第6話 初めてのお出かけ
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第6話 初めてのお出かけ
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怒涛の挨拶漬けのパーティーが終わった。
何も食べてない。可愛い子と踊りもしてない。
ただ挨拶して、握手して、笑みを浮かべていただけ。
疲れた。
七歳でこんな苦行を行うとは、思ってもいなかった。
控室のソファーにダラーっと体を預けていると、シャインがハーブティーを淹れてくれた。
疲れが吹き飛ぶような癒しの香りがする。
「美味しいよ、シャイン」
「疲れが取れる薬草茶にございます」
へー、そういうものがあるのか。
まさかヤバい薬ではないよね?
前世のヤバいドラッグも疲れが取れるとかなんとか……。
そんなヤバいものを俺に出さないか。アハハハ。
薬草茶を飲み終わったところに、両親が入ってきた。
「明日は属性の確認だ。今日は早く寝なさい」
「はい。そうします」
やっほー! やっと自分の属性が分かるぞー!
自室で体を拭いた。
風呂はない。
シャインが体を拭いてくれる。
最初は断ったが、これがシャインの仕事だと悲しそうな目で見られると、断り切れなかった。
着替えて、ベッドに横になった。
はい、寝られません!
ワクワクしすぎて、まるで遠足前の子供だ。
中身はアラフォーなのに……。
「………」
寝不足だ。
体は七歳児だから、寝不足はよくない。
でも今日は特別な日だ。
「坊ちゃま。大丈夫ですか」
「大丈夫、大丈夫。早く属性を調べて使いたいからね」
シャインに笑われた。
声を殺そうとしているようだが、次第に止められなくなって腹を抱えて笑い出した。
そんなにおかしなことを言ったつもりはないのだが? 若い女の子の笑いのツボは理解しがたいな。
涙目になりヒーヒーと声を出すから、笑っているのか泣いているのか分からない。
もうそろそろ止めなさいよ。
「何がそんなにおかしいのかな?」
「フー……。坊ちゃまは本当に魔法が好きなのですね」
そりゃー、魔法といったら夢が詰まっているじゃないか!
「だって魔法だよ。憧れるでしょ!」
「ご当主様は炎の賢者、奥様は氷の剣姫。そのお二人のお子である坊ちゃまであれば、きっとよい属性とレベルを得られることでしょう」
属性は一八種類あって、各属性に才能レベルというものがある。
才能レベルは〇から九まである。
才能レベル〇はその属性を使えないということになる。
属性の才能レベルは努力することが前提だ。
才能があっても、努力しないと宝の持ち腐れということだろう。
才能レベルが一と二はちょっと使える、三と四はそこそこ使える、五と六はかなり使える、七から九は英雄クラスの活躍ができる。
こんな感じらしい。
俺が聞いた話では、貴族だと才能レベル四が一つあれば、帝国騎士団に入れるそうだが、平民だと才能レベル六でないと入団テストも受けさせてもらえないらしい。
まあ、何にでも裏口はあるらしいが。
あと、属性についてはこんな感じになる。
・誰でも持っている属性 : 無
・基本四属性 : 火、水、風、土
・上位四属性 : 熱、氷、雷、金
・神聖系属性 : 光、聖、生
・暗黒系属性 : 闇、邪、死
・希少系属性 : 時空、重力、特殊
希少系属性の中に、特殊というものがある。
これはそれ以外の一七属性に属さないもので、持っていてもどういうものか分からずに一生を終えることもあるそうだ。
過去にあった特殊属性で、明確になっているのはほんのわずからしい。
もし自分が持つ魔法が特殊属性だけだったら、その探求に人生をかけることになるかもしれない。
俺は両親と共に馬車に乗った。
馬には今も乗れないけど、馬車には乗れる。
触らなければどうということはないみたいだ。
両親に挟まれてガタゴトと町中を進む。
魔法の属性は神殿で確認することになるため、初めて屋敷を出た。
そう、初めての外出だ。
それだけでもワクワクするよ。
馬車の窓の向こうで流れる石造りの街並みが、ローマのように見えてしまう。
かなりの歴史がありそうな町並みだ。
そんな町並みに目を奪われていると、ガタンッと馬車が大きく跳ねた。
その振動で俺は座席から浮き上がってしまった。
「うわっ!?」
アイリッシュが俺を支えてくれ、床に落ちるのを防いでくれた。
「ありがとうございます。お母様」
「危ないからちゃんと座っていましょうね」
「はい」
なぜかアイリッシュの膝の上に乗せられた。
大きな胸が背中に当たる……。
まあいいか、気持ちいいし。
うちの屋敷よりは小さいけど、結構大きくて立派な建物の前で馬車は止まった。
ここが神殿のようだが、前世の記憶にある神殿や教会とは違って、普通の屋敷のように見える。
馬車は三〇人の護衛に守られていたが、神殿にも二〇人の兵士が配置されて厳重な警備がされている。
父バニアスは伯爵だし、母アイリッシュは皇帝の娘だからこれくらいの警備は当然か。
お膝元の町中の神殿だから、むしろ少ないくらいかも。
小説や漫画のように少数の護衛はありえないようだ。
神殿の中には神像がたくさんあった。
壁際にびっしりと並んでいて、神官と護衛以外誰もいない。
それ以外に誰かいたら、ヤバいけどね。
「アレッサンドロ大司教殿。今日はよろしくお願いいたす」
アレッサンドロ大司教は茶髪と灰色の瞳で色白の不健康そうな人だ。
まだ三〇代に見えるが、大司教はかなり高位の神官になる。
この神殿は聖チェレスティーナ教という宗教のものになり、多神教なので多くの神々を祀っている。
ルーンサクテット帝国の大都市ならどこにでも聖チェレスティーナ教の神殿があり、帝国と強いつながりがあると聞いたことがある。
「ようこそおいでくださいました。ロッククラン伯爵閣下。伯爵夫人、そしてご子息殿もお元気そうでなによりです」
「アレッサンドロ大司教様。今日はフェリクスのことをよろしくお願いしますね」
「よろしくお願いいたします。大司教様」
恭しく頭を下げておく。
大司教が俺の属性を決めるわけじゃないけど、これでいい属性が手に入るなら安いものだし、そうでなくても減るものではない。
「フェリクス様は礼儀正しいですね。聡明なお子様です」
中身年齢は貴方より上ですから。
精神年齢はまた別だけどね。
「早速だが、属性を確認してもらいたい」
「はい。ロッククラン伯爵夫妻はここ座ってお待ちください。フェリクス様はこちらへ」
両親は長椅子に並んで座り、俺はアレッサンドロ大司教に促されて祭壇の前に立った。
アレッサンドロ大司教は祭壇を挟んで、俺の反対側に立つ。
「属性は神々の加護ですが、なくても悲観することはありません。ほとんどの人に加護はありませんので。また、加護があれば、大いに感謝されますように」
「はい」
聖チェレスティーナ教では、属性イコール神の加護としているのか。
そう言われて違うという根拠はないし、むしろそうだと思った方が納得できる話だ。
本当かどうかは知らんけど。
祭壇の上には幾何学模様が描かれており、それを囲むように水晶のような小さな球が配置されている。
これで俺の属性を調べるようだ。
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