第25話 シロガネ
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第25話 シロガネ
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ヤッホーッ!
いつものようにワイバーンの卵を磨いていると、ヒビが入った。
しばらく見ていると殻を割って鼻先が出た。
「がんばれ! もう少しだ!」
ワイバーンが殻を完全に割って出てくるのを応援して待つ。
「キュルッ」
でた!
這いずるように卵から這い出てきて、周囲を窺い、俺に目が釘づけになる。
「キュルキュル」
ブルブル震えながら後ろ足で立ち上がり、よたよたと心もとない足取りで俺の元に辿りつく。
「キュッキュー」
かわゆいの~。
大きさは三〇センチメートルくらい。
レック●ザのような長細い体ではなく、カイリュ●のような丸みを帯びた愛嬌のある容姿だ。
俺の中では、ワイバーンはプテラノドンのような容姿かと思っていたが、意外に可愛くて嬉しくなる。
「そ、それは……ワイバーンじゃないですね」
「え?」
小姓のヴァストが失礼なことを言う。
ちょっとムッとし、どういうことかと問いただした。
「ワイバーンというのは、もっと翼が大きく細身です。それに鳥のような鋭い嘴があるはずです」
それは俺が持っていたイメージと同じだ。
しかし、俺の膝の上に乗って俺の指を甘噛みしているワーバーンは、その特徴に合っていない。
「だが、お父様がワイバーンと言っていたぞ」
そこのところはどうなのだ? バニアスが俺に嘘をついたというのか?
「どういう理由か分かりませんが、これはワイバーンというよりもドラゴンです」
「ど、ドラゴン……格好いいじゃないか!」
ワイバーンはドラゴンの劣化種と言われている。だから、ドラゴンのほうが格上という認識で間違いない。
よく分からないから、バニアスに聞くことにした。
バニアスはすぐに会ってくれ、ドラゴン(仮)を見て目を点にした。
「なぜドラゴンの子供を持っているんだ?」
「それは俺が聞きたいです。ワイバーンの卵からこの子が生まれました。どういうことでしょうか?」
「あの卵から生まれただと?」
バニアスは唖然とした。
その反応から察するに、ワイバーンと言っておきながら実はドラゴンだったというサプライズではなさそうだ。
「テイマーギルドの担当者は、間違いなくワイバーンだと言っていたぞ?」
「結果が全てです。その責任者が間違えたようですね」
「うむ。ワイバーンがドラゴンだったのは悪いことではないが、違う種が生まれた以上は苦情を言わねばならぬな」
伯爵を騙したことになるから、ケジメとして苦情くらいは言っておかないといけないだろう。
しかし先程からドラゴンは俺の指を甘噛みしまくっている。
そんなに俺の指は美味いのだろうか。
マイパパから苦情を言われたテイマーギルドから、担当者が飛んできた。
元々従魔はテイマーギルドに登録しないといけないので呼び出されるのは変わりないが、登録とクレーム対応では意味合いが違うからね。
「な、なぜ……」
シロガネを見て、担当者が絶句している。
シロガネというのは、俺のドラゴンの名前だ。最初は灰色だったけど、少しすると銀色になったからシロガネとしたのだ。
「あの卵はワイバーンの巣から採取したもので、間違いなくワイバーンの卵です。私もその現場に同行しましたので、違うことはありえません。なのに、なのに……」
テイマーギルドでもあの卵はワイバーンという認識だったと担当者は弁解した。
必死な言いわけだ。
そんな彼を見るに、嘘を言っているとは思えない。
つまりワイバーンの巣に、ドラゴンの卵があったということになる。
「しかし結果が全て。違った卵をお渡ししたのは私の瑕疵にございます。今度こそワイバーンの卵をご用意したします!」
「そうは言ってもな。そのドラゴンの子はすでにフェリクスを親だと思い込んでいる。返品など出来ぬぞ」
「もちろんにございます。そのドラゴンはそのままフェリクス様の従魔として登録させていただきます。その上で、ワイバーンの卵をご用意いたします」
随分とこちらに有利な条件だけど、契約書も取り交わしてワイバーンの卵を購入するということになっているから、違った卵を渡したままではテイマーギルドの沽券にかかわるらしい。
損をしてもちゃんとワイバーンの卵をというのが、テイマーギルドの考えなのだ。
そういう考えは好感が持てる。
ここでワイバーン以上のドラゴンなのだからいいじゃんと言うようなら、バニアスも大事にしたことだろう。
とはいえ、ワイバーンの卵は簡単に手に入るものではない。
少し時間がかかるらしい。
バニアスはそれを了承し、ワイバーンの卵を手に入れたらジョルジュの従魔にするつもりのようだ。
俺のお下がりではないが、劣化版で申しわけがない気持ちが湧いてくる。
でも、一般的にはワイバーンは従魔として最上の部類になる。
ちなみにドラゴンは従魔にしようとしてできるものではない。
そもそもドラゴンの巣から卵を持ちだしたら、地獄の果てまで追いかけてくるらしい。
そんなことになったら、都市の一つや二つは簡単に滅ぶ。
怖すぎだろ、それ。
では、俺の卵はなんだったのか?
まさかカッコウのような托卵なのか?
もしそうなら、テイマーギルドも災難だな。
でも、ワイバーンの卵とドラゴンの卵を見間違えるほうが悪いのか?
プロなら、そういったものを見極める目を持たないとな。
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