18話 雪の街へ
「……うわっ!」
城を出て城門をくぐった瞬間、眩い太陽の光が二人を包み込んだ。
「この太陽ともしばらくお別れかぁ……」
太陽。
それは当たり前のように天にあって、いつも
世界中を照らしている。時に優しく、時に厳しく……
まさに母親のような存在だ。
ファレンスは雪が降り続けているため、太陽とはしばらくお別れをすることになる。
そう考えると、ちょっぴり寂しい。
「そうだ。ソフィア女王、お土産は何がいいですか?」
その顔は、まるで遠足を楽しみにする子どものような笑顔だった。
とても今から盗賊を倒しに行くとは思えない。
「……そうですね。私はノヴァさんが無事に帰ってきてくれればとても嬉しいです」
「そ、そうですか……!」
彼女のたった一言で、ノヴァは照れて耳まで真っ赤にした。
「ソフィア女王。馬車の準備が整いました」
「分かりました。ノヴァさん、どうぞお乗りください」
「はいっ!」
ノヴァが嬉々として馬車に乗り込んだ途端、中に居た兵士が
彼に包みを差し出した。
「ノヴァ王子、こちらをどうぞ」
「ん?これは……」
包みを開くと、白い毛皮の手袋、厚手のブーツ、
マフラーが丁寧に収められていた。どれも驚くほど自分の体に合っていそうだ。
「ホントにいいの、これ……?」
「はい。どうぞお使いください」
まさかこれほど短時間で、自分の体に合った必要物品を
揃えてくれるとは思ってもいなかった。
「ありがとう!えーっと、ここで着替えてもいい?」
「ええ。構いません」
兵士はくるりとノヴァに背を向ける。
その気遣いに軽く礼を言った後、ノヴァはいそいそと着替え始めた。
「……あっ。この手袋って狼の毛皮、使ってるよね?」
「はい。先代のキース王国の王……ソフィア女王の
お父上が仕留めた狼から作られております」
先代国王、シファー・キース。
女好きで気分屋で子供っぽい人だったと言われている。十五歳だったソフィアに
女王を任せたっきり、一度も帰ってきていないという。
「よし、準備オッケー。ソフィア女王!」
彼は勢いよく馬車の窓から顔を出した。
「行ってきます!」
ぶんぶんと大きく手を振る。
その姿があまりにも年相応で無邪気で……ソフィアは
ほんの少しだけ、返答に迷った。
「……はい。お気をつけて」
「うん!」
ソフィアは馬車が見えなくなるまで、ずっと見送っていた。
ノヴァも彼女が見えなくなるまで手を振り続けていた。
やがて城が完全に見えなくなると、ノヴァは小さく息を吐いた。
「……はぁ」
今になって現実味が湧いてきた。
盗賊というからには、力づくで説得しなければならないかもしれない。
そう考えると、気が重い。
「話が通じる人だといいな……」
山へ近づくにつれて、辺りからどんどん家が消えていった。
吹き込んでくる風も冷たさを増している。
「ノヴァ王子。あちらをご覧ください」
「ん、どこどこ?」
兵士の指差す方を見ると、そこには真っ白な雪の帽子を被った山々が見えた。
「わあっ、雪が積もってる!」
アンゴルキア王国は雪が降るものの、積もることはない。
そのため、ノヴァは絵本や写真でしか雪が積もった景色を見たことがなかった。
「いつか、皆んなと雪だるま作ったり雪合戦したりしたいな。
今は色々あってできないけど……できるかな?」
「はい。できますよ、きっと」
兵士はノヴァの方を見て微笑み、力強く頷いた。
「……うん、そうだよね。そうに決まってる」
彼は心地よく規則正しい馬車の揺れに身を任せているうちに、
瞼が重くなってそのまま眠りについてしまった。




