表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この恋を叶えるために  作者: つよちー
PR
3/13

第三話「感謝の想い」

【前回のあらすじ】

蓮は春香が記憶喪失になったショックで不眠症に悩まされていた。

ある日突然、眠ってしまう蓮を起こすクラスメイトの響子が、彼の助けになりたいと言う。

寝ているところを、また東に起こされる。

「はやく起きなさい。移動よ」

顔を上げるといつもと同じように、傍らに東がいた。辺りを見渡すと教室には俺と東以外誰も居なかった。彼女は呆れたように溜め息を吐く。

「ほら、もう教材用意しといたから早く行きましょう」

そう言われ机の上を見ると必要な教材が用意されてあった。椅子から立ち上がり彼女の顔を見て

「ありがとう」

と礼を言った。教材を手に取り、彼女と一緒に教室を出る。静まり返った廊下を歩く。ちらっと彼女を見ると、今までちゃんと見た事が無かったせいか、今更彼女の魅力に気付いた。綺麗で長い黒髪。その髪は波のように靡く。彼女を横目で見ていると、視線に気付いたのか俺の方を向いて睨んできた。

「なに?あんまりじろじろ見ないでよ」

「ああ、すまん」

そう言って彼女から視線を逸らし前を向く。そこで俺は彼女にふとお願いをしたくなった。

「東、不眠症について色々と相談したいことがあるんだ。それで、あの喫茶店で話がしたいんだけどいいか?」

「やっとか....もちろんよ」

承諾してくれたが最初の言葉が少し気になったが聞こえなかったことにした。


放課後、約束通り彼女は校門で俺を待ってくれていた。俺を見つけると、彼女は俺に手を振ってきた。今までそんな仕草をした事が無かったので、つい驚いた表情をしてしまった。その表情を見た彼女は、自分がやったことに顔を赤くして俺から目を逸らした。俺は気にせず彼女の傍に寄る。

「待たせて悪い。行こうか」

「う、うん」

彼女と一緒に歩き出したが、すぐに俺は足を止めた。突然足を止めた俺を見て彼女は

「どうしたの?」

と訊いてきた。

「ごめん。喫茶店の場所、覚えてなかった」

苦笑しながらそう言う。彼女は溜め息を吐いて

「ついて来て」

と言った。


喫茶店の中に入り、あの店員に誘導されテーブルに座った。俺と彼女は飲み物を注文した。さっそく本題に入ろうと思い、話を始めようとする直前で、彼女は優しい笑顔で

「あなたとこうしてお茶するのも悪くないわね」

と言った。何故そんなことを言ったのかわからず首を傾げると、彼女は何でもないと言って話を終わらせた。気になっても仕方がないので、話を始めた。

「それじゃあ本題に入るけど、東はどうやって不眠症を治したんだ?」

そう質問すると彼女は黙り込んだ。やはり言いたくないことなのだろうか。

「言いにくいなら言わなくてもいい」

そう言うと彼女は首を横に振った。

「別に、大丈夫」

彼女は質問に答えていった。自分の中に抱え込んでいた大きな悩みを解消すると治ったらしい。彼女が言った大きな悩みは、俺に置き換えれば春香の記憶喪失のことだ。この問題を解消すれば、俺の不眠症は治ると考えていいだろう。

「ありがとう。助かったよ」

「当然のことよ....」

意外とあっさり解決した。本当にこれだけなのだろうかと少し不安になったが、不眠症だった彼女が言うのだから間違いなだろう。話が終わり、特に話すことがないと思った瞬間、彼女から話かけてきた。

「加藤くんは何で不眠症になったの?」

答えるのを少々躊躇ったが、彼女にこうして助けてもらっているから、事情を知らせておくのが礼儀だ。

「実は....」

そう切り出し、俺は春香のことを彼女に話した。彼女は俺に同情するかのように悲しい目で話を聞いていたが、何も言わなかった。話を終え、窓の景色を眺める。雨が降りそうな分厚い雲が、一面に広がっていた。まだ夕方でもないのに暗くなり、街灯が点いていた。視線を彼女に戻すと、彼女は俯きうずうずしていた。

