第29話 帝都へ
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第29話 帝都へ
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シロガネと空の散歩中に寄った山から、眼下の景色を眺める。
「いい景色だ。上空からみるのも乙なものだが、こういう場所から見るのもいいな」
「本当によい景色ですな」
お供のイケメン副団長が横で景色を見ている。
ただ、立って景色を見ているだけなのに、なぜか絵になる。
思わずイケメン滅ぶべしと呪詛の言葉を吐きそうになったが、それを堪えてよい景色を見て心を落ちつかせる。
イケメン副団長といると、精神修業にもなる。
そんな時だった、木々が一部剥げた山肌が見えた場所が目についた。
その山肌に白い場所を発見したのだ。
気になった俺は、その場所へと向かった。
「これは……」
かなり細かな土で、白い。
これで焼き物でもできないだろうかと、空間収納に入るだけ入れた。
空間収納は異空間にものを収納できる魔法だ。
生き物でもアイテムでもなんでもかんでも収納できるが、容量に限度がある。
今の俺では二畳間くらいの空間がせいぜいだ。
「フェリクス様。それはなんですか?」
「この白い土で何かできないかなと思っただけだ」
持ち帰って磁器のような白い焼き物ができないだろうか。
今すぐどうこうではなく、将来的に名産ができたらいいな、という程度の考えだ。
帝都に向かう日になった。
「数日で戻ってくる。大人しくしていてくれな」
「ガル……」
シロガネが寂しそうにしていたが、頭のいい子なので分かってくれた。
「フェリクス様。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします」
ベルザード准男爵家のリリス嬢とイシュラン騎士爵家のパメラ嬢も一緒に帝都へ向かい、リエネッタ嬢の七歳の祝賀パーティーに参加することになっている。
時空属性の才能持ちは数が少ない。
小さな貴族家にそういった家臣はいないことが多いから、こうやって一緒に移動することは結構あるそうだ。
それに両家はうちの家臣だからね。
「二人とも久しぶりだね。近くに住んでいるのだから、訪ねてきてくれてもいいんだよ」
二人は領都フランチェスコに住んでいる。
隣のベルテス子爵領に住むクラリス嬢や、これからいく帝都に住むリエネッタ嬢とは違って気軽に会える距離だ。
「「はい。ありがとうございます」」
見送りに出てきたアイリッシュたち家族にしばしの別れを告げる。
「フェリクスがお爺様に会うのは三歳の時以来よね。よろしく言っておいてね」
祖父母は帝都の屋敷で悠々自適な隠居生活を送っている。
ということはなく、帝都で対外折衝などをしている。
貴族は簡単に楽隠居できないのだ。
「病気には気をつけるのよ。無茶をしてはダメよ」
「たった数日ですよ、お母様」
「あ~、フェリクスと幾日も会えないなて、ママは寂しいわ~」
抱きつかれて、胸に顔が埋まる。
これは役得なのだが、リリス嬢とパメラ嬢が見ているから止めてほしい。
二人ともなんで胸を撫でてるの?
ああ、アイリッシュの大きな胸が気になるんだね。
七歳児なんだから、これからだよ。うん、将来に期待だね。
「ジョルジュ。いってくるぞ。お母様たちを頼むな」
「はい!」
お利巧な子だ。
頭をなでなで。
他の弟妹の頭もなでなで。
うん、子供は可愛いね。
俺は自分用の馬車に乗り込み、シャインとメインも同乗する。
小姓のヴァストとアル・エド兄弟は別の馬車に乗る。
また、リリス嬢とパメラ嬢は家格が高いリリス嬢の家の馬車に乗った。
屋敷を出て少し進むと、馬車が停まった。
領都フランチェスコにはいくつかの検問がある。そこで簡単なチェックが行われ、進む。
貴族用の馬車三台と、荷車が二台、そしてうちの騎馬騎士が二〇人、それからリリスとパメラの家からそれぞれ二人ずつ騎馬騎士の一行だ。
町中を進み、転移予定地へと進んだ。そこはロッククラン騎士団の駐屯地がある場所だ。
五〇人ほどの騎士団員が敬礼してこの一団を受け入れ、そして見送ってくれる。
「フェリクス様。転移いたしますが、よろしいでしょうか」
護衛隊長のトットナムに、俺は頷く。
「ああ、頼む」
転移するために、できるだけ近くに寄る。
転移は一定の範囲しかできないため、あまり多くの人や物を送れない。
「転移、よーい!」
「転移、よーい!」
騎士たちが慌ただしく動き、馬などが暴れないように落ちつかせる。
「転移するぞーっ」
転移中に範囲から出ようとすると、体が真っ二つということになりかねない。
一番緊張する場面だ。
馬も転移に慣れさせており、大人しくしている。
転移はルトス准男爵が行ってくれる。三三歳だと聞くが、藍色に白髪がかなり混じっている。苦労しているのだろうか?
