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フェリクス ~この男、取り扱い注意にて~  作者: 大野半兵衛


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第28話 全身タイツ結界

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 第28話 全身タイツ結界

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 魔眼のモノクロのオン・オフを試行錯誤しながら、過ごすこと一〇日。

 やっとオン・オフができるようになるが、一〇日のうちにモノクロ・アンド・カラフルの世界にも慣れてしまった。

 この体はそういう面では、本当に適応力が高いと思う。


「よーっし、体を動かすぞ!」


 視界があの状態だったから、さすがに体を動かす稽古ができなかった。

 腕立て伏せと腹筋と懸垂くらいしかしてない。

 おかげで体が鈍ってしまったよ。

 張り切って身体強化全力ランニングをしたが、やっぱり体の動きが悪い。

 剣を手にしても、槍を手にしてもどうも調子が出ない。

 一〇日も動かさなかったから、相当勘が鈍っているようだ。


「はぁぁぁっ!」

「やっ!」

「たぁっ!」

「はっ!」


 やっぱり満足できない。


「よし、基本に立ち返ろう!」


 太い木の棒に縄をくくりつけ、背負い投げの要領で投げる。

 ガシッと肩にめり込む縄の懐かしい感覚だ。

 これは昔(前世で)よくやった打ち込み稽古になる。


「ふんっ」

「ふんっ」


 この稽古、しっくりくる。

 やっぱり柔道は俺の魂に刻まれた武術だ。

 そういえば、こっちにきて柔道の稽古はやってなかったな。

 剣や槍よりも、俺は柔道のほうが性に合っている。


 よし決めた! 俺は柔道王になる!

 今度こそあの三人を超える柔道家になってやる。


「ふっ」

「はっ」

「せいっ」


 うおおおおおっ。


 久しぶりに打ち込んだから、肩の皮が剥けてしまった。

 まあいい、こういう時のために聖魔法のヒーリングが役に立つのだ。


「ヒーリング」


 肩の痛みが取れた。

 これからは朝から晩までと言いたいが、午前中はバニアスの政務の手伝いがある。


「フェリクス様。今のはなんですか?」

「今の?」

「縄を引っ張るやつです」

「打ち込みのことだな。うーん、なんて言えばいいかな……古武術といったとこか」

「古武術……ですか?」


 ヴァストが首を傾げる。聞いたことないから、理解が追いつかないか。


「「武器は使わないのですか?」」


 アル・エド兄弟は上手いことシンクロするなー。


「己の肉体が武器なのさ」


 肉体を鍛え抜き、武器と化す。

 この世界でそれが正解か分からないけど、やってみたい。


 鈍った体を鍛え直していると、シロガネが巨大になって俺の部屋に入らなくなった。

 獣舎の建設が間に合ったのは幸いか。


 シロガネ用獣舎は、倉庫のような大きさだ。

 てか、倉庫だなこれ。

 今は三メートルくらいだけど、シロガネは一〇メートルを超える大きさになると書物にあったから、これくらいの建物じゃないといけない。


 シロガネのエサはなんでもいい。

 以前は、おそらく俺の魔力を甘噛みして食べていたはずだ。肉などは特に口にすることはなかった。

 最近は甘噛みされることはなくなったが、その代わり肉や野菜など、人間が食べるものはなんでも食べるようになった。

 よく食べるから一回の食費が莫迦にならないらしい。


「シロガネ。散歩にいくぞ」

「ガウ」


 鳴き声まで野太くなってしまった。ただ愛らしい顔は今でも健在だけどね。

 カ●リューは愛嬌のある顔が特徴だからな!


 イケメン副団長がイビネスに乗って獣舎の前で待っている。


「副団長、いくぞ」

「はっ」


 シロガネは大きくなって、背中に乗ることができるようになった。

 発展途上のシロガネに鞍はつけず、縄とハーネスで俺の体を固定する。

 縄ならサイズ調整も簡単だし、そもそも俺は自力で飛べる。

 あれ、もしかして俺に従魔は不要?


「ガル……」

「そ、そんなに悲しそうな目をするな。お前は俺の大事な相棒だ」

「ガル!」


 悲しそうな目をしていたのに、目がキラキラしている。

 現金なものだ。


「よし、出発だ!」

「ガル!」


 ドンッ。

 戦闘機以上の加速。

 体にもの凄いGがかかる。

 歯をくいしばって、耐える。

 手に縄がめり込む。


 一気に上空一〇〇〇メートルくらいまで上昇し、そこでホバリング。

 イケメン副団長とイビネスを待つ。

 眼下には、賑わう領都フランチェスコがある。

 計画的に造られたのが分かる、整然とした町並みだ。


「お待たせしました」

「仕方がない。シロガネの加速は尋常じゃないからな」

「グリフォンの速度で追いつけないのですから、本当にシャレにならないですよ」


 顔は笑っているが、目が笑っていない。

 悔しいんだろ、悔しいと言っていいんだぞ、ハハハ!


「何か?」

「いや、なんでも~♪」


 優越感。

 日頃ボコボコにされているから、これくらいは許されるだろう。フフフ。


 シロガネが本気を出すと、それこそマッハを軽く超える。

 マッハに至る際の音の壁を超える時の衝撃は、身体強化してないとさすがにヤバい。

 身体強化をしていても体がバラバラに千切れるかと思ったほどだ。

 もっとも、マッハという速度に耐えられる身体強化も半端ないと思う。


 マッハ一くらいならなんとかなるから、シロガネにはほどほどでと頼んでいる。


 ということで、イビネスの速度に合わせて飛んでもらっている。

 イビネスは必死で存在感を出そうとしているのか、最高速で飛んでいる。

 おそらく時速五〇〇キロメールは出ているだろう。

 これでも風圧が凄いのだが、副団長は風の魔法で緩和しているらしい。


 そういえば、時空魔法で結界を張れないだろうか。自分を囲むように気合で制御して……もう少し体に密着するように……もっと密着……そうそう、こんな感じ。

 時空結界全身タイツ化完了!

 名づけて全身タイツ結界。

 ……言っていて恥ずかしい。


 これって防御にも使えるよな?

 もしかして、便利な魔法を作ってしまった?

 フフフ、俺って天才!


「副団長。試したいことがあるから、ここで待っていてくれ。すぐに戻る」

「承知いたしました」


 イケメン副団長がイビネスにホバリングの指示を出す。


 シロガネに加速を指示した。

 ドンッ。一気に音速を超えた。

 全身タイツ結界はいい感じだ。

 衝撃による体へのダメージも思ったほどはない。


「いいと言うまで徐々に加速してくれ」

「ガル~♪」


 飛べることが楽しいようで、シロガネはノリノリだ。


 ゴゴゴゴッと風切り音がする。

 本来なら、その風は俺の体を傷つける刃のようなものだが、全身タイツ結界のおかげで耐えられる。


 マッハ二を超えて、さらに加速していく。

 マッハ三くらいまで加速していくと、全身タイツ結界にヒビが入った。そこで速度を落としてもらう。


「マッハ三に耐えられただけでも十分な結果だ。戻るぞ」

「ガル~」


 戻る時もマッハ三で飛んでもらった。

 全身タイツ結界にヒビが入ると、それを気合で修復して、またヒビが入って修復した。

 これは時空魔法の訓練に丁度いいな!



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
マッハを越える速度で空気中の水分が多い時に飛ぶと『ベイパーコーン』または『ショックエッグ』とよばれる現象が起こる……って、ミリオタな先輩が言ってました。 白いスカートを履いたようなベイパーコーンが発…
マッハ3を超えると熱の壁が存在する
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