「どうした?お腹でも痛いのか?」

そう聞くと首を横に振る。一体どうしたのだろう。それに今日はいつにも増して優しい。と思った瞬間彼女が口を開いた。

「私、加藤くんと友達になりたいの」

その言葉に少し唖然とした。

「やっぱり、私みたいな人とは嫌よね....」

そう言って彼女は寂しそうな表情で俺から目を逸らす。俺はすぐに否定した。

「そんなことないよ」

彼女は少しお節介が過ぎるがそれに助けられてるのは事実だし、こうやって相談にものってくれた。断る理由は探しても見つかるわけがない。

「よろしくな、東」

そう言うと、彼女は笑った。彼女の笑顔はとても素敵だった。その後、アドレスを交換し、色々駄弁って彼女と別れた。用も済んだことだし病院に行くか。そう思い、病院へ向かって歩き出すと突然雨が降ってきた。俺は走り出した。


服は雨で随分と濡れてしまった。病院に着いてすぐに上着を脱いで鞄に入れた。受け付けの方を見ると、早苗さんが受け付けの人と話をしていた。邪魔しないように気付いてないフリをして通り過ぎようとしたら向こうがこちらに気付いた。

「蓮くん、こんにちは」

俺も挨拶をし、春香の病室へ向かおうとしたら

「ずぶ濡れじゃない。私の傘を貸してあげるから、帰りに使って」

と言って俺に傘を渡した。俺は遠慮をしたが彼女の頑固さに負けて傘を受け取り礼を言った。春香の病室の扉を開けると彼女は眠りについていた。いつもこの時間は起きているんだが、リハビリの疲れで眠っているのか。春香の側に椅子を寄せて座る。彼女はぐっすり眠っていた。事故で負った傷も殆ど治ってきている。もうあの時の痛々しい姿ではない。しばらく待っていると、彼女は目を覚ました。

「眠れたか?」

「うん....」

目を擦りながら体を起こす。彼女はもう車椅子は使っていない。まだ杖が必要だが、歩けるようにはなっていた。春香はベットから立ち上がり、杖を手に取る。

「またリハビリか?」

「うん。はやく歩けるようになりたいし」

春香のリハビリに励む姿は見ていると気持ちが和むが、同時に心配になる。そんなに頑張って大丈夫なのか、と言いたくなる。でも、それを言ってしまうと春香の決意を踏み躙ることになる。彼女にとって過剰な心配は迷惑だ。見守るだけでいい。彼女もそれを望んでいる。助けるのは。彼女がそれを必要とした時だけ。

「そうか、俺も付き添うよ」

そう言って立ち上がろうとすると彼女に止められた。

「別にいいよ。私なんかほっといて、お兄ちゃんは違うことして楽しんできて」

「え....」

予想外な言葉に少し頭が真っ白になった。まさかそんなことを言うなんて。よく考えれば、彼女の喋り方も幼さがなくなっている。記憶が戻ってきている証拠なのだろうか。

「そ、そうか....ならそうするよ」

彼女の言う通り、他のことで楽しもう。しかしすることがない。彼女のリハビリを見守ることが俺の日課のようなものだったから、それ以外のことを考えていなかった。出口へ向かう途中、ふと、脳裏に東が思い浮かんだ。さっそく携帯を取り出して彼女に電話をかけた。

最後まで読んでくれてありがとうございます。

以前にも言いましたが、この小説は別のサイトで完結させているので、毎日二話投稿しようと考えております。

感想や指摘など頂くと嬉しいです。

続きを楽しみにしてくれると更に嬉しいです。


これらに登場する人物、地域、団体は全てフィクションです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