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【タイトル変更】勇者転生のはずが、勇者じゃない!? と後で知ったから、力を寄こせと迫ってみた  作者: 大野半兵衛


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第35話 誘拐事件

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 第35話 誘拐事件

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 美容騒動から一カ月ほどが経過した。

 俺は帝都と領地をいったりきたりしたが、なんとか落ちついた。


 久しぶりに領内に出て気晴らしをしようと思った俺は、トットナム隊長たちと小姓たちを引き連れて町に出た。


 馬車で町中を進んでいると、男性二人が掴み合いの喧嘩をしていた。

 警備隊がすぐにやってきて喧嘩を仲裁しようとしたが、なかなか収拾がつかない。


「あれはなんで揉めているんだ?」

「聞いてまいります」


 護衛の騎士が警備兵に事情を聴いて戻ってきた。


「どうやら子供を取り合っているようです」

「子供を?」

「産みの親と育ての親だそうです」

「その産みの親のほうは、どうして子供を手放したんだ?」

「貧しいため里子に出したらしいのですが、最近はなんとか生活もできるようになったので返してほしいと、半年ほど前から頼んでいたそうです」

「勝手な話だな。その子供は何も知らないんじゃないか?」

「はい。子供は育ての親を本当の子供だと思い込んでいます。だから近寄らないでほしいと、お金をいくらか渡したそうなのです。それで産みの親のほうは現れなくなったのですが、その子供が七歳になって属性を確認したら、属性レベルが高かったようなのです」

「そこで産みの親が欲を出してまた出てきたわけか」

「その通りにございます」


 子供は育ての親を本当の親だと信じて暮らしているというのに、こんな騒動になっては自分の本来の生まれがその子の耳に入ることだろう。


 警備隊は産みの親を引き立てていった。

 お金をもらっておきながら、顔を出した以上は詐欺だからな。

 詐欺は重罪だ。


「ところで、その子供はどんな属性を得たのだ」

「はい。今話題の生属性と水属性です」

「あー……なるほど」


 生属性と水属性を持っていると、領主家で働ける。

 上手くいくと、帝都の帝城で働くことも可能だ。

 今、うちの領地で一番ホットな話題になっている。


「その子供に会おう。その親を連れてきてくれ」

「はっ」


 親に子供に会わせてほしいと頼むと、彼の家まで案内をしてくれた。

 彼は領都フランチェスコで雑貨店を商っていて、その子は店の裏の家にいるはずだった。


「シトラスがどこにもいません!」


 娘のシトラスはどうやら騒動のせいで、自分が本当の子供じゃないことを知ってしまったようだ。


「シトラス……」

「そのシトラスの特徴を教えろ。髪の色は、長さは、目の色は、背格好は」

「フェリクス様。もしかして」

「ああ、捜すぞ」

「何もフェリクス様がそのようなことをしなくても、警備隊に任せておけばいいのです」

「乗りかかった船だ。そんなことより、お前たちも捜すんだぞ」


 子供の足だ、そんな遠くへはいってないだろう。


 俺の予想に反して、子供は見つからなかった。

 雑貨店の店主夫婦は憔悴していたが、子供のほうが心配だ。


 やってみるか……。


 時空魔法と魔眼を組み合わせ、過去の状況を見られるかもしれない。

 やったことはないが、今やらずしていつやるのか!?


 時空属性と魔眼よ、時を遡り、俺に過去を見せろ。ふんっ!

 気合いだ! 気合で過去を見せろ! はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!


 ―――見えた!


 黒髪黒目で、髪の長さは肩辺り、着ている服はピンクのワンピースにベスト、背丈は俺より少し低い。

 店主に聞いていた通りの子だ。


 シトラスは店主と産みの親の騒動を、店の角から遠巻きに見ていた。

 その時、シトラスの後方から手が伸びてきて、口を塞がれ闇魔法をかけられ眠らされたようだ。

 無抵抗のシトラスは猿ぐつわをされ、麻袋に入れて連れていかれた。

 騒動に乗じて子供を攫うとは、許せん奴らだ!


「あっちだ」

「え、フェリクス様?」

「早くこないと置いていくぞ」


 トットナム隊長たちと小姓たちを引き連れてシトラスを攫った三人の男の後を追う。

 あまり人目につかない道を進む。

 男たちはこの町を知り尽くしているようだな。

 地元の犯罪組織なのかもしれない。

 追跡を警戒しているのか、男たちは複雑な経路を進んだ。


「ここだ」

「ここは……」

「トットナム隊長はここがどこか知っているのか?」

「はい。ここはアルフェニス准男爵家の屋敷です」

「アルフェニスだと……」


 アルフェニス准男爵はうちの家臣ではないが、うちに出入りしているアルフェニス商会の会頭だ。

 大物だが、犯罪を許すわけにはいかない。

 だが、どうするか。

 俺たちは目立つから、門の前でうろうろしていると証拠隠滅を図られかねない。

 近くの家の一角を借りて監視をすることにした。


 アルフェニス准男爵家の屋敷は高い壁に守られ、中の様子は窺えない。

 おい、魔眼。こういう時に透視とかできないのか?

 ぐっ!? 俺の想いに魔眼が反応し発動し、壁の中を見せてくれる。

 当然ながらモノクロだ。

 コントロールが難しい。気持ちが悪い。

 だが、ここで俺が諦めたら攫われたシトラスがどうなるか分からない。早く助けてやらないと。

 そのためには、この屋敷の中にシトラスがいると、確証がないといけない。


 屋敷は三階建てで、かなり広い。

 それだけ財力を持っているということだ。

 武装したゴロツキのような男たちの姿が多いな。

 その逆で使用人は少ない。


 一階から順に見ていく。

 一階にはいない。二階にもいない。三階は……いない。

 他に倉庫などがあるが、どこにもシトラスの姿はない。

 どういうことだ?


 そうか、地下があるのか。地下を透視だ。

 あった! 地下通路だ。

 地下通路を追っていくと、地下牢のような場所があり、そこに多くの子供が入れられていた。なんだよ、これは!?


「トットナム隊長。今すぐ父上に報告だ。このアルフェニス准男爵家の屋敷の地下に子供たちが捕らえられている。シトラスだけじゃなく、多くの子供が捕まっていると」

「なんと!?」


 トットナム隊長たちはかなり驚いていた。


「武装した男たちが、最低でも五〇人はいる。それも報告し、直ちに騎士団を派遣してもらうのだ」

「承知しました。ニージス、お前が屋敷に走ってくれ」

「はっ」


 イケメンで護衛騎士隊長補佐のニージスが走っていく。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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