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となりの双子はキケンすぎる ~生まれた日から、ずっとそばにいる。だから、ずっとキケンなんだ。~  作者: 鍼野ひびき
第三巻 答えを出す冬と、僕たちの選択

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第四話

双子の秘密会議




【特別視点回:美紀と美香】


 この話だけは、俺の視点では語れない。

 後で美香から聞いた話を、できるだけ忠実に再現する。


     *

 夜、水瀬家の、美香の部屋。

 美紀が、ノックをして、入ってきた。


「……話がある」


 美紀が、静かに言った。


「……博之のこと?」

「うん」


 美香は、ベッドの上に座って、美紀を見た。

 美紀が、ドアを閉めて、部屋の中に入ってきた。


     *

「美香、博之に告白したんだって」


 美紀が、言った。


「……したよ」


 美香が、隠さずに、答えた。


「私も……好きだ、って言われた」


 美紀が、続けた。


「知ってる」


 美香が、即答した。


「え?」

「雰囲気で分かった。お姉ちゃん、分かりやすいもん、博之の前だと」


(……美紀ちゃんは、いつも自分を隠そうとするけど、私には分かる)


     *

 姉妹の間に、奇妙な沈黙が流れた。


「……取り合いになるね」


 美紀が、言った。


「うん」

「いやだね」

「いやだね」


 二人が、同じ言葉を、同じトーンで言った。

 それに気づいて、少しだけ、空気が緩んだ。


     *

「……でも」


 美香が、言った。


「でも?」

「どっちが選ばれても……お姉ちゃんのことは、ずっと好きだから」


 美紀が、少し、目を見開いた。

 それから、小さく笑った。


「……馬鹿」

「なんでそれ馬鹿なの!」

「……いい意味で」


「私もよ」


(……美香。お前は、いつも、まっすぐに、大事なことを言ってくれる)


     *

 二人は、しばらく、笑い合った。

 久しぶりに、姉妹だけの、何の気負いもない時間だった。


「ねえ、お姉ちゃん」


 美香が、聞いた。


「なに」

「博之のこと、いつから好きだったの?」


 美紀が、少し、考えるように、目を伏せた。


「……分からない。いつからか、わからないくらい、ずっと」

「私も、それかも」


 美香が、頷いた。


(……お姉ちゃんも、私も、同じくらい長く、博之のことを好きだったんだろうな)


     *

「……怖くない? このまま、どっちかが選ばれて」


 美香が、聞いた。


「怖い」


 美紀が、正直に答えた。


「でも、博之が、ちゃんと考えて、ちゃんと選んでくれるなら、それでいいと思ってる」


 美香が、しばらく、黙っていた。

 それから、小さく言った。


「……うん。私も、そう思う」


     *

「一個だけ、約束して」


 美紀が、言った。


「なに?」

「博之が誰かを選んでも、3人でいること。形は変わっても、いること」


 美香が、しばらく、美紀を見た。

 それから、しっかりと、頷いた。


「……うん。約束する」


(……これだけは、絶対に、変わらないでいてほしい)

(……博之が誰を選んでも、私たちは、姉妹で、ずっと一緒だ)


     *

 二人は、しばらく、何も言わずに、並んでベッドに座っていた。

 窓の外で、冬の気配を感じさせる風が、音を立てていた。


「……ねえ、お姉ちゃん」


 美香が、また、口を開いた。


「なに」

「もし、私が選ばれたら、お姉ちゃん、本当に大丈夫?」


 美紀が、少し、間を置いて、答えた。


「……大丈夫じゃないかもしれない。でも、時間が経てば、大丈夫になる」

「……正直だね」

「正直でいたいから」


 美香が、小さく笑った。


「……私も、同じこと聞かれたら、同じこと言うと思う」


(……お姉ちゃんと、こんなに正直に話せるのは、博之がいるからかもしれない)

(……博之が、私たちに、いつも正直でいようとしてくれているから)


     *

 夜が、更けていった。

 美紀が、立ち上がった。


「……戻る」

「うん」


 美紀が、部屋を出る前に、一度、振り返った。


「美香」

「なに」

「……今日、話せてよかった」


 美香が、頷いた。


「……うん。私も」


 美紀が、部屋を出ていった。

 ドアが、静かに閉まった。


     *

 美香は、一人、ベッドの上で、しばらく、天井を見ていた。


(……お姉ちゃんと約束した)

(……博之が誰を選んでも、3人でいる。形は変わっても)


 それは、慰めではなかった。

 二人とも、本気で、そう思っていた。


(……でも、それでも、選ばれたいと、思ってしまう)

(……お姉ちゃんも、きっと同じことを思っている)


 美香は、目を閉じた。

 窓の外で、風の音が、続いていた。


     *

 俺は、この夜のことを、ずいぶん後になってから、美香から聞いた。

 美香は、笑いながら、それでも、少し目を潤ませながら、話してくれた。


「お姉ちゃんと、あの夜、ちゃんと話せてよかった」

 美香は、そう言っていた。


 俺の知らないところで、美紀と美香は、姉妹として、ちゃんと向き合っていた。

 俺が、どちらを選んでも、二人の関係は、変わらない。

 その約束が、後に、どれだけの意味を持つことになるか、俺はまだ、知らなかった。



◇ ◇ ◇


― 第四話「双子の秘密会議」 了 ―

次話:第五話「初雪の日、博之は走った。」へ続く


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