掛けたノドゥスが、ぎりぎりとハンカチを噛みしめている。

「せんせー! きょうも、おてつだいさせてほしいんですの!」

「うーん、それは嬉しい提案ですけど、お友達と遊んだりしなくて良いんですか?」

「いいんですの! いまのブームはセイタイをすることなんですの!」

 そう言うと、フロースは佐野の手を引いて部屋へと招き入れた。おまけに、助手であるアエラそっちのけであれやこれやと作業を手伝うので、彼女も戸惑っている。

「……フロース、あまりサノを困らせてはいけませんよ」

(うう、サノとちっちゃな子供の組み合わせは悪くないけど、それがフロースっていうのが何とも言えないのよね。というかサノ、貴方なんでアエラそっちのけでフロースに指示出してるのよ? 助手でしょ?? アエラ困ってるじゃない気付いてないの??)

 流石に見過ごせないと、複雑な心境を隠して諫めるカトゥだったが、当のフロースは気にも留めていないようだった。

「そんなこといって、ひめさまもおてつだいしたいんでしょ?」

 なんてことを言って、逆に煽って来る始末である。

(ぐうううううう……私も出来る事ならずっと傍にいたいわよ、でも今日はこの後に兵士達の訓練をしないといけないから無理なのよきいいいい!!)

 奥歯を噛みしめながら、カトゥは自身よりも小さいフロースを見下ろした。互いの視線がかち合い、バチバチと火花が散っているような気さえする。

(なんて言えばいいか分からないけど……ぜええええええったいに負けたくない戦いが始まったのだけはわかるわ)

「……ひめさま。あたくし、負けませんのだわ」

「子供だからと、手加減などいたしませわ」

 大人げないと頭では理解しているが、それでもカトゥは少女からの宣戦布告に堂々と返答してみせた。

「こ、これフロース、いい加減になさい」

「カトゥ……」

(ノドゥス、アエラもごめんね。でも、女には負けられない戦いがあるのよ)

 と決意したのは良いものの、カトゥはその勝負がなんなのか、実はさっぱり見当もついていない。

(とにかく、勝つのは私だから!!)

 密かに戦いの火蓋(ひぶた)が切って落とされた空間に、緊張が走る。

 ……が、それに水を差す者がいた。

「あはは、二人は仲良しさんですね」

 佐野である。場違いにも程がある一言に、二人は脱力して、呆れたように彼を見る。

「せんせぇ……」

(時々思うけれども、彼ってズレてるところがあるわよね……)

 なんて事を思うカトゥだが、指摘する魔族がいないだけで彼女も大概ズレている為、人の事は言えない。

「お前、流石にそれはどうかと思うぞ」

「師匠ったら、乙女心がわかってないんだから」

 この発言には、ノドゥスとアエラもちょっと引き気味だ。

「ええ……そこまで?」

 自分が空気を読めていないと気付かず、佐野は不満そうに口を尖らせる。

(ぐっ……大の大人がそんなアヒル口しても、か、かわ……いやかわいい許す!!)

佐野の言動に一喜一憂しながら、未だ自身の気持ちに気付かないカトゥは、新たなライバルの出現に頭を抱える事になるのであった。

次回更新は、9/22(金)予定です。

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