番外・狼陛下の求愛~sideサヴァル~3
コレットの甘い香りがサヴァルの鼻をくすぐり、やはり心地よいものだと感じる。失った欠片がカチッと嵌り、尖っていた心が丸くなっていく。
「コレット・ミリガン。君を迎えに来た」
静かにささやきかければ、コレットは、心底分からない、といった声色を出した。
「陛下……どういうことですか?」
サヴァルは腕の中にある華奢な体をくるんと回し、手の中にある箒を奪って壁に立てかけた。
そしてコレットの前でひざまずき、手をそっと握る。ここまで来れば、ただ、愛しい者に真剣な思いを伝えるのみだ。
「君こそ、私が求めている“王妃に相応しき者”だ。コレット・ミリガン。私の真の妃になってくれないか」
「え、え、え……でもあの、わたしでいいのですか!? 立派な貴族のご令嬢のほうがいいのではないですか?」
「君の正しさや弱き者を気遣う優しさ。それに皆に好かれる愛らしさは、身分など関係ないものだ。それに、私は君を心の底から愛している」
真摯に告白をすれば、コレットの青い瞳は答えを探すかのように、まっすぐにサヴァルに向けられた。わずかに瞳が揺れている。心の中には、さまざまな思いがめぐっているのだろう。
「コレット・ミリガン。この先の人生、私とともに生きてくれるか?」
「はい、サヴァルさま。わたしも、あなたを愛しています。この先ずっと、わたしを導いてくれますか?」
「それは、もちろんだ。ともに生きよう」
立ち上がった瞬間に、牛小屋の入り口から歓声が沸き上がった。
満面笑顔の皆に囲まれ、サヴァルはコレットを守るように腕の中に仕舞いこんだ。が、それもつかの間で、式の準備をしましょうと言うリンダにさらわれてしまう。
支度を待つ間、恐縮するニックに王妃として迎える了承を得、少し話をした。コレットのご両親のこと。これからのこと。それから、感謝の意も伝えた。
やがてアリスに手を引かれて出てきたコレットを見、騎士団員から感嘆の声がもれる。純白のドレス姿を見るのは二度目だが、笑顔を向けてくれるコレットは、今まで見せてくれたどのドレス姿よりも愛らしい。
牧場で式を挙げたことにより、コレットの親代わりのニック夫妻も大いに喜んだ。求愛に成功し、最終手段を使わずに済んでホッとしていたサヴァルだが、コレットに問われて思わず白状してしまったのは予想外のこと。コレットの前ではウソがつけない自分がおり、なんとなく、尻にしかれる予感がしたのだった。




