第34話 美容家フェリクス
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第34話 美容家フェリクス
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お婆ちゃまが白粉を落とすために自室に下がった。
皇帝にどうしても素肌を見せたくないらしい。
祖父ゴーラスもいるしね。
お婆ちゃまの部屋に呼ばれ、俺だけで向かう。
皇帝も祖父ゴーラスも入室禁止だ。
部屋に入ると、お婆ちゃまの他に何人も女性がいた。
またこのパターンか。
「フェリクスちゃん。こんな醜い肌でごめんなさいね」
「いえ、お婆ちゃまはとても美しいですよ。お婆ちゃまじゃなく、伯母様かと思いました」
お世辞ではなく、まだ三〇代で通じるくらい若いです。
「もう、フェリクスちゃんったら。嬉しいことを言ってくれるわね。ウフフフ」
皇后に抱きしめられた。
うん、窒息する。
アイリッシュの胸は皇后譲りのものだった!
窒息死する寸前で、皇后つきメイドのミシュルに助けてもらった。
俺はまだ生きていいようだ。フー。
「皇后様。少しはご自重ください」
「だって、フェリクスちゃんが可愛いんだもの~」
アイリッシュは間違いなく皇后の娘だね。そっくりだ。
色々弄られたが、本来の目的の美白をする。
いつも以上に気合を入れて、美白魔法を発動させる。
皇后の体中の皮膚の新陳代謝よ、促進しろ!
「「「まあ!」」」
美白魔法を施した皇后を見て、女性たちが叫び声のような歓声をあげた。
「皇后様!」
ミシュルが鏡を差し出す。
その鏡は俺が贈ったものだね。愛用してくれているようで、何よりだよ。
「こんなに綺麗になるなんてっ!?」
皇后の表情が笑顔で包まれる。
「まだ途中ですよ、お婆ちゃま」
「はい。よろしくお願いしますね。フェリクスちゃん」
次は潤い魔法。
いつもより念入りにしています!
鏡で確認し、自分の頬を触った皇后は満面の笑みだ。
瑞々しい白い肌に満足いただけたかな。
「フェリクスちゃん。ありがとうね」
「いえ、お婆ちゃま……本当に祖母じゃないみたいですよ」
「もう、フェリクスちゃんったら~♪」
その後は女性たち全員に美容を施した。
疲れた。
何度も皇后に抱きしめられ、何度か死にそうになったが、俺は生きて帝都屋敷に帰ったのだった。
うーん。いい朝だ。今日は帝都見物をし、明日帰ろう。
「トットナム隊長。朝食後に帝都見物に出かけるから」
「承知しましてございます」
食堂で祖父母と食事を摂る。
祖母エリザベスは普通の食事ができるまで回復している。
元気そうで本当によかった。
それに、ロッククラン領から送った人たちが、美白魔法と潤い魔法でお肌のケアをしているらしく、とても若々しく見える。
「今日は帝都見物をし、明日帰ります」
「うむ」
祖父ゴーラスが頷いた時、食堂の扉が開き執事が入ってきてゴーラスに耳打ちした。
それを聞いたゴーラスがしかめっ面をした。
何かあったのか?
「帝都見物はできそうにないな」
「え?」
「帝城からの呼び出しだ」
「……皇后様からですか?」
「いや、今度は皇太子妃だ。間違いなく、あの件だろう」
俺はまた帝城で美容家をしなければいけないらしい。
「わたくしも一緒にいきましょう」
「エリザベスが? しかしまだ体調が」
「もう体調に不安はありませんから大丈夫ですよ。それにフェリクスが毎回呼び出されてはいけません。楔を打ち込んでおきますわ」
女の戦いが今始まるのであった。なんちゃって。
祖母エリザベスと、エステができるメイドを連れて帝城に向かった。
皇太子妃の部屋に入る前に、皇太子に会った。
廊下でたまたま会った体だが、仕組まれているのは言うまでもない。
「昨日に続いて今日も、すまないな」
皇太子は本当にすまなさそうにしていた。
祖母エリザベスに睨まれたからじゃないと思う。
「今日は皇后に立ち会ってもらっているが、皇太子妃だけでなく他の皇族の女性陣が勢揃いしているよ」
大勢いるらしい。エステ組のメイドを連れてきてよかった。
「殿下。フェリクスは当ロッククラン家の跡取りです。このようなことで何度も呼び出しを受けるのは、甚だ遺憾にございます」
「分かっています。そこで頼みなのですが、貴家で抱えている美容の魔法ができるものをお貸しいただけないだろうか。もちろん好待遇を約束しよう」
「領地のほうで育成を行っておりますが、帝城に入れるような身分の者ばかりではありません」
「そこはなんとかするゆえ、頼めないだろうか」
「分かりました。呼び寄せるようにします。ですが、不当な扱いを受けた際は、全員引き上げますからそのつもりでいてください」
「承知した」
皇太子も大変だ。
それだけ女性陣の美容に対する欲求が強いということなんだろう。
こういう時の女性は怖いと、祖父ゴーラスが言っていたよ。
そこには皇太子妃の他に、他の皇子の妃や側室、皇女たちが勢揃いしていた。
なぜか降嫁して貴族家に嫁いだ元皇女たちも集まっていた。
さすがの祖母エリザベスも、その光景に顔を引きつらせていた。
カオスだ。
発動に慣れた魔法を多く使っても、それほど疲れることはない。
でも、女性相手の魔法は精神的な疲弊が大きい。
エステメイドと手分けして美容魔法を施したが、本当に疲れた。
祖母エリザベスが、皇太子から要請があったから領地からエステメイドたちを呼びよせると言うと、女性たちは歓喜した。
しかし祖母エリザベスはしっかり楔を打ち込んでいた。
エステメイドはうちから出向という形になり、一人でも不当な扱いを受けたら全員を引き上げるとね。
うちが斡旋した仕事なのに、害されでもしたらメンツにかかわる。
だからしっかり言い聞かせていた。
夕方近くになるまで美容家をした俺は、ヘトヘトになって帝都屋敷に帰った。
帝都見物は次の機会にお預けだ。はぁ……。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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