第5話 社交
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第5話 社交
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周辺貴族の多くは子爵や男爵のような、うちよりも家格の低い人が多い。
貴族位は皇帝を筆頭に、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、准男爵、騎士爵がある。
昔は皇帝も公爵家で、周辺の貴族をまとめ上げて皇帝になった。
そのなごりから、皇帝と皇太子なども公爵位を持っていたりするのが、この国である。
うちはこの辺りの貴族のまとめ役みたいな役割もあるそうだ。
いち伯爵であるバニアスだが、その武力と妻で皇帝の娘であるアイリッシュの血統のおかげで、かなりの発言力を持っている。
ロッククラン家としても、領内が以前より発展しているらしい。
おかげで、周辺の多くの貴族が従うようになった。
俺たちが入場したら、まずはバニアスによる挨拶のスピーチが始まる。
長い、長いよ、パパ。
バニアスは二〇分くらい喋り続けている(現在進行形)。
あんたは校長先生かよ!
その横では、アイリッシュは身じろぎ一つせずに美しい立ち姿を保っていた。
しかも終始笑みを浮かべているのだ。
その姿勢をキープするのが、どれだけ大変か俺でも分かる。皇族の面目躍如だね。
俺はというと、なんとか集中を切らさず不動に務めた。
足がつりそうになるが、気合いと根性でなんとかした。
こんなところでスポ根するとは思っていなかったよ。
さすがに七歳の体ではキツいぜ。
「―――今日は我が息子フェリクスの七歳の祝いに駆けつけてくださり、感謝いたします。それでは、パーティーを楽しんでください」
やっと終わった。俺が体の弱い子供なら倒れていたところだよ。
先生、八雲君が倒れましたー! と一度言われてみたかった。
俺、体だけは丈夫で、怪我で保健室を利用することはあったが、病気や体調不良で利用したことはない。
学校も柔道の試合で遠征している時以外は、小中高と皆勤賞だ(ドヤ顔)。
バニアスのスピーチ後に拍手が起こり、それが収まると今度は俺のスピーチになる。
子供たちを見てみなさいよ、もう飽きているって顔をしているよ。
俺のスピーチはできるだけ短くしよう。
「本日は私の七歳を祝ってくださり、誠に感謝します。私はまだまだ未熟であり、これから多くのことを学ぶことでしょう。誰よりも精進して参りますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」
よし、短くまとめたぞ!
短くまとめると同時に来賓の方々を立てたはずだ。
これなら短くても問題ないだろう。
パチパチパチパチ。
来賓からの拍手が起きた。
よくぞ短くしたと褒めてくれているようだ。
アイリッシュのスピーチはないから、次は各貴族からの挨拶を受ける。
予定に沿って進行されていく。
俺たちは挨拶を受ける側なので、動かない。
来賓が挨拶にやってきては去っていくのだ。
最初は帝都からやってきたランドン前公爵夫妻だ。
高齢(六〇過ぎ)の夫妻だけど、公爵夫人のほうはアイリッシュと競うような派手なドレスを着ている。
年齢の割に胸のボリュームがある。
コルセットで上げているのだろうかと、どうでもそういうことが気になってしまう。
「フェリクス君。七歳、おめでとう」
「ありがとうございます。ランドン前公爵閣下」
目上の方に対する礼をとり、感謝の言葉を口にする。
このランドン前公爵は、現国王の叔父に当たる人だ。
つまりアイリッシュの大叔父になるから、俺にとっても親戚になる。
「うむ。フェリクス君は賢いな。陛下は君の左目の怪我のことを大層気にしておられたぞ」
「皇帝陛下や前公爵閣下にご心配をおかけし、お詫びの言葉もございません。今後はこのようなことがないように、心がける所存にございます」
「まあまあ、フェリクスさんは聡明ですわね。うちのリエネッタと同じ年とは思えないわ」
前公爵夫人の横に空色の髪の可愛らしい少女が立っている。
目は切れ長で、色はサファイアブルーで深い海の色を思い起こさせるものだ。
この少女がリエネッタ嬢なのだろう。
彼女は現ランドン公爵の長女で、俺と同じ七歳の子供だ。
いや、まだ六歳か。
「フェリクスです。よろしくお願いしますね、リエネッタ嬢」
「リエネッタよ! 今後は親しくおつき合いしてあげるわ!」
おお、気の強そうなお嬢さんだ。
ただ、かなり緊張しているのか、ぎこちない動きなのが愛らしい。
ツンデレ属性が可愛く見えてしまう。
「私のほうこそ、よろしくお願いします」
彼女の前に跪き、手をとり、甲に口づけする。
「なななななな」
ボフンッと噴火音が聞こえそうなくらい顔を赤らめたリエネッタ嬢は、年齢なりの愛らしさを醸し出している。
とりあえず、同じ年代の女友達候補をゲットだぜー!
