相談
木こりをするにしても人数が必要だ。最低でもゴブリンかコボルトのどちらかの集団には声をかけておきたい。
海に向かっていくと再び木こりをする音が聞こえた。
「ふぅ…こんなとこかしら?この斧もあまり使い物にならないのも難点ね。あとはこれを運んで…」
男の人が無理矢理高い声を出したような声で呟き、汗を拭った。
「フリード」
「あんらぁ?村長さんじゃない?どうしたのかしら?」
「話があるんだが」
「夜這いをしてほしいという懇願かし「違う」…そう」
「村の方針についてだ」
「そうよね、村長だものね」
「これはその斧を改善するためのものでもある」
フリードは惚けたような表情が引き締まり、何かを思考する表情に変わった。ものによっては歯向かう姿勢でもあった。
「話、聞かせてもらっても良いかしら?」
「もちろんだ」
フリードが伐った木を椅子にして話を進める。
「まずはこの村についてだが、食料はまだ豊富にあるが、いずれ遠方にいかないと木の実や香草は取れなくなるだろう」
「そうね、魚にも臭みはあってバルトちゃんのセンスでどうにかしてる点も大きいわ」
「そこで香草や木の実を育てるために土地の確保を早急にしなければならない」
「そこに至るわよね」
「あぁ、だからその立地の確保と平行して道をつくる。図としてはこんな感じだ」
木の棒を使って村の簡単な図を書き、この辺りの簡単な地形を記載し、そこから導き出された方針を書き記す。
「そうねぇ、この地形だとこれが妥当ね。そうすると道はこの辺りかしら?」
「そうだ。だがこれを行うには圧倒的に人数が足りない」
「人数はどうにもならないわね」
「そこでスキルが登場するわけだ」
「大盤振る舞いね」
「練度が上がれば人数の分も補える。だが、斧自体が使えなければ速度が落ちる。そこで練度を上げながら土地を確保する部隊と鉱石を集める部隊に分ける」
「それは良い考えね」
「だが、それを行う前に準備が必要だ」
「戦闘する必要があるかもしれないってことね」
「そうだ、この地はまだ人が住み着いて二日目だ。動物もいれば」
「魔物もいるかもしれないわね」
魔物いるのか、この世界の設定がファンタジー感があるのはわかっていたが、実際に言われると実感が湧かないな。
「そういうことだ。まずは少なくとも武器を扱うスキルが必要だ」
「つまりは全員戦闘ができる村人になるってことね」
「協力してくれるか?」
「ええ、もちろんよ」
フリードと握手を交わした。
「ひとまずフリードのスキルからチェックするか」
《蜥蜴人族》
名前:フリード
メインジョブ:【なし】
サブジョブ:【なし】
地位:孤独の戦士、鍛冶士、オネェさん
統率力:G SP:0
武力《3》魔力《1》気力《1》
耐力《3》速力《1》技力《1》
スキル:【統率Lv1】【言語学Lv1→2】【女子力Lv1→3】【スキル枠1】【斧術Lv0.54→0.68】【木こりLv0.31→0.42】【槍術Lv0.22→0.24】【夜目Lv0.21→0.22】
「ふむ、【女子力】がレベル3になっているな。これが何に使えるかわからないが、ないよりマシだな」
「これからもしっかりと磨いていくわ。なにかアドバイスはないかしら?」
「そうだな、これから木こりも頻繁にやっていくことになるから、【斧術】と【木こり】も手に入れときたいな」
「私がやっておいた方がいいものはないかしら?」
「メインの武器は槍か?」
「ええ、そうよ」
「槍も朝の日課のように磨いとくといいだろう。そうすればスキルを授けられる」
「期待して待っているわ」
フリードには伐った木の運搬を頼み、海に向かった。アルベルトとコボルト達には食料調達をやってもらっているが、時間の合間にやってもらいたいことがあるので頼みに行く。
海に近付くと潮風が流れてきてとても気持ちがよい。生け簀がある崖の方に行くと、魚の世話をするアルベルトと漁から帰ってきたコボルト達が生け簀に魚を放すところだった。
「村長殿、いかがしましたか?」
「ちょっと話があってな。作業をしながらでも聞いてくれ」
「承知したのじゃ」
アルベルトは座禅を組んで魚の切り身を生け簀に投げ入れていた。切り身に群がる魚達に若干、コボルト達が引いているのが伺えた。
アルベルトにはフリードと同じ話をした。それを踏まえてアルベルトにはやりたいことを聞いた。
「ふむ、わしはどちらかといえばこの生け簀を充実させたいのぅ」
「それでも構わない。集まった木材を使って小屋をここに建ててもいい。あとは多すぎる魚を干物にしてくれたり、あとは魚の骨や珊瑚を砕いての肥料作り、それから塩作りでもいいな」
海での仕事も腐るほどある。仕事なんて探せばいくらでも見つかるし、いくらでも作れる。人数が足りるかは別として。
「そんなに仕事があると、人員が足りんのぅ」
「これらを全て同時にしろとは言っていない。できることから始めてくれ。まずは生け簀の近くに小屋があればいいかな。一々村に戻って休憩するのもしんどいだろ?」
「わしも正直に言えばそうじゃな。村長殿がやりたいことは理解できた。つまり村にとって必要なことをやっていく。だが、人員の確保が難しいからスキルを授けてくれるのじゃな?」
「その通りだ。だから色々仕事を頼むかもしれないがいいか?」
「わしに断る理由はない。真摯にやらせていただく」
アルベルトは座禅を崩して生け簀から離れた場所に向かっていく。それを見送るとアルベルトは振り返った。
「わしが個人的に保存しとる素材をお見せしよう」




