第7話 フェリクスの才能
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第7話 フェリクスの才能
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幾何学模様を囲む水晶は、一八個ある。
多分属性に関係するんだと思うが、どういったものなのだろうか。
ワクワクするね。
「フェリクス様。こちらの加護方陣の中央に、手を置いてください」
幾何学模様は加護方陣というのか。
そのままなネーミングだと思いながら、右手を置いた。
アレッサンドロ大司教が祭壇の端にある小さな方陣の上に手を置く。
それが起動スイッチだったのか、俺の手を包むように光が発せられ、それが加護方陣の線やよく分からない文字に広がっていった。
かなり眩しいので、右目を細めた。
アレッサンドロ大司教が「何ですと」と呟いたように聞こえた。
何かいけないことがあったのだろうか。
まさか神敵認定されないよね?
そんなことを考えつつ、目をしっかり開け加護方陣を見つめる。
目が眩むほどの光は一八個の水晶に到達し、水晶が発光している。
「おおおっ」
先ほどからのアレッサンドロ大司教の声が気になる。
これは異常なことなのか?
本当に怖いから、変な呟きとか止めてほしい。
徐々に光が収まっていく。
終わりなのかな?
加護方陣の光は完全に収まったが、一八個の水晶は淡く光っている。
しかもその中に何かが見える。
「もう手を離しても大丈夫ですよ」
アレッサンドロ大司教の言うように手を引いた。
そして彼を見上げると、少しずつ表情が曇っていくのが分かった。
「アレッサンドロ大司教。結果はどうか」
父バニアスがアレッサンドロ大司教に問いかける。
気づかなかったが、俺のすぐ後ろに両親が立っていた。
「フェリクス様は全属性の加護をお持ちです……」
「全属性とは珍しい!」
バニアスの声が弾む。
「フェリクスなら当然よ。ウフフフ」
アイリッシュも嬉しそうだ。
「ですが……」
「ですが? 歯切れが悪い。どんなことでも受け入れるから、はっきりと言ってくれ」
そうだよ、大司教さん。そんなに勿体ぶらずに、教えてよ。
「属性の才能レベルはどれも低いものです」
あー、そうきたか。全属性持ちは珍しいが、いないわけではない。
基本的に持っている属性の数よりも、才能レベルの高さが重要視されるため、俺は器用貧乏の役立たずという判定がされるのだろう。
「無属性と特殊属性が六、あとの全属性が全て三となっております」
俺は全属性の魔法は使えるが、才能としては大したものではないらしい。
基本的に無属性の才能値は無視され、使えるかも分からない特殊属性も同じように考えられている。
この二つの属性以外の属性が、高いほどいいとされているのが、この国の風潮だ。
帝国騎士団に入れる基準を下回っていることから、貴族としては莫迦にされやすい。
要は無能のクズ扱いだ。
才能レベルが四と三では、それだけの差があるのを、俺は知っている。
貴族として役立たずの俺は、バニアスやアイリッシュに疎まれることになりかねない。
よくて追放、悪ければ殺されるかもしれない。
そうなったら、そうなったでそれなりに足掻くつもりだ。
ただ、無属性は他の属性よりも身体強化がしやすく効果も高いとされている。
無属性が六なら身体強化はかなり使えるはずだ。
だったら、問題はない。
肉体言語は俺の得意分野だ。
魔法で殴れなくても、物理で殴ればいい。
「お、お父様……ごめんなさい……」
一応、バニアスに謝っておく。
期待に応えられなかったことは、素直に申しわけなく思う。
バニアスの手が伸びてくる。
叩かれるのか!?
……あれ? なんで頭を撫でられているの?
「別に属性の才能レベルが低くても構わんさ。戦いができなければ、それ以外のことをがんばればいい。どの道、貴族が先頭に立って戦いをするわけではないのだ。フェリクスはフェリクスにできることをして、家を盛り立てればいいのだから、気にするな」
なんというお優しい言葉!
俺は一生あんたについていくよ!
「そうよ。フェリクスは勉強ができるのだから、内政でその才能を発揮すればいいの。戦いは騎士団長たちに任せておけばいいのよ」
ママー! 大好きだよ!
俺はとてもいい親の下に生まれたようだ。
魔法ができなくても、それ以外のことで役に立つからね!
親孝行するから!
抱きしめてくれるアイリッシュの胸で俺は泣いた。
こんな優しい親の下に生まれ変わることができて、俺は幸せ者だ。
屋敷に帰ったけど、魔法の才能レベルについて俺を蔑む人はいなかった。
「フェリクス様の無属性は才能レベル六だとうかがいました。無属性は身体強化や、離れた場所の物を動かすことができます。まずは身体強化から訓練しましょう」
剣術の訓練の際に、イケメン副団長にそう言われた。
「『我が魔を捧げ、肉体を強化せん。身体強化』と詠唱してください。同時に、肉体を強化するイメージを強く持ってください」
「分かった」
『我が魔を捧げ、肉体を強化せん。身体強化』
発動したのか?
「失敗です。一回や一〇回で成功するようなことはありません。とにかく詠唱を続けてください」
「了解」
『我が魔を捧げ、肉体を強化せん。身体強化』
『我が魔を捧げ、肉体を強化せん。身体強化』
『我が魔を捧げ、肉体を強化せん。身体強化』
『我が魔を捧げ、肉体を強化せん。身体強化』
・
・
・
『我が魔を捧げ、肉体を強化せん。身体強化』
『我が魔を捧げ、肉体を強化せん。身体強化』
『我が魔を捧げ、肉体を強化せん。身体強化』
「ケホッケホッケホッ」
どれだけ詠唱しただろうか。
身体強化はまったく発動する気配がない。
もう喉がカラカラでガラガラだ。
「少し休憩にしましょう」
訓練場の隅に設置された俺用のテーブルセットの椅子に倒れ込むように座った。
喉が痛いのもあるが、精神的な疲弊も結構ある。
一〇〇回どころかもっと詠唱していたはずだ。
それなのにうんともすんとも言わないよ。
魔法というのは、一日やそこらでどうこうなるものではないらしい。
「坊ちゃま。薬草茶です。喉にいいので、お飲みください」
専属メイドのシャインが淹れてくれた薬草茶を、一気に喉に流し込んだ。
滅茶苦茶喉が渇いていたから、生き返る心持ちだ。
「シャイン。お代わりを」
「はい」
ティーカップを差し出すと、流れるような所作で薬草茶を注いでくれた。
「シャインの薬草茶は疲れに効くだけじゃなく、喉にもいいんだね」
二杯目はゆっくり味わう。
心なしか喉の痛みはなくなった。
それに疲れも感じなくなった。
さらに香りが俺の精神力を回復してくれるようだ。
これ、本当にヤバいドラッグじゃないよね?
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