しかも将来が楽しみな美少女だ!
真っ赤な顔のリエネッタ嬢と前公爵夫妻が離れていく。
俺はしっかりと挨拶でき『決まったな』と思って両親の顔を見る。
ん? バニアスはなんで顔を引きつらせているのかな?
「お前は女誑しの素質があるのかもな」
「何を言うのかしら。フェリクスは社交的なのよね」
父と母で俺に対する評価が違う。
どうやらバニアスには、俺にすけこましの素質があるように見えたようだ。
まあ、浮名を流すのも悪くはないか。
アハハハ、無理無理。
前世で結婚したこともなければ、彼女だってトータルで片手の指の数で足りるくらいしかいなかったんだぞ。
そんな俺が女誑しになるなんてあり得ないよ。
前世ではどう考えても女性に縁がなかった。
もっとも、この世界ではフェリクスの容姿を持ってすれば、なんとかなるかもしれない。
いや、アラフォーオッサンになるまで直せなかった性格が、転生したからといって直るとは思えない。
それから多くの貴族の挨拶を受けた。
来賓が二〇〇組以上いるということは、挨拶も二〇〇回以上になるということ。
もううんざりですよ。
半分ほど挨拶が終わったところで、リエネッタ嬢並みの美少女を発見!
「あ、あの……ベルテス子爵の娘でクラリスと申しましゅ」
あ、噛んだ。
耳まで真っ赤にして恥ずかしがるクラリスは、艶やかな黒髪と黒い瞳だけど、日本人とはまったく違う西欧風の可愛らしい顔の少女だ。
この子も将来が楽しみだよ、うんうん。
「フェリクスです。お隣の領地ですし、お友達になってくれると嬉しいです」
ベルテス子爵領はうちの領地に隣接するから、比較的近い場所になる。
親しくして悪いことはないだろうと、手の甲に口づけ。
今のうちに唾つけておけば、一人くらいは俺の彼女になってくれるかもしれないからね!
「はうっ!?」
ボフンッ。
可愛いな。フフフ。
二〇〇回以上の挨拶も佳境に入ってきました!
挨拶だけで二時間以上だよ。
これ、虐待レベルの苦行ですけど?
「僕はチャンドラー騎士爵家のヴァストといいます。よろしくお願いします。フェリクス様」
男ならヴァストと聞くと、胸のことを思い浮かべることだろう。
しかし彼のヴァストは胸のことではなく、『広大な』という意味らしい。
俺も最初は胸かと思った。
健康な男の子なら、女性の胸に興味があるのは当然である!
彼は焦げ茶いろの髪をふわりとしたマッシュな感じにしている。
瞳も焦げ茶色だけど、糸目というのかな、細いことから表情が分かりづらい。
「フェリクスです。よろしくね」
握手してにっこり微笑む。
たしかチャンドラー騎士爵は、うちに仕える騎士の一人だったかな。
今は領内のなんとかという村の代官をしているはずだ。
ご愛読ありがとうございます。
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