第22話 ブラックホール
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第22話 ブラックホール
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ライジングバーン侯爵家に送った使者が帰ってきた。
側室ビニエラと三男オーベンには会えなかったが、その名代としてジョコバン子爵に会ったそうだ。
このジョコバン子爵がオーベンを擁立して正室と嫡男オリバルトに反旗を翻した張本人である。
「で、ジョコバン子爵は証拠を見せたか?」
使者はうちの文官のブライ准男爵。
焦げ茶色の髪で不健康そうな白い肌をした細身の四〇男だ。
こんな不健康そうなオッサンでも、外交官としてはかなり優秀らしい。
「いえ、言いわけを並べるだけで、あれは証拠を持ってないと存じます。のらりくらりと躱していればいいと、楽観視しているようです」
ブライは俺が聞きたかった証拠のことを、ないだろうと報告した。
相当自信があるのだろうが、普通はこのように名言しないものだ。
これで優秀と聞いてなければかなり怪しいと思ったが、ローランドが信頼しているというので俺も信じることにした。
どの道、騙されていても、分からないからさ。
「さて、困ったな……」
証拠がない。言いがかりで嫡男オリバルトの侯爵家継承を邪魔した以上、ジョコバン子爵と側室ビニエラ、そして担ぎ挙げられたオーベンは死罪でも文句は言えない。
「他の家臣たちはどうしていたのだ?」
「某の私見ではありますが、着々と包囲網を築いていると思われます」
「そうか……」
ジョコバン子爵はいいが、問題はビニエラとオーベンだ。
この二人が死罪になると、ランブ伯爵が黙ってないだろう。
だが、次男ライドが死んでいることから、正妻エルメラルダと嫡男オリバルトは許さないだろう。
あー、面倒くさいな、まったく!
「お母様。根回しをしたいのですが、お願いできますか」
「根回し? 何をすればいいのですか?」
「今回のことは、明らかにジョコバン子爵の野心ゆえのものでしょう。ビニエラ殿やオーベン殿は担がれただけでしょうが、それによってライド殿が亡くなりました。エルメラルダ殿とオリバルト殿はこの三人を決して許さないでしょう。ビニエラ殿とオーベン殿の処遇について、手心が加えられることはないと思われます。今のうちに中央に楔を打っておく必要があります」
俺だってジョルジュを殺されたら、許せないと思う。
ジョコバン子爵という小物がどうなろうと、構わない。
野心を持って行動した以上、その責任を負うのは当然だ。
それに、大儀のない反乱は長続きしない。
侯爵家の他の家臣が、それを許さないだろう。
お家騒動はそう長く続かないと俺は思う。
お家騒動が終息した際に、ビニエラとオーベンが死罪となっても、ランブ伯爵に介入をさせないことが今は一番大事だ。
ライジングバーン侯爵家の者では、中央の根回しをする余裕はないだろう。
それに根回しできる伝手がないかもしれない。
その点、アイリッシュは皇女だから中央の人脈には事欠かないはずだ。
ビンライド王国軍との戦争についても続報が届いている。
局地的な衝突はあったが、大きな戦いはなくビンライド王国軍は引いていったそうだ。
帝国軍としてはしばらく様子を見て、軍を解散するらしい。
うちは小競り合いにもならなかったようで、被害はまったくないらしい。
酷いことにならずに済んでよかった。
魔法の訓練で、右手の人差し指の先から青い炎を出し、左手の手の平の上に漆黒の闇の球体(闇属性+邪属性+死属性)の力場を展開。
蠢く闇の球体に青い炎を近づけていく……。
青い炎が蠢く闇の球体に触れた瞬間、青い炎が吸収された。
「おおお」
青い炎でも、闇属性+邪属性+死属性のマイナスエネルギーには勝てなかったか。
全てを吸い込む闇、全ての運動エネルギーを崩壊させる呪詛、そして全てを誘う死の誘惑を合体させたこの蠢く闇の球体は、今のところ俺の魔法の中では最強を誇る。
闇属性はその字が示すように闇を司る属性だが、幻など人を惑わせることもできる属性だ。
そしてマイナスエネルギー(邪属性と死属性)を増幅させる効果がある。
そんな闇属性で死属性と死属性の効果を増幅させると、青い炎でさえも消し去る魔法ができてしまった。
闇属性も死属性もヤバいが、一番ヤバいのは邪属性だと俺は思っている。
邪属性は所謂呪いだ。
呪いの対象は人だけじゃない。現象に対しても有効だ。
だから青い炎でさえも、呪われて力を失う。そこに死属性によって完全に機能を停止する。
俺の暗黒系属性(闇属性+邪属性+死属性)に対し、青い炎(火属性+風属性+熱属性)が負ける。
共に三属性の魔法だが、同一系統の魔法の混合魔法のほうが強力なのかな?
蠢く闇の球体に重力属性を加えたら、ブラックホールにならないかな~。
なんて思って気軽にやってしまった俺がいる……。
「うおーーーっ!?」
ゴゴゴゴゴゴゴッ。
吸い込まれる~。
「「キャアアアアアアアッ」」
悲鳴が聞こえ、振り返るとシャインとメインも引き寄せられるエネルギーにあがなっている。
ふむ、シャインは黒か。大人っぽいな。
メインは安定の白! うんうん、いいものを見せてもらった。
「はぁはぁ、死ぬかと思った」
魔法を解除して事なきを得たけど、マジでヤバかった。
「ブラックホールは諸刃の剣どころの話じゃないな。封印しておこう」
「それがいいですね」
振り返ると、そこに般若がいた。
「しゃ、シャイン……」
「この部屋の中を見て、何か仰ることはありますか?」
部屋の中の家具や調度品は、ブラックホールに吸い込まれたり、その力を受けて壊れたりと酷い状態だ。
シャインとメインの髪形もパンクになっている。
メインの団子はどこへいった?
その後、二時間くらい説教されて、さらにアイリッシュにチクられた。
おかげでアイリッシュからは天才ね! と揉みくちゃにされた。
おっぱいが気持ちよかったからいいけど。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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