長い詠唱の末、転移は発動した。
馬車の小窓から見ていたが、淡い光に包まれたと思ったら景色が切り替わった。
ここはロッククラン伯爵家が帝都に向かって転移をする際の中継地になっている場所だ。
転移は多くの魔力を食うらしく、帝都まで一気に飛ぶのが難しい。
ここで一時間ほど休むことになる。
その間にリリス嬢とパメラ嬢と軽くお茶をする。
「リリス嬢は最近何をしていましたか?」
「わたくしは乗馬の練習を始めました」
貴族の女性は馬に乗ることも嗜みの一つだ。
乗れなくてもいいが、嗜む女性は多いらしい。
「乗馬ですか。凄いですね。俺は馬が苦手で触れないのですよ」
「え、そうなのですか?」
「はい。この目を失った原因が落馬だったせいか、どうしても馬に苦手意識があるみたいなんですよ」
眼帯の上から左目を指差す。
馬に罪はない。と思うが、どうしてもダメなんだ。
牛や豚、従魔なら問題はないが、どうしても馬はダメなのだ。
「ですから馬に乗れる人は凄いと思います」
「ただ嗜む程度です。それほどのものではないです」
「いえいえ。それだけでも俺にはできないので」
リリス嬢が頬を朱に染める。
褒め殺しした自覚はあるが、馬に触れるだけでもすごいと本当に思っているのだ。
次はパメラ嬢にも聞く。
「私はクロコスをしてました」
彼女は以前もクロコスが好きだと言っていたが、どうやらクロコス漬けの生活を送っているようだ。
「私は女流棋士を目指していますので」
「おお、そうなんですね! 俺はクロコスは得意ではないから、尊敬します」
「そ、尊敬だなんて……」
将棋でも碁でもクロコスでも、数手とか十数手先を読んで打つなんて俺にはできない。
だからそういうことができるパメラ嬢を尊敬するのは当然のことだ。
一時間なんてあっという間だ。
慌ただしく二回目の転移の準備が進み、そして転移。
俺は帝都郊外へと至った。
帝都はうちの領都フランチェスコとは趣が違った都市で、パリのような感じの四階や五階建ての建物が大通りの両サイドに建っている。
それだけ人口が多いということだろう。
凱旋門はどこ? エッフェル塔は? などと莫迦なことを考えてしまう。
大通りは色々な店や宿が立ち並び、二階より上が住居になっていることが多いようだ。
そんな大通りを進むと石塀があり、そこで身元のチェックが行われた。
ここから先が貴族街になる。
貴族街に入ると、雰囲気がガラッと変わった。
密集していた建物はゆったりとなり、当然なのだが門から玄関までが遠くなった。
ロッククラン伯爵家の屋敷の前に到着する。
まだ結構離れているのに、ここからは帝城がよく見える。
大きな城だ。
王都にいる間は、リリス嬢もパメラ嬢もうちの屋敷に逗留することになっている。
玄関前のロータリーで馬車を降りて、屋敷を見上げる。
領都フランチェスコの屋敷にも負けないくらい大きい。
「フェリクス!」
玄関に入ると、祖父が出迎えてくれた。
フェリクスの断片的な記憶に、祖父のものはない。
幼い時に会っただけで、覚えていないようだ。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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