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フェリクス ~この男、取り扱い注意にて~  作者: 大野半兵衛


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第31話 リエネッタ嬢は安定のツンデレ

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 第31話 リエネッタ嬢は安定のツンデレ

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 ランドン公爵家で、リエネッタ嬢の七歳を祝う宴が行われている。

 ランドン公爵はリエネッタ嬢と同じ空色の髪をしているイケメンオジサンだった。


 俺はお爺様と公爵夫妻、そしてリエネッタ嬢に挨拶をする。

 さすがにうちより高位の貴族が多く出席しており、すぐに挨拶をするというわけにはいかなたった。


「これはゴーラス殿。ようこそおいでくださいました」


 公爵はとても柔和な表情で迎えてくれた。


「我が孫フェリクスだ」

「フェリクスです。よろしくお願いいたします」


 公爵夫人は髪こそ黄緑色だけど、顔はリエネッタ嬢とよく似ていた。


「リエネッタと親しくしてくれて、ありがとうね。フェリクス殿」


 公爵夫人の声はとても優し気で、耳に心地よく聞こえた。


「いえ、私のほうこそ親しくしてくださり、嬉しく思っています」

「フェリクス殿は聡明だな。今日はいいものをいただいた。この場を借りて感謝を伝えたい」


 いいものというのは、プリンの器―――ソーサー型シャンパングラスのことだろう。

 リエネッタ嬢の似顔絵をあしらった、この世で一〇個しかないソーサー型シャンパングラスだ。


「喜んでいただけたようで、何よりです。閣下」

「今日は楽しんでいってくれたまえ」


 公爵はうんうんと頷き、そう促してくれた。


「ロッククラン伯爵家家臣、ベルザード准男爵家のリリスと申します。公爵様」

「よくきてくれたね」

「ロッククラン伯爵家家臣、イシュラン騎士爵家のパメラと申します。公爵様」

「今日は楽しんでいってくれたまえ」


 リリス嬢とパメラ嬢は俺と一緒に、挨拶をする。

 うちの家臣の子供だから、こういった対応ができるんだね。

 そうじゃないとかなり後の順番だし、二人の親はきてないからさ。


 リエネッタ嬢への挨拶は、軽く礼をしその手の甲にチュッとする。

 今日は薄い黄色のドレスに、肘まであるレースの手袋をしている。

 よく似合っていて、可愛いね。


「リエネッタ嬢。誕生日、おめでとうございます」

「よ、よくきてくれたわ!」


 リエネッタ嬢は安泰のツンデレ口調だ。

 癖になってしまうよ。フフフ。


「今日のドレスはよく似合っておいでです。リエネッタ嬢はセンスがいいですね」

「そそそ、そうかしら! こ、今度、お茶会に誘うわ! だからいらっしゃい!」

「はい。喜んで参加させていただきます」

「リリスさんとパメラさんもきていいわよ!」

「「はい。ありがとうございます。リエネッタ様」」


 挨拶の後は、自分の時では食べられなかった料理を食べてる。

 祖父ゴーラスは他の大人たちと話をしているから、俺はリリス嬢とパメラ嬢と料理をいただく。


「美味しいです」

「はい。とても美味しいです」


 リリス嬢とパメラ嬢は胡椒が利いた肉が気に入ったようだ。

 でも、この肉は少し硬い。火を通し過ぎたようだ。

 それに、胡椒を使っているというだけで、あまり美味しくない。


 胡椒は砂糖と同じように高価なものだから、こういったところで財力を誇示しているのだろう。

 こっちのお菓子は砂糖漬けかと言いたくなるようなものだ。

 やっぱりこの世界のお菓子は俺の口には合わない。




 クラリス嬢と合流した。

 子爵家の挨拶は中ぐらいの順番だ。

 彼女は艶やかな黒髪に映えるシルバーのティアラをつけており、薄い緑色のドレスも黒髪によく似合い、共にクラリス嬢の可愛らしさを引き立てていた。


「何か食べる?」

「少しいただきます」


 彼女は恥ずかしがりやさんだけど、今回で会うのは三回目だから少しは慣れてくれたみたい。

 それにリリス嬢とパメラ嬢もいるから、俺と二人っきりじゃないのもいいのだろう。

 そんな彼女に、肉と魚料理を少しずつ皿に盛って渡す。


「公爵家の料理だけあり、胡椒がよく利いてます」


 財力の見せ所だからね。


 美少女三人に囲まれてお喋りをしていると、少年たちが近づいてきた。


「僕はエルスタッグ子爵家の嫡子ローイ。よろしくね」

「僕はガルドン男爵家のトテナスです。よろしくお願いします」


 こういった場は友好関係を広げる目的もある。

 彼らはそういった意味で正しい行動をしていた。


「ロッククラン伯爵家のフェリクスです。よろしくね」

「ベルテス子爵家のクラリスと申します」


 クラリス嬢の声は周囲の喧騒によってかき消されそうなくらい小さい。

 どうやら初めて会話する子らのようだ。


「ロッククラン伯爵家家臣、ベルザード准男爵家のリリスといいます」

「ロッククラン伯爵家家臣、イシュラン騎士爵家のパメラと申します」


 ローイは赤毛で細身の長身で、トテナスは茶髪で小柄の子だ。

 凸凹コンビと言いそうになったが、この年齢の子供はこれからどんどん伸びるから、トテナスが俺より大きくなる可能性は十分にある。

 彼らは共に西部に領地を持つ貴族の子で、領地が隣同士ということで幼馴染らしい。


「正直言うけど、ロッククラン伯爵はライジングバーン侯爵家のことをどう考えているのかな?」

「僕たちの親が、そこのことを聞いてこいってうるさいんだ」


 ぶっちゃけたな、二人とも。


「本当にうるさいんだ、何か伯爵から聞いてないかな?」


 西部は今面倒なことになっている。

 ライジングバーン侯爵家のお家騒動だ。


 現在、正室・嫡男派が側室・三男派を追い詰めていたのだが、そこに中央貴族の横槍が入った。

 アイリッシュに根回しをしてもらっていたが、さすがに娘と孫(側室と三男)の危機となっては、ランブ伯爵も黙っていられなかったようだ。


 それで一時期は側室・三男派が勢力を盛り返したが、そうなると黙っていないのが東部の有力貴族であり正室の出身家であるエジンバード侯爵家だ。


 エジンバード侯爵家は正室・嫡男派を援助するために、有名な傭兵団まで雇って送り込んだそうだ。

 そこでまた側室・三男派が窮地に陥っている。

 風前の灯くらい厳しい状況らしい。


 このままいけば、正室・嫡男派が勝つだろうと思われている。

 そこでこの二人の親はうちが介入するのかしないのかを知りたいのだろう。


 ライジングバーン侯爵家は祖母エリザベスの出身家なので、ロッククラン伯爵家にとっても他人事ではない。

 しかも炎の賢者と言われる父バニアスの影響力は非常に大きいから、下手に何かを言うと状況が大きく変わる可能性があるのだ。


 祖母エリザベスの出身家だから、穏便に決着すればいいと思っていたけど、すでに正室の二番目の子供(次男)が殺されているから簡単じゃない。


「悪いね。父はライジングバーン侯爵家のことは何も言わないんだ」


 本当に父バニアスは何も言わない。

 頑なに何も言わないので、介入や口出しはしないと俺は考えている。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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