第32話 帰還
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第32話 帰還
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祖母エリザベスは日に三度の解毒魔法を施され、かなり回復した。
この調子ならあと数日で動けるようになるだろう。
魔眼で見ても腹部周辺の異常は、かなり小さくなっている。よかった。
「お婆様。あーん」
「自分で食べられるわ」
「病人なんですから、大人しくあーんしてください」
この帝都にいる間は、お婆ちゃん孝行をすると決めた。
スープをフーフーと冷まし、飲ませてあげる。
「なんだか気恥ずかしいわ。でも、ありがとうね、フェリクス」
明日は領地に戻るから、もっと元気になってもらいたい。
俺の元気を分けるつもりで、あと少しの時間を過ごそう。
翌日、祖母エリザベスの顔色はとてもよくなっていた。
これならもう大丈夫だろう。
「お婆様。俺は領地に戻りますね」
「もういってしまうのね。今度はいつ会えるかしら?」
「お父様にお願いし、年に一度くらいは帝都にこられるようにします」
「その時を楽しみに待っているわ」
ベッドから起き上がれるようになった祖母エリザベスに別れを告げて、玄関へと向かった。
「お待たせ、リリス嬢、パメラ嬢」
「「お婆様とのお別れはもういいのですか?」」
「うん。また会いにくるからさ」
本当は二人と共に帝都見物をしようと思っていたが、今回は祖母の件があったからできていない。
どこかで埋め合わせをしないとな。
「お爺様。お元気でお過ごしください」
「うむ。フェリクスもな。次はエリザベスも元気な姿で迎えてくれよう」
「はい。その時を楽しみにしております」
馬車に乗り込み、屋敷を出る。
見送りは屋敷の使用人総出だ。
このパリのような町ともしばらくお別れだ。とこの時思っていたのだが、すぐに帝都に戻るとは思ってもいなかった。
領地に帰るとリリス嬢とパメラ嬢を見送り、俺は父と母が待つ部屋へと入った。
そこで帝都であったことを報告するのだが、アイリッシュがムギューッとするから離れてもらうのが大変だった。
気持ちいいのだが、窒息するかと思ったよ。
「そんなことがあったのか。母上も大変だったな……」
「ですから、お母様も白粉は使わないでください」
「ええ、そうね。でも、白粉がないと女性は困るわ。なんとかならないかしら」
この国では、白粉を使うのはある程度年齢がいった人になる。
若い頃は白粉を使わない人が多いので、妊娠した際の子供に悪影響は少ないようだ。それだけはよかったと思っている。
しかし白粉か、さすがに俺には無縁のものだ。
前世なら絹雲母から作れるはずだけど、さすがになぁ。
前世ではファンデーションの材料になる絹雲母があった。
この世界でもあればいいのだが、この世界にそんなものがあるのだろうか?
ん……考えたら、肌が白く見えればいいんだよな。むしろその方がいいはずだ。
シミやくすみは皮膚の新陳代謝を促せば軽減できるはずだ。
それって、生魔法でなんとかなりそうなんだが……やってみるか。
そうなると、シミやくすみのある人を探さないと……目の前にいたよ、ローランド!
「ローランド、ちょっとこっちへきて」
「なんでございましょうか、坊ちゃま」
ローランドはもうすぐ六〇になる。
頬にはシミが見えるし、手の甲のくすみもある。
「ちょっとじっとしててね」
「承知いたしました」
よし、やるぞ! 気合で新陳代謝を促進させるんだ、生魔法!
フンヌーッ! ウオオオオオオッ!
「こ、これは……」
ローランドの手の甲のくすみはかなり薄くなり、白い肌が出てきた。
なかなかきめ細かい肌だね、男にしておくのは勿体ないよ。
「坊ちゃま。ご説明いただけますか」
「そうだ―――」
「キャーッ! フェリクス! それ、どうやったの!? ママにも教えて!」
父バニアスの言葉を、アイリッシュの叫び声が遮った。
「さあ、ママに教えなさい! 早く教えるのよ!」
教えろといいながら、オッパイで俺の顔を挟むのは止めてくれないだろうか。
マジで窒息死するから。タップ、タップ。
「アイリッシュ。落ちつくんだ。フェリクスを離してやれ、それでは死んでしまうぞ」
「あら、わたくしとしたことが、オホホホホ」
はぁはぁ、本当に死ぬかと思った。
「これは生魔法で肌の新陳代謝を促しただけです。要は古い肌を新しい肌にする感じですね」
「そんなことができるの!?」
「できますよ。多分、シミにもある程度は効果があると思います」
「なんてことなの! これは画期的なことだわ!」
それからすぐに生魔法の使い手たちが集められた。アイリッシュはやる気だ。
あの目は本気だ。
できなければ、生属性使いたちは……考えるのはよそう。
集められた生魔法の使い手の中には、レベル一の人もいた。
どのレベル帯の人が新陳代謝を促進できるのか実験も兼ねているようだ。
少なくともレベル三の俺でもシミやくすみを消せるのだから、そこまでハードルは高くないと思われる。
ただし、俺は前世の記憶があるから、新陳代謝のメカニズムをある程度理解している。
こちらの人にそれをしろと言われてもなんのこっちゃと不思議がることだろう。
上手くいくのは、さて何人だろうか。
また、領内で白粉を使っていた女性の体調不良がないかを確認することにした。
基本的に白粉は貴族と富裕層だけが使っているので、調査は早く終わった。
体調不良はかなり多くの人にあったが、白粉の使用を止めて解毒魔法を施すと症状は改善していった。
このことは帝都の祖父ゴーラスを通じて、皇帝へ報告されることになった。
祖母エリザベスだけでなく、領内の多くの人が解毒魔法で症状が改善した以上、これを報告しないわけにはいかないのだとか。
このことを知っていて使い続けるのは個人の自由だけど、知らずに使って死に至るのは不幸だ。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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