村の方針
それぞれの新たなスキルを獲得し、それぞれの仕事に入った。村長としては今のところスキルを与える以外にやることがない。
そう、やることがないから、村の方針を決める。
まずこの世界において村長、支配者とは絶対的な存在であり、力を得るには支配者に媚びなければいけない。
人里離れたこの場所を選ばなければ、自動的にどこかの国の貴族になる。それも都市の外側、田舎の方に配置され、一定期間毎に税金を渡さないといけない。
そのため、常に上に媚を売らなければならない。つまり、都会に住むなら、『国主』だろうと『傭兵』だろうと『傭兵』だろうと媚を売らなければならないのは変わらない。
一つだけ違うのは確かに力を得るには媚びを売らないといけないが、国からの独立宣言をすれば、自身がトップになり、スキルも自由にできる。
だが、街に泊まる場合は滞在時間によって滞在金というものを払わなければならない。それも街や村によって変わる。つまり、自由に生きるにはソロ活動するしかない。
よって私が人里離れたこの地で村を作ったことは正しかったといえる。これらの情報は掲示板に愚痴られた情報だ。こんなにリアルで窮屈な世界とは誰も思わなかっただろう。
それもこの世界がゲームのようで別世界の異世界ということも知らないため、感想がクソゲーと言われるかもしれないが、彼らはこれから待ち受ける事実に気付くこともなく、人生を送っていくのだ。
かわいそうに、今頃、身体は健康的に薬付けされてるのだろう。
物思いに耽ってしまったが、村の方針を決めなければな。とりあえず木こりをする場所と農業をする場所を決めよう。今は適当に伐採していっている。
これでは無秩序になってしまう。
海の方ばかり伐採していくと屋敷が塩害を受けてしまう。塩害を考えると海とは反対側に向けて伐採していくのがいいだろう。
それと鉱山方向は毒があるかもしれないから農業には向かない。海の方に太陽が沈むから西だとして考える。東側には道を築くのでそこから分岐して農業地区と商業地区を築くのが良いだろう。
鉱山があるならその方角に鍛冶をする職人が集まるだろう。そうすると反対側に農業地区があると食事処を作れば儲ける上、鉱山という窮屈な場所から解放感のある場所に行けて心理的にも良好だ。
農業をするということは広大な広場のように開けて景色もいいだろう。それを高い位置から眺める、最高じゃないか。
次は道だが、鉱山に行くようになれば、石材が手に入るようになる。それで道や家を作れるようになる。それまでは道をある程度ならさないとな。
他の街に続く道はおそらく数年では無理だろう。できるとすればアリスに乗って海を渡るしかない。それまでは他の街との交流はなしだ。
「大体こんなもんでいいだろ」
まとめをこの村の掲示板に書いてそれぞれの忠臣に伝言を記しておいた。
「私も戦闘系のスキル欲しいし、素振りでもするか」
小屋に剣を取りに行き、自己流で剣を振るう。この剣は木製なのでそこまでの重さはないが、これで森に行くなら心もとない。
ペースとしては10回振ったら休み、また10回振るうというものだ。それがどれだけのものになるかはわからないが、やらないよりはましだ。
取得可能スキルに剣術がないことを思い出したので、【観察】スキルを磨くために森に向かう。ここで歩行の仕方も気を付ける。森の中は整った構造をしていない。そのため、歩くとき苦労するときがある。
それらを注意してひたすら歩く。海に向かうのが一番迷わない行動だ。他は先が森しかないので、まず迷ったら帰ってこれない。
時折、スキルの成長具合を確認する。
【話術Lv0.78→0.79】【指示Lv0.02→0.10】【目利きLv0.41→0.45】【歩行術Lv0.20→0.34】
これを見る限り成長していることは理解できる。だが思ったようなスキルを得ることができない。ワークマンと同じ心境になりそうだ。
木の枝を掻き分けながら進んでいくと斧で木を伐採する音が聞こえる。
「くそっ、なんで俺は木こりなんてものをやってんだ!」
「木こりなんてはないだろ、ワクマ」
「すまねぇ、兄さん。馬鹿にしてる訳じゃねぇんだ」
「それくらいわかってる。だが、これは俺達に課せられた仕事だ。仕事を途中で放り出すわけにはいかない」
二人は木に向かって斧を叩きつける。音や速度、練度をみればスキルの有無や経験の差がよくわかる。
ワークマンは悩んでるのか、仕事は自由にしてるから、課してはないんだがな。
ここは先程決めた方針を伝えるか。
「くそぅ…」
「話は聞かせてもらった」
木を掻き分けながら登場するとワークマンは固まり、アッシュはワークマンをチラ見した後、斧を置いた。
「村長、こいつはこんな愚痴ばっかり言ってますが、仕事はしっかりやる男です。どうか、ワークマンの仕事を農業にしてください!お願いします!」
アッシュはそのままの勢いで頭を下げた。全く、弟思いの良いやつだ。
「兄さん…」
「何卒お願いします!」
真剣な表情でアッシュはこちらを見詰めてくる。
「なんと頼まれようと農業はできない」
「そんな…」
アッシュは悔しそうに拳を握り締めた。
「よく考えてみろ、この村にそんな広い場所はない。そう、場所がないんだ。だからまずはその場所をつくる行程から入るしかないんだ。それはわかるだろ?」
「「あっ…」」
「アッシュの言いたいことはよくわかる。だからまずは農業をする立地の確保から入る。村の方針を先程決めてきた。その木を切り終えて村まで回収したら、また声をかけてくれ。何人かに声をかけてくるから、それまでに頼むぞ」
「「はいっ!」」
アッシュとワークマンの良い返事を聞けたので、農業に関わりそうな者を呼びに行くことにした。




