第33話 美白
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第33話 美白
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生魔法で美白できる魔法使いはなかなか現れない。
皆が必死で魔法訓練をしている頃、俺は水魔法で保湿したら美白と潤いが得られるのではと思ってやってみた。
気合いでやったら、できてしまった。
「フェリクス~♪」
母アイリッシュがまた抱きついてきた。
大きな胸に包まれてまるで天国のようだ。
「奥様! 坊ちゃまがグッタリとしています!」
「え、フェリクス!」
はっ!? 危うく本当に天国に召されるところだった。
「奥様の胸は凶器になるのですから、お気をつけください!」
アイリッシュつきメイドのヒーリアが気づかなかったら、俺は死んでいたよ。
危ない、危ない。
しかし、本当にアイリッシュの胸は凶器だ。
しかも気持ちいいから、凶器だと気づかない。
とにかく、アイリッシュに美白と潤いを与えると、なぜかメイドたちが列を作っていた。
「坊ちゃま。よろしくお願いいたします」
「「「よろしくお願いいたします!」」」
メイド長を始め、ほぼ全てのメイドが並んでいる。
美白なんて必要なさそうな若い子まで、なんで?
「お、おう……」
俺は美容家ではないのだが……とは言えない。
目が笑ってないんだよ、皆。
怖すぎる。
「はー、酷い目にあった」
「フェリクス様が奇抜な魔法を生み出すからですよ」
「「美容は女性の大好物です」」
小姓たちよ、俺のせいだと言うのか。
「ガウガウ」
え、シロガネまで俺のせいだと? うぅぅぅ。
「そうだ!」
俺は手を打って、エドの肩をガシッと掴んだ。
「エドは生魔法レベル六を持っていたじゃないか。お前が美白魔法を覚えれば、俺の負担が減る。さあ、覚えろ!」
「ちょ、勘弁してください」
「フフフ。逃がさんぞ、エド」
俺のためにエドが美白すればいいのだ。
あとは水魔法だな……そうだ、いたじゃないか。
「メイン。こっちへおいで」
「シャイン様。私、怖いです」
メインがシャインの後ろに隠れるが、もうロックオンしちゃったもんね。
彼女は水属性レベル三だから、できるはずだ。フフフ。
「メイン。皆のためです。いってらっしゃい!」
メインはシャインに裏切られたと、顔を左右に振りながら後ずさりした。
ビシビシッ鍛えるぞ!
気合を入れろ!
気合があればなんとかなる!
エドは三日、メインは五日で魔法を覚えた。
集められた人の中から美白魔法をものにした人はいなかったので、この二人は優秀だとアイリッシュから評価された。
俺の鍛え方がよかったのだ!
エッヘンッ。
俺は詠唱せず気合いで魔法を発動させるが、二人は詠唱をする。
俺が適当に作った詠唱の文言だが、それで発動するのだから詠唱がいかにいい加減で不要なものなのか明らかだろう。
それなのに、詠唱をありがたがるこの世界の人々はどうかしている。
それでも詠唱を覚えさせると、他の人も魔法が使えるようになった。
解せぬ。
魔法を覚えた数人を、帝都の屋敷に送った。
祖母エリザベスの美容担当として仕えてもらうことにしたのだ。
お婆様は喜んでくれるかな。フフフ。
俺は今、長い廊下を歩いている。
うちの屋敷よりもかなり長い廊下だ。
騎士を先頭に、祖父ゴーラスがズンズン廊下を歩く。
そして観音開きの扉の前に立つ騎士と言葉を交わし、扉が開かれる。
そう、ここは帝都。
俺は皇帝から大至急帝都にこい! と命令されて、ここにいる。
祖父に続いて部屋の中に入っていくと、ソファーで寛ぐ壮年の男女がいた。
「ゴーラス・フォン・ロッククラン。参上いたしました」
「初めて御意を得ます。フェリクス・フォン・ロッククランです。よろしくお願いいたします」
「そんな改まった挨拶はいい。儂がフェリクスの祖父であるラグジール八世だ。さあ、座りなさい」
祖父と俺がソファーに座る。
「わたくしが貴方のお婆ちゃまのイザベルよ。よろしくね、フェリクスちゃん」
フェリクスちゃんて……。
「はい。よろしくお願いします。皇后陛下」
これは非公式の面会だ。
俺は皇帝の外孫だから「遊びにきたよ」という体らしい。
「もう、お婆ちゃまと呼んでくれるかしら」
皇后をお婆ちゃまと呼んでいいのだろうか……?
「お、お婆ちゃま」
「ウフフフ。よくできました」
ただお婆ちゃまと言っただけなのに、頭を撫でられた。
「ふむ、その左目は治らぬのか」
「複数の医師に治療を試させましたが、難しいかと」
祖父ゴーラスの言うように「聖女でなければ治せない」と医者は言っていた。
もしかしたら、そのうちこの国にも高レベルの生属性使いが現れるかもしれない。
可能性は低くても、決してゼロじゃないはずだ。
その時には、治せるものなら治してもらいたい。
その時は、この魔眼はどうなるのかな?
白黒とカラーの世界の混じり合う視界にも慣れちゃったしなー。
「帝城詰めの典医に治療させよう」
「そうね。フェリクスちゃんの可愛いお顔が……でも眼帯のフェリクスちゃんも可愛いわ」
可愛いと言われて嬉しがる年ではない。中身はアラフォーオッサンだからさ。
すぐに御典医が呼ばれた。
御典医とは皇帝や皇后、皇室のメンバーの健康管理や治療を行う、国内でも優秀な医者たちだ。
その御典医によって俺の目の治療が行われたが、潰れた目は開くことはなかった。
「「「も、申しわけございません!」」」
御典医たちは平身低頭で皇帝と皇后に謝った。
彼らのせいじゃないから、そんなに睨んであげないでほしい。
気の毒になるほど青い顔をしているからさ。
「して、この報告書にあったことは本当か?」
話は変って白粉の素材として使われている鉛は、人体に悪影響を及ぼす。
それを知らずに貴族や金持ちの女性たちが使い、鉛中毒によって早死にする。
そのことを祖父ゴーラスが皇帝に報告。特に皇后に。
皇后も白粉を使っていて、最近はあまり体調がよくなかったらしい。
「でも、衰えた肌を陛下にお見せするのは、嫌だわ」
そういう問題じゃないんですけど……でもそれが女心というものなのだろう。
嫌と言われても使い続けてもらうわけにはいかない。
とはいえ、皇后……お婆ちゃまも引けないものがあるようだ。
そこで俺が呼ばれた。そう、美白魔法だ。
「白粉の鉛の件は、帝城内で働く者にも確認したが、真に体調不良を抱える者が多かったわ」
皇帝は顔を左右に振る。
化粧品が毒だとは思ってもいなかったと言いたげな表情だ。
「白粉の危険性は喚起しよう。しかし問題がある」
「白粉を作っている者らですな」
「そうだ。白粉はファムバール侯爵の領内で作られておる。ファムバール家は白粉で莫大な富を築いておるからの」
「反旗を翻されては厄介ですな」
白粉を作っている有力貴族が反旗を翻すのは問題だが、それ以上に健康被害のほうが問題だと思う。
「何が問題か分かりません。白粉で莫大な富を築いているのでしたら、白粉の毒によって死亡した方や健康被害を受けた方へ賠償してもらいましょう。それだけの財力がありますよね?」
俺の言葉に、皇帝と祖父ゴーラスが顔を見合い、噴出した。
「ハハハ。それもそうだな!」
「ガハハハ。さすがは、我が孫だ!」
「「面白い!」」
気が合うね、俺の祖父コンビ。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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