第4話 長幼之序
■■■■■■■■■■
第4話 長幼之序
■■■■■■■■■■
朝、食堂に入って待っていると、父バニアスがやってきた。
彼は皆に声をかけてから席に着いた。
食事を進めていくデザートを食べたところで俺は口を開いた。
「お父様。お願いがあります」
「従魔の卵のことかね」
バニアスは笑顔を向けてくれる。
どうやらイケメン副団長から報告がいっているようだ。
「はい。どうも―――」
「それ以上は言わなくていい」
バニアスは俺の言葉を遮った。
どうやら俺が馬にトラウマを抱えてしまったことを家族にも知らせるつもりはないようだ。
「卵は用意しよう」
父が用意してくれると言ってくれた。
よかったと胸を撫でおろす。
「あ、あの!」
弟のジョルジュだ。バニアスの目が鋭いものに変わる。
どうしたんだ、イケメントオチャン? その鋭い視線は、めっちゃ怖いんですけど?
「今はフェリクスと話をしている。ジョルジュは控えなさい」
「でも、僕も従魔の卵が―――」
バンッ。
バニアスがテーブルを叩く音に、俺もそうだけど、弟妹たちが皆身を強張らせた。
「控えろと言った!」
バニアスがいつになく厳しい声だ。
「ジョルジュ! お父様に謝りなさい」
母アイリッシュが間に入り、ジョルジュはしょんぼりして小さな声で「ごめんなさい」と言った。
父バニアスの行動は誰がロッククラン家を継ぐのかを明確にしている。
貴族としては正しいのだろうが、さすがに厳しいと思う。
ジョルジュはまだ五歳なのだから、少しずつ言い聞かせていけばいいと思ってしまう。
ただ、子供たちがそういったルールを守れば、バニアスは決して声を荒げたりしない。
叱る時はしっかり叱る。そういうスタンスなのだろう。
しかし怖いな……まだ心臓がドキドキしているよ。
この後、食事を終えた皆がそれぞれ食堂を出ていくのだが、ジョルジュはとても悲しそうな顔をしていた。
それを放っておけなくて、彼に声をかける。
「もう少し大きくなれば、ジョルジュにも従魔の卵をもらえるよ、きっと」
ジョルジュは唇を噛んで、泣きそうな目で俺を見てきた。
自分(俺)だけズルいと言っているような目だ。
思わず頭を撫でてしまう。
俺は前世で独身だったが、子供は好きだ。
決してロリやショタではなく、純粋に子供が好きなんだよ。
よく甥っ子たちと遊んだと、つい懐かしんでしまう。
従魔の卵の許可をもらってから、毎日ウキウキしながら勉強に励んでいた。
勉強は大変だけど、それでも渇いた砂が水を吸うように身につけていった。
フェリクスの頭脳はかなりスペックが高いようだ。
体を動かすほうでも剣、槍、弓と、これが六歳の子供かと思うくらいできる。
フェリクスが五歳になった時から、ずっと続けてきた鍛錬の成果だとイケメン副団長が教えてくれた。
ただ、どうしても左側が死角になってしまうのが、もどかしい。
弟のジョルジュも剣の訓練に参加しているが、まだ腰つきが心もとない。
これが普通の五歳児なのだと思うけどね。
「ジョルジュ。休憩しよう。こっちへおいで、汗を拭いてあげるよ」
「………」
ジョルジュはブスッとしながらも俺のところにきて、汗を拭かせてくれた。
ツンデレっぽい態度に思わず頬が緩む。
可愛い弟だ。ニコニコ。
そしてあっという間に月日が経過し、フェリクスは七歳になった。
この世界でも子供の死亡率は高い。
貴族の子供でも突然死で七歳を迎えることができないことが多いのだとか。
魔法があっても、万能ではない。
そういうことなのだろう。
七歳になると、魔法の属性が定着し、それを調べることができる。
その前に七歳の祝いのパーティーが開かれる。
俺はロッククラン伯爵家の跡取り息子のため、盛大なパーティーが行われることになった。
ロッククラン伯爵領の周辺に領地を持つ貴族や、つき合いのある貴族やその子弟が参加するために集まってくる。
「立派です。フェリクス様」
俺の着替えを手伝ってくれたシャインが、目頭を押さえた。
姿見に映る俺は、左目に眼帯、右目はエメラルドグリーンの瞳でやや垂れ目ぎみ、今は銀色の髪をオールバックにしている。
なんでオールバックかというと、これが七歳の祝い時の髪形なのだとか。
似合わねぇ……。
続々と来賓がやってくる。
会場では音楽が奏でられ、バイキング方式の食事も用意されている。
それが俺の控室まで聞こえてくる。
伯爵家の跡取りの七歳の祝いということで、かなり盛大なパーティーになっている。
来賓は二〇〇組以上になり、さらに俺と年齢が近い子供がいると連れてきているのだとか。
父バニアスと母アイリッシュに合流する。
二人とも着飾っているね。主役の俺より目立ってますよ。
特にアイリッシュが。
「この目を治してあげられなくて、ごめんなさいね」
アイリッシュは中腰になって顔を近づけてきた。胸元がエロいです。
「これも私の運命。長くつき合っていきます」
「貴方は怪我をしてから、大人びてしまったわ。お母さんは寂しいわ」
「そ、そうですか……」
中身が替わっていると言えない。
ごめんね、アイリッシュ、バニアス。
『ロッククラン伯爵家、ご当主であり炎の賢者であらせられるバニアス様、帝国の至宝にして氷の剣姫であるご正室アイリッシュ様、そしてその血を受け継がれておいでのご嫡男フェリクス様のご入場です』
俺たちの入場の時間になったが、なんだよその紹介は。
すごく中二的な紹介だな、俺の両親。
「二人とも会場に入るぞ」
バニアスに続いてアイリッシュ、俺の順で会場に入る。
煌びやかな社交の場。俺のような庶民にとっては場違いな華やかさがある。
尻込みしそうになるが、勇気を奮い立たせて足を踏み出す。
錚々たる貴族たちの視線を感じるが、不思議と怖いとは思わない。
以前、ジョルジュを窘めたバニアスのほうが怖かった。
うちのパパはとても怖いんだぞ! ってね。フフフ。
さあ行こう、社交の始まりだ。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価してください。
『ブックマーク』『いいね』『評価』『レビュー』をよろしくです。




