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【タイトル変更】勇者転生のはずが、勇者じゃない!? と後で知ったから、力を寄こせと迫ってみた  作者: 大野半兵衛


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第41話 勇者(二)

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 第41話 勇者(二)

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 一応、勇者を迎えるということで、正装に着替えをする。

 そこへ祖父ゴーラスがやってきた。


「勇者がきたそうだな。何が目的だ?」

「勇者に関しては、昨日初めて聞きましたので、さすがにこのようなことは予想もしていませんでしたよ」

「うむ。無理難題を言ってきたら断れ。フェリクスが判断すればいい」

「分かりました」


 応接室へ入ると、黒髪黒目のあどけない顔の少女が座っていた。

 彼女の黒髪は貴族では滅多に見ない、ショートだった。

 ただ、ボーイッシュなショートヘアは、彼女によく似合っていると思えた。


 俺の姿を見たリンダ嬢は、ソファーから立ち上がった。


「初めまして、リンダ嬢。私がフェリクスです」

「いきなり押しかけてしまい、ごめんなさい」


 いきなり腰を九〇度折って、深々と頭を下げた。

 バニトール公爵の縁者というから、尊大な言動をするのではないかと身構えていたが、いきなり出鼻をくじかれてしまったよ。


 いかんな、一旦落ちつこう。とりあえず座るように促し、落ちつく時間を作る。


「できれば、お人払いを」


 ここには、俺とリンダ嬢とシャインしかいない。

 勇者が女の子ということで、二人っきりで会うのはマズいと判断したのだが、シャインを外に出せと向こうから言ってきたか。

 俺はシャインに視線を向け、頷いた。

 それでシャインは理解し、部屋を出ていく。


 もし俺を殺そうと考えていても、ドアの外には護衛がいる。

 仮に俺を殺せても彼女にいいことはないはずだ。

 いくら俺のことが嫌いなバニトール公爵でも、勇者を鉄砲玉にはしないだろう。

 そんなことをしても、バニトール公爵の懐は温かくならないどころか、下手をすれば痛手となるのだから。


「いきなり押しかけてきた上に、失礼なお願いをしたことをお詫びいたします」

「いや、いい。それで、今日はどのようなご用で?」

「今日お伺いしたのは、フェリクス様に確認したいことがあったからです」

「確認? 何を?」

「フェリクス様は電車や自動車という言葉を聞いたことないでしょうか」

「え?」


 電車、自動車、それは前世で普通にあったものだ。

 こちらでは聞いたことのないものであり、彼女はなぜそのことを知っているんだ?


「その様子では知っておられるのですね」


 いきなりのことで動揺してしまった。

 それが顔に出てしまったようだ。


「リンダ嬢はその言葉をどこで?」


 彼女は徐に立ち上がり、横までくると膝を床につけ俺の右手をそっと握った。

 彼女の手は俺の手を握りながら小刻みに震えていた。


「椎名千奈津という名前に心当たりはありますか?」

「っ!? な、なぜ、その名前を……?」


 思わず立ってしまうほど、俺は驚いている。

 彼女は立ち上がった俺の手を離さないようにしっかりと握っていたが、ゆっくりと立ち上がった。


「やっぱり先輩だ。私です。椎名です」


 なんだと!?

 だが、俺のことを先輩と呼ぶ椎名は、彼女以外にいない。


「本当に椎名なのか?」

「はい。後輩の椎名です!」


 あの時、俺は椎名を助けたはずじゃなかったのか?

 あのストーカーを道連れにしたはずなのに、なぜ椎名がここにいるんだ?


「お前、なんでここにいる? まさかストーカー野郎に!?」

「違います。私は先輩のおかげで線路に落ちずに済みました。先輩があのストーカーを道連れにしてくれたおかげで、私は二度とストカーに悩まされることなく天寿を全うしました」

「それならなんでここにいるんだ?」


 理解が追いつかない。


「私はずっと先輩のことが心に引っかかっていました。私が一緒に帰ってほしいと言ったために、電車に轢かれた先輩に申しわけなくてずっと悔やんでいました」

「……天寿と言うが、何歳まで生きたんだ?」

「一〇〇歳までです。それが私への罰だったのでしょう。先輩が亡くなって、七六年間悔やみ続けました」


 そんなに長い時間を……。

 気にしなくてよかったのに、とは言えないな。それを言ったら彼女の七六年はなんだったのかということになる。


 だが、七六年は長い。

 そんなに長い間罰のように後悔しなければいけなかった彼女は、とても辛かったはずだ。

 だが、それならなんで彼女はここにいるんだ? なぜ転生した?


「悔やみ続けた七六年は無駄ではなかったのです。私は先輩にお会いして謝りたくて、そしたら神様が現れて、私を転生させてくださったのです」

「はい?」


 神様とか、何を言っているんだ?


「何を……?」

「説明します」

「ああ、頼むよ」


 椎名が言うには、この世界を管理する神様がいて、その神に転生させてもらったそうだ。

 椎名が俺に嘘をつく必要はないから、本当のことなんだろう。

 だけど、俺は神様に会ってないんだけど?

 なんで椎名だけなんだ?


「神様は私に先輩の手伝いをしろと仰いました」

「俺の手伝い? 何を手伝うんだ?」

「魔王討伐です」

「はぁ?」

「あれ? 魔王討伐を了承して転生したと、神様は言ってましたよ?」

「初耳なんだけど?」


 なんだよ、それ。

 俺、そんな約束してないだろ。

 そもそも神なんかに会ってないし。


「おかしいですね。七歳の誕生日に合わせて、前世の記憶や神様との約束を全部思い出すと聞いていたのですが……」

「ちょっと待て。俺は七歳じゃなく、六歳で記憶を取り戻したぞ」

「え? 七歳にならないと、記憶は戻らないはずですよ?」

「どういうことだ? 俺が六歳のうちにフェリクスの体を乗っ取ってしまったのか?」


 水精霊の言葉を信じるのなら、乗っ取ってはいないはず。


「憑依や乗っ取り、ではないです。そこは聞きましたので、大丈夫です。なんでも魂を定着させるのは、母体内の胎児に対してが一番で、この世界で輪廻転生している魂も、母体内にいる間に定着するそうです。それと記憶を最初から持って生まれるのは、体への負担が大きいそうです。ですから、七歳になるまで記憶を封印しておくと言っていました」


 椎名が説明してくれたことは理解できるが、俺は七歳になる前に記憶が戻ってしまったぞ?

 まさか落馬事故のショックで記憶が戻ったのか?

 その可能性は否定できないが、よく分からんな。

 ん、ちょっと待てよ……。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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