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17話 あなたのために


同じ頃。城内に残されたノヴァとソフィアは、

スペクターから渡された試験管を見つめ続けていた。


一本。このたった一本をどう使うのか、どう使うべきなのか。

部屋中に重い空気が流れている。


「……そ、そうだ」


耐えきれなくなったノヴァが口を開いた。


「確か、ファレンスの盗賊の話をするんでしたね……!」


「え?ええ……」


ソフィアは顔を上げ、表情を引き締めた。


「盗賊たちは何度か捕えています。しかし、誰一人として

 口を割ってくれないようで……」


キース王国の兵士は、他の国と比べると圧倒的に少ない。

それだけ平和な国だと言えるだろう。

しかし近頃は、ニートによる襲撃、彼との戦いによる

アンゴルキアの負傷と物騒になりつつある。


そのため、兵士たちは女王であるソフィアの警備を

最優先にせざるを得ず、各地の事件にまで手が回らなくなっている。

 

「……うーん」


ノヴァは考えた。

もし、自分が盗賊たちを懲らしめることができたら

ソフィアに振り向いてもらえるかもしれないと。


「ソフィア女王、僕がその盗賊たちをやっつけます!」


「ですが他国の者に、ましてや王子であるノヴァさんに

 それを頼むのというのは……」


「いえいえ、大丈夫です。キース王国はアンゴルキア王国の同盟国だし、それに……」


彼は少し照れくさそうに笑ってみせた。


「僕、ソフィア女王の笑った顔が好きだから」


褒められなくても、認められなくてもいい。

ただほんの一瞬、好きな人が自分に笑顔を見せてくれるならそれだけで十分だった。


「じゃあ、そろそろ行きますね。早く懲らしめた方がいいだろうから」


「本当に行かれるのですか……?」


問題を解決すれば振り向いてもらえる、自分を見てもらえる。

そんな淡い期待を抱いているノヴァとは対照的に、ソフィアは彼を心配していた。


「……ノヴァさん」


彼女にとって、ノヴァは弟のような存在だった。

誰よりも純粋で優しくて、いつも元気いっぱい。

そんな彼に危険なことはさせたくなかった。

だが、だからといって彼の親切心も無下にはしたくない。


「念のため、護衛を四人ほど用意します」


「いや、大丈夫ですよ。ぱぱっとやっつけてきますから!」


ノヴァの眩しい笑顔に、ソフィアは頷くことしかできなかった。


「……分かりました」


止めても彼は行く。そんなことは分かりきっている。


「ではせめて、山の麓まで馬車でお送りします」


「いいんですか?ありがとうございます!」


いつになく真剣なソフィアを不思議に思いつつ、ノヴァは

席を立った。城を出るまで、二人は談笑し続けていた。

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