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【タイトル変更】勇者転生のはずが、勇者じゃない!? と後で知ったから、力を寄こせと迫ってみた  作者: 大野半兵衛


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第3話 トラウマ

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 第3話 トラウマ

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 怪我の療養期間は終わった。

 俺は貴族の嫡子として教育を受けている。

 帝王学というべきものだ。

 帝国の歴史、地理、統治学、経営学、農学、軍学、礼儀作法などなど、多くの学問や知識を学ぶ。


 朝から夕方までびっしりのカリキュラムをこなす。

 これはキツい。

 貴族になってスローライフなんて考えていたら、絶対についていけないぞ、これ。

 自由になるのは、夕方以降からの少ない時間だけ。

 魔法の基本を読み返して、そこで疑問に思ったことがある。


 祈りのことを言魂(ことだま)というのだけど、これは魂の言葉という意味なのだろうか。

 もしそうなら、詠唱を口に出さずに魔法が発動するのではないだろうか。

 確かめたいが、七歳になるまでは魔法は使えない。

 俺が七歳になるには、あと四カ月。

 それまで我慢するしかない。


 魔法の基本には少し怖いことが書いてあった。

 七歳になる以前に魔法を使おうとすると、魔法の才能を消費すると。

 つまり、七歳で属性が固まる前に魔法を使ってしまうと、その才能がなくなってしまうのだとか。

 本当かよと思ったけど、こればかりはビフォー・アフターの確認ができない。

 試してみて、本当に属性がなくなったら洒落にならないから、するつもりはない。


 帝王学の中には、乗馬の訓練もあった。

 俺というか、フェリクスが大怪我をして左目を失った原因の乗馬だ。

 馬を前にすると、体が動かなくなる。

 おそらく俺の中にいるフェリクスが馬に乗るのを嫌がっているのだ。


「フェリクス様、いかがしましたか?」


 乗馬の訓練は、ロッククラン騎士団のセザール副団長が先生をしてくれる。

 セザール副団長はストレートで長い緑色の髪を首の後ろでまとめたイケメンだ。

 年齢は三四歳だけど、二五歳でも十分に通用する若さを保っている。イケメン滅ぶべし!


 以前は騎士団員が乗馬の先生だったが、当時のフェリクスが大怪我をしたことで僻地へ左遷されたと聞いた。

 その先生の教え方云々は俺に分からないが、主家の嫡子に大怪我をさせたのだから死刑もあり得る中で、左遷で済んだのは父バニアスの温情なのだと思う。


 それはともかくフェリクスが馬に乗るのを拒絶するため、俺も困ってしまった。


「どうも馬に苦手意識を持ってしまったようだ。体が動かないのだ」


 言いつくろってもすぐにバレるから、正直にセザール副団長に話した。


「なるほど、それは困りましたな……」


 イケメン副団長は全然困ってないように見える。

 こういう時のイケメンは、損をするのかな。

 それとも俺のことなんか、どうでもいいと思っているのだろうか。


「それでは仔馬はどうですか?」


 イケメン副団長に厩舎へ連れていかれ、仔馬を触ってみろと言いわれた。


 仔馬に近づくと、やはりダメのようだ。体が動かなくなる。


「これは本当に困りましたね」


 困っているのは俺なんだけどね。


 乗馬は貴族の嗜みだ。

 つき合いで狩りをすることもある。

 その際に馬に乗れないと、非常にマズいことになるらしい。


 とはいえ、これまで意志を感じなかったフェリクスがここまで嫌がっているのだから、相当なトラウマになっているのだろう。

 馬だけに……。

 ごめん、聞かなかったことにしてくれ。


「それでは従魔ならどうですか?」


 じゅうま? 断片的な記憶の中に、そんな言葉はなかったぞ。

 欠落した記憶のほうにあるのかな?


「た、試しに従魔を」


 どういったものか分からないが、とにかくチャレンジだ。


「………」


 連れていかれた先で、俺は唖然とした。

 そこには明らかにヤバい動物がいたからだ。

 おそらく魔物と言われる生き物だろう。


「これは某の相棒グリフォンです。名をイビネスといいます」

「グリフォンッ!?」


 獅子の胴体にワシの頭と翼。

 まさしくこれはグリフォンだ!

 すげー! 本物のグリフォンだよ! テンション上がるわー!


「さ、触っても怒らないか?」

「某がいる時なら問題ありません。ゆっくり近づいて、首の辺りを撫でてみてください」


 イケメン副団長がグリフォンの顔をワシャワシャして俺のことを言い聞かせてくれた。

 少しずつ近づいていく。

 なんとも言いようのない高揚感と恐怖が、俺の中で渦巻く。

 だが、足は止まることなく、イビネスに近づいていった。

 近づくとよく分かるが、すごく大きいな。馬より二回りは大きいぞ。


 手をそろりと伸ばし、その首に触れる。

 柔らかな羽毛のような感触だが、その下にある肉体はどんな攻撃も跳ね返す強靭なものに感じた。


「ほう、従魔なら大丈夫ですか。伯爵閣下にお伺いしないといけませんが、フェリクス様の従魔を手に入れたほうがいいかもしれませんな」

「従魔を持てるのか?」

「フェリクス様に従う魔物がいたら、ですね。卵から育ててもいいでしょう」


 卵から育てられるのか。バニアスにお願いしよう!


 その夜、俺はバニアスに卵を頼もうと食堂に入った。

 だけど、残念ながらバニアスはやってこなかった。

 まあ、会えない日のほうが多いから、そこまで期待はしてなかったよ。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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