第23話 レントゲン
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第23話 レントゲン
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父バニアスが帰ってきた。
バニアスにも軍にも被害はない。
「戻ったぞ」
「おかえりなさい、お父様」
「「「おかえりなさいませ」」」
俺が代表してバニアスに挨拶をすると、皆が声を揃えて合唱した。
「先ずはお着替えを」
アイリッシュに促され、バニアスは自室へ向かった。
もちろん三人の妻もついていく。
甲斐甲斐しく着替えの手伝いをするのだろう。うん、きっとそうだ。
午後一くらいに帰ってきたバニアスだけど、彼がいなかった間の報告をするために呼ばれたのは夕方近くだった。
執務室にはお肌が艶々のアイリッシュがいた。
バニアスは妻たちと親睦を深めていたようだ。
このリア充め、爆発すればいいんだ!
「ワイングラスは予定通り出荷をしております。こちらは一切の遅延はございません」
ローランドや文官たちの報告があって、それからライジングバーン侯爵家の話になった。
「正妻派がかなり有利のようです」
予想通り正妻エルメラルダと嫡男オリバルトの勢力が優勢になっている。
ジョコバン子爵はかなり窮地に立たされているらしい。
「ジョコバン子爵、ビニエラ様、オーベン様はアーソン城に入ったようです」
ジョコバン子爵がどうなろうとどうでもいいのだが、かなり死者が出ているらしい。
戦いが断続的に起こり、ジョコバン子爵は側室ビニエラと三男オーベンを連れてアーソン城に入って籠城の構えを見せている。
「籠城か。ジョコバン子爵派に協力する勢力はあるのか?」
「周辺貴族は様子をみておりますし、中央はアイリッシュ様の働きかけによって動きはありません」
「ほう、アイリッシュがか」
「ウフフフ。フェリクスが中央に動かれると厄介だから、押えられるなら押さえてほしいって言うものですから、わたくし張り切って手紙をかきましたわ」
ありがとうね、マイママ。
「中央の介入は防がなければならぬ。フェリクス、よくやった」
えへへへ。褒められちった。
「そうなると、ジョコバン子爵に援軍を出すところはないか」
「今のところ、そういった動きはありません」
籠城というものは、短期間で敵が引くか援軍がやってくる見込みがある時にするものだ。
今のジョコバン子爵はそのどちらもないはず。
無駄にお家騒動を長引かせようと……待てよ……。
あるよ、あるじゃないか、援軍のあてが。
「お父様」
「なんだ?」
「もしですが、ジョコバン子爵が異民族と手を組んだらどうなりますか」
「異民族とだと……それをしたら、家督相続問題に勝ち残ったとしても、帝国貴族として認められないだろう。だからそれはないと思うが……」
「異民族が西部に攻め込み、たまたまジョコバン子爵が有利なように動くということはないでしょうか」
「ふむ……たまたまジョコバン子爵を助けるように、か……。ない、とは言えぬな。ローランド、異民族の動きは分かるか」
「先のバロガド山の噴火によって、ビッシュ渓谷の地形がかなり変わったようです。それ以降は情報も入っておりません。申しわけございません」
「であるなら、異民族たちも簡単には進入できないのではないか」
俺の思い過ごしであれば、それでいいのだ。
このままお家騒動が終息さえすれば、俺の取り越し苦労で終わっただけで済む。
唐突だが、光魔法でX線を再現できればと思ったが、X線を再現してもレントゲン写真の原理が分からない。
レントゲンが撮れれば、病気などを発見しやすいし、骨折などの状態も分かりやすい。
こんなことを考えたのは、生魔法のヒーリングについて考えたからだ。
俺のヒーリングは軽傷なら治せるが、骨折ともなるとかなり厳しい。がんばって気合を入れても骨折を治せないのだ。
そこで折れた骨を念力で繋いで、その後でヒーリングしたら治るのではないかと思ったのだ。
だけど、さすがに見えない折れた骨を繋げることは俺にできない。
そこでX線だったのだ。
X線に反応する物質を探せばいいと思うのだが、そんなものが簡単に見つかったら誰も苦労はしない。
ただ、X線は誰の目にも見えないけど、確実に相手を被爆させることができる。
誰かを徐々に被爆させて暗殺できてしまう恐ろしい武器になる。
もっともそれを生魔法で回復させてしまうのが、この世界なんだけどね。
さて、X線がダメならどうやって体内を見ればいいのか?
体内を、見えないところを見る、手法はなんだ?
ダメだ、さっぱり思いつかん。
体内を見るのは、アイデアがないから保留。
俺はままならないな、とベランダに出て星を見上げた。
俺の知っている星座はない。
この世界が異世界だと、否応なしに思い知らされる夜空だ。
そこでふと思ったのだが、あの星々は数万、数億光年の旅をしてきて、俺たちに見えている。
そう、深淵とも言えるような暗闇の中を進んできたのだ。
そんなことを考えていたら、ふと閃いた。
「光を透過させてみるか」
X線を透過させて、その透過してきたX線の密度の差を闇属性を使って映像にできれば……。
自分の手にX線を当て、その反対側に闇を展開して透過したX線を受ける。
X線の密度や速度を少しずつ調整する。
すると闇のほうにぼんやりと立体的な絵が浮かび上がった。
もう少しだと、さらに調整する。
よしよし、もう少しだ。映像がくっきりしてくる。これなら使えるぞ!
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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