第7話 北海道犬展覧会
北海道犬の展覧会と獣猟競技大会は、北海道犬の飼い主なら誰でも参加できる。
北海道のとある大会に私と変態犬Kは初参加した。
北海道犬は本州とは違い、犬の混血が進まなかったせいなのか犬も訛っている。
『アワアワアワ!』『エロー!』『オオオゥ!』
会場は奇声で溢れている。
知らない人が聞いたら妖怪と間違えるかもしれない。
会場ではKの育てである親○犬舎さん、北海道犬保存会のSさんらと合流。
だが、なんということだ。
Kは○犬舎さんが連れてきた参加犬T、実の父犬に向かって猛烈に吠え出した。
いや、正確にはあの大会訓練がきっかけで○犬舎さんが大嫌いになってしまったらしい。
某少年マンガの妖怪・『お外堂さん』みたいになってしまう。
Kの剣幕に父犬Tも興奮。○さんのブーツに絶え間なく放尿し続けている。
○さんの素敵なミリタリーファッションがKのせいで大変なことになった。
競技参加に備えて、Kを落ち着かせなければならない。
Kは若いイケメン絶対許さないワンでもある。
うまくイケメンを避けつつ、まずはおじいちゃんで栄養補給だ。
やはりKはじい専。
審判のおじいちゃんたち、Sさんには子犬のようにアンアン甘えに行く。
抱きついて、ポケットにおやつがないか探るのも忘れない。
大会には人に馴らすため子犬の参加も多い。
毛玉の化身に触り放題。
そして無垢な子犬は変態犬に対する警戒がないから、Kとも遊んでくれる。童心に帰るK。
競技見学の場所とりがはじまった。
地域の犬舎さんグループができているので私とKも参加。
○犬舎さんは猟犬仕様の漆黒犬が全犬優勝で知事賞をとっている。
▲犬舎さんは某スマホ会社看板犬の親戚はじめ、大会三連覇の王者の白犬派閥。
この日の為に用意した私の専属カメラマンが▲さんの懐っこい犬にはねられた。
北海道犬にはブレーキがついていない。
頭に登ってくる。助けて。
横を見ると○犬舎さんが▲さんに絡んでいる。
王者同士の陽気なせめぎあい。
いや助けて。
「ロングリード持ってきた?」
○犬舎さんに聞かれた。
「いえ、ロープで参加します」
Kとの散歩はいつも躾用ショートリードだ。
すぐに調子に乗ってワイパーするからだ。
近所のホームセンターには手頃なロングリードがなかったので間に合せでロープを購入した。
「良かったらこれ使って。優勝パレード用に準備したやつ」
そういって、革製のカッコいいロングリードを貸してくれた。皮算用すぎませんか。
○犬舎さんの参加犬はKの妹。
妹犬で優勝するつもりだ。
更に、うちのKにも当然のように優勝の圧がかけられている。
知らないおじいちゃんも寄ってきて、
「毛が痛むからこの首輪を使いなさい」と勝手に首輪交換された。
北海道犬の体毛は、長い剛毛と柔らかな短毛のダブルコート。
毛が摩擦で痛まないよう丸首輪というチューブ状のものが推奨されている。
北海道の人たちは親切で人懐っこいので、切っ掛けがあれば次々に寄ってくる。
じい専のKもおじいちゃんに囲まれてご満悦である。
展覧会は北海道犬の形質、体格や顔の特徴を審査するイケワンコンテスト。
生後半年の幼犬から福寿犬まで、クラスごとに行われる。
飼い主と犬がグラウンドを走ったり歩いたりしているうちに審査員が採点してくれるようだ。
北海道犬の愛好家、参加者はわりとご高齢な方が多い印象。
これは飼い主にとってはハードな競技では?
知ってたらもっと体力つけてきたよ!
幼犬部門。私とKの出番だ。
グラウンドの白線沿いにかっこよく走れK!
審判のおじいちゃんにおやつおねだりしない!
高得点の犬は前の犬を追い越して先頭にまわる謎システム。どんどん越されていくK。
そして予想通り。
体力のないおじいちゃんたちが次々にリタイアしていく。
おじいちゃんたちを狙って斜めに走っていたKが突如開眼した。
前の犬のカッコいい走りを真似て、かっこよく走り出した。
さすがは天才犬だ、偉いぞ!
ヘレン・ケラーがサリバン先生のお陰で言葉を認識し、『WATER!!』と叫んだというあれを思い出した。
Kは幼犬雄部門で三位入賞。
優勝は無理だったが犬舎さんにもさほど恥ずかしくない戦績を残せた初参加だった。
獣猟競技部門に続く。
※大会は少し昔のものです。
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