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13話 いざ、キース王国へ


ニートが居なくなってしばらくすると、張り詰めていた

汽車の空気が少しずつ戻っていった。


「……結局、何しに来たんでしょうあの人」


「さあ……?ただ、ノヴァさんへの殺意は本物でしたね」


リアンは困ったように肩をすくめた。


「別に恨まれるようなことしてないけど……」


「そうですね……どちらかというと、彼はノヴァさんより

 アンゴルキア王に対して怒っていたような気がします」


「それはないですよ」


即座にノヴァはぶんぶんと首を振る。


「お父さんは建国した立派な人だし、国民からも他の国からも

 支持されてる。怒りを買う理由はありません」


「ーーノヴァさん」


リアンはくるくるとペンを回し始めた。


「ボクはね、アンゴルキア王が百パーセント本当のことを話しているとは

 思えないんですよ」


「ど、どうしてですか」


父が嘘を吐いている。そう言われているような気がした。


「あはは。やだなぁノヴァさん。王が国民に弱みを

 見せられるわけないじゃないですか」


彼女は窓の外へ視線を向ける。


「弱みを見せたら、国民が失望して離れていってしまう。

 下手したら反乱が起きる可能性があります。それを

 避けるために、王は完璧であるように見せている」


「何それ……」


リアンはノヴァの反応を楽しそうに眺めながら続ける。


「ノヴァさんも、王になったらそういうことをしないと

 いけませんよ〜?」


「無理です、そんなこと……!」


嘘をつくことすら抵抗感がある彼にとって、人を騙し続けるのは

苦痛でしかない。


「じゃあ、違う人に頼みますか?」


「え?でも、僕と兄さん以外に王になれる人は居ませんよ」


王位継承権があるのは、王家の血を引く者のみ。

それは国で決められているが………


「ーーいや、恐らく他にも居ます」


「ええ!?」


自分と兄以外に子供が居る。そんな話は聞いたことが

なかった。


「千年。千年もアンゴルキア王は生きてるんです。それぐらい

 生きていて、二人だけしか子供が居ないというのは考えにくい」


「た、確かに……」


ドクンドクンと心臓が嫌な音を立て始める。

あり得ないと思う一方で、どこかその可能性を信じかけて

いる自分が居た。


「ノヴァさんは、最期まで一人の女性を愛せますか?」


「もちろん!浮気はダメです、絶対に!」


「あはは。真面目ですね〜」


そんな話をしているうちに、汽車は国境を越えて

キース王国に入った。窓の外には田畑が広がり、その

向こうには青く澄んだ海が見える。


「いつ来ても綺麗な国ですよね、キース王国って」


「はい。ボク的にはこの国が一番好きです」


アンゴルキア王国とは違い、キース王国は漁業や農業で生計を立てている

人がほとんどだ。気候も穏やかで、国の住みやすさランキングでは首位を

頻繁に獲得している。


「城へ行く前に、ちょっと市場に寄ってみますか?」


「うん!行きたいです!」 


キース王国の市場は昼夜問わず、活気に満ち溢れている。

朝は新鮮な野菜や魚介類、昼は衣類や武具、夜になると、一風変わった

品々が並べられる。だが国内外から多くの人が訪れるため、

あっという間に売り切れてしまう。


「今日はお金もあるし、いっぱい買うぞ〜!」


屈託なく笑うノヴァを見て、リアンも自然と笑みが溢れた。

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