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この恋を叶えるために  作者: つよちー
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第七話「家族のような」

【前回のあらすじ】

春香と響子は友達になり、無事に春香は退院した。そして春香は蓮に勉強を教えて欲しいと頼み、彼は彼女の家に泊まり込みで勉強を教えることになった。

早苗さんが用意してくれた夕食はとても美味しかった。こんなに美味しい夕食を食べたのは久しぶりだ。不眠症だった頃は食欲も無く、あまり食事をしていなかった。春香と一緒に食事をするのも久しぶりだ。彼女と食事をすると、家族のような雰囲気が出ていて居心地が良かった。いっそこのまま、この家で暮らしたい。ふと春香の方を見ると、彼女は手を止めずにご飯をどんどん口の中に入れて行く。そういえば彼女は、美味しいものには目がないんだったな。

「春香、そんなに食べたら太るぞ?」

からかうつもりでそう言ったが間に受けたらしく、手が一瞬で止まった。

「冗談だよ。満足するまで食べな」

そう言うと彼女はもうお腹いっぱいと笑って箸を置いた。俺も食べるべき物をさっさと食べて箸を置いた。

「早苗さん、ご馳走様でした」

そう言うと早苗さんは微笑んだ頷いた。そして春香の方に向き直って

「よし、勉強の続きやるか」

と言って立ち上がると

「先にお風呂に入ってきなさい」

と早苗さんが言った。

「わかった」

春香はそう言って風呂場へ向かった。彼女が風呂に入ってる間に、問題の整理でもするか。そう思い、彼女の部屋へ行った。机の上に置いてある教材を開く。さっきまでの勉強で春香が躓いたところを思い出す。春香は確か、ここが苦手だったな。じゃあここを重点的に解説するか。と考え鉛筆でマークをする。その繰り返しをしていると春香が風呂から上がってきた。

「お兄ちゃん、お風呂空いたよー」

と言って部屋に入ってきた。

「問題作っといたから、俺が風呂に入ってる間に解いとけよ」

「うん、いってらっしゃい」

部屋から出て、荷物の中にある服と下着を取り出して風呂場へ向かった。

「蓮くん、春香のために本当にありがとね」

突然早苗さんがそう言ってきた。俺は

「当然のことです」

と返答すると

「迷惑なら別にいいのよ。自分の自由を削ってまでも春香のために頑張らなくても」

と言ってきた。俺はそれを否定した。

「春香のためだからこそ頑張っているんです」

そう、迷惑なんかじゃない。彼女のことが好きだからこそ、俺はこんなに頑張っているんだ。他の奴らとは好きの重みが違う。それは自信を持って言える。自分の自由は削ってなんかいない。

「じゃあお風呂入ってきますね」

そう言って風呂場へ向かった。服を脱ぎ、湯船に浸かる。疲れが放出される。春香はいつも俺よりテストの点数が良かった。数学が苦手と言っていたが、俺から見れば十分にできている。何もかも俺より上だった。試験の度に何度も悔しい思いをした。彼女が俺に負けないのは、俺よりも努力している証拠だ。彼女は誰よりも努力する。ある時俺は、そんなに頑張る必要があるのか、と質問をしたことがあった。彼女は

「どうせ誰かが頑張るって思ってたらダメなの。自分から行動できるっていいことでしょ?」

と答えた。質問の答えにはなっていなかったが、言いたいことは理解できた。義務付けられた訳でもなく、誰かに命令された訳でもなく、彼女は自分が頑張りたいと思っているから頑張っているということだ。誰よりも努力して、誰よりも一生懸命な彼女にいつ報いが訪れるのだろうか。


風呂から上がって春香の部屋に入った。彼女は既に俺が用意した問題を解き終わり、それどころか自分で教材を読んで勉強していた。

「お前は本当に頑張るなあ」

そう言うと彼女は俺を見て

「頑張りたいから頑張るだけだよ」

と言って笑った。記憶が戻る前に、俺の学力を超えそうな気がする。

「この教科は大丈夫そうか?」

「うん。他のは自分で勉強できるから、お兄ちゃんはゆっくり休んでて」

「そうか....わかんなかったら言えよ」

「うん」

俺は部屋を出てリビングに行った。くつろいでいいのかと迷っていたら早苗さんが遠慮はいらないと言ってくれた。ソファに座って読書を始める。

「春香はどう?」

早苗さんが唐突の質問をしてきた。

「相変わらず頑張り屋です」

と答えると、くすくすと笑う。

「受験のときを思い出すわ。あの子、毎日勉強してたから」

その光景を想像するのは容易だった。机に向かって黙々と勉強する姿。いつまでも変わらない。

「頑張りすぎるから、たまには楽していいよって言ったら頑張りたいから頑張るだけだよって言ってね」

俺にさっき言った言葉と一緒だ。春香にとって、頑張るということは当たり前のこと。頑張らないという考えは一切ないんだ。

「蓮くんに告白された日には、頑張る理由が出来たって喜んでたわ」

「それってどういう意味ですか?」

言葉の意味がイマイチ理解出来ず、早苗さんにそう質問した。

「私にもわからないわ。でも、春香にとって蓮くんはそれくらい大切ってことなんじゃないかな」

彼女にとって、俺は頑張る理由。俺と付き合う前は頑張る理由がなかったということなのだろうか。理解できない。

「記憶が戻ったら、聞いてみます」

「そうね」

そう言って早苗さんは俺に飲み物を渡してくれた。礼を言って受け取り、一口飲んだ。

「今日はもう遅いから寝なさい」

「わかりました。何処で寝れば」

「春香の部屋でいいかしら」

「え?」

「ちょっとでも何か思い出せるかなと思って。春香のためにお願いしていい?」

「そういうことなら....わかりました」

そう言って立ち上がる

「おやすみなさい」

「おやすみ」

春香の部屋へ向かう。彼女はまだ勉強しているのだろうか。そう思い、扉を開ける。彼女は寝ていた。眠気に負けたか。彼女を抱えてベットに運ぶのも良かったが、流石に躊躇った。彼女の体を揺さぶって起こす。

「そんなとこで寝てたら風邪ひくぞ」

すると彼女は目を擦って顔を上げた。

「寝るならそこのベットで寝ろよ」

そう言って彼女を立たせる。眠たそうにふらふらと歩いてゆっくりとベットに寝転んだ。その上にそっと布団を掛ける。

「お兄ちゃん....」

「ん?」

「何でいつも私の傍にいてくれるの?」

眠そうな目で俺にそう質問する。俺は一切迷うことなく答えた。

「お前が大切だからだ」

「そうなんだ....嬉しい」

彼女は微かな笑みを浮かべてそっと眠りについた。俺は優しく彼女の頭を撫でた。嬉しい、か。俺もそのことを嬉しいと感じてくれて嬉しいよ。押入れから敷布団を取り出し、床に敷いてそこに寝転んで布団を被った。彼女の側で寝るのは久しぶりだな。小さな頃は何の気もなくただ一緒に寝ていた。好きな人がずっと傍にいると、心が安らぎ癒される。どんなことがあっても、俺は彼女から離れない。

最後まで読んでくれてありがとうございます。

春香はとても頑張り屋なのです。

彼女のような頑張り屋の女の子と是非お近付きになりたいです(笑)

感想や指摘など頂くと嬉しいです。

続きを楽しみにしてくれると更に嬉しいです。


これらに登場する人物、地域、団体は全てフィクションです。

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