3話 ピンチ?
二人が城へ戻ると、廊下では兵士たちが慌ただしく走り回っていた。使用人たちも忙しそうにしている。
「あれ?」
ノヴァが不思議そうに首を傾げる。
「お昼まで結構時間あるのに、もう準備してるんだね」
「だな。いつもより早い気がする」
会食には、基本的にその国の王と護衛が数名同行する。
だが半年に一度ほど、重臣や側近たちを伴って訪れることもあった。
「この様子じゃ、ソフィア女王以外にも来そうだな」
「え〜」
ノヴァはぷくっと頰を膨らませた。
「僕、ソフィア女王とだけしか話したくな〜い」
「お前な……あと五年後には、俺たちのどちらかが
王になるんだ。わがまま言うな」
アンゴルキアには二人以外に子供がいない。
そのため、彼の跡を継ぐのは必然的にセトかノヴァの
どちらかになる。
「兄さんの方が王様に向いてると思うよ。だって、
ちゃんと人のこと考えられるもん」
「いや、俺はそんな器じゃない」
人の上に立ち、より良い方向へ導く。それが王の務め。
そんな大層なことは自分にできるとは思えなかった。
「どんなに頑張ったって、できないことはある」
彼の脳裏にアンゴルキアの姿が浮かぶ。
国民に愛され、誰よりも国のことを想っている。
弱音なんて一度も聞いたことがない。
「……俺は、父さんみたいな立派な王にはなれない」
「そんなことない」
ノヴァはぶんぶんと首を振った。
「お父さんみたいじゃなくても、立派な王様には
なれるよ。兄さんは兄さんなんだから」
「ノヴァ………」
そう呟いた直後だった。
「二人とも」
聞き慣れた声と共に、廊下の奥からアンゴルキアが歩いてきた。
「あっ、お父さん!」
ノヴァは嬉しそうに駆け寄った。
「ねえねえ、ソフィア女王っていつ来るの?」
「そのことなんだが………実は、つい先ほどから連絡が
取れなくなっている」
「ええっ!?」
セトとノヴァは同時に目を見開いた。
「護衛は居るだろうが、彼女が無事である保証はない。
これから私と部下で、連絡が途絶えた場所まで行くつもりだ」
「ぼ、僕たちも……」
「ダメだ」
アンゴルキアは冷たく言い放った。
「何が起こっているか分からん以上、貴様らを連れて行く
わけにはいかん」
「……ここで、大人しく待っていろということですか」
セトは俯いた。
役立たず。遠回しにそう言われている気がした。
「ーー言い方を変えようか」
アンゴルキアは二人の前に立ち、いつになく真剣な目で
言った。
「私が留守の間、ここの守りは任せたぞ」
「!う、うん……っ!」
ノヴァは大きく頷いた。
「ちょっと不安だけど、任せて!」
「フッ、頼もしい息子たちだな」
アンゴルキアは満足気に笑うと、二人の頭を撫でた。
「……アンゴルキア王、気をつけて」
「ああ。大丈夫だ、すぐ戻る」
彼はくるりと背を向け、城の入り口へ向かった。
その背中はいつもと変わらず、大きく見えた。
「よーし、頑張ってお城を守るぞー!」
「まあ、誰も来ないとは思うがな……」




