第21話 お家騒動
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第21話 お家騒動
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ルーンサクテット帝国の西部に領地を持つライジングバーン侯爵家は、西側の異民族を防ぐ防衛の主軸を担う家だ。
そのライジングバーン侯爵家でお家騒動が起こってしまった。
現ライジングバーン侯爵には七人の妻がいる。
正妻は東部の有力貴族家出身で家柄がいいだけでなく、男子を三人も生んでいる。
普通であれば、正妻の子供が家を継ぐのがルーンサクテット帝国の仕来りだ。
しかし、側室が自分の子供に家を継がせたいと思うのも心情的には分からないではない。
が、それをすると反感が大きいのが現状である。
ライジングバーン侯爵はバロガド山の噴火を受けて、領内の視察に出た。
バロガド山から離れている領地だが、同じ西部地域ということもあって、まったく影響がないわけではない。
噴煙は超高空に達し、太陽光を遮って気温を下げ、火山灰は大地に降り注ぎ、作物を覆い尽くした。
風向きが悪ければ、ライジングバーン侯爵領にも甚大な被害があることだろう。
ただ、今回はそういった被害は少なく済みそうで、胸をなでおろした。
そして屋敷へと帰ろうとしたライジングバーン侯爵は何者かに暗殺された。
それは毒だった。
立ち寄った村で井戸水を飲んだ侯爵は、すぐには体調を崩さなかった。
しかし村を出てしばらくすると、護衛たちが倒れ、侯爵も倒れてしまったのだ。
同行していた聖魔法使いも早々に毒に侵され、とても魔法を使える状態ではなかったのである。
おかげで護衛を含めた死者は七〇人以上になってしまった。
生き残りはたった三人だったそうだ。
ライジングバーン侯爵が死んだと報告を受けた正室が、嫡男を速やかに当主の座に就けようとした。
しかしそこで侯爵を殺したのは正妻であり、嫡男もそれに加担しているという噂が流れた。
正妻も嫡男も関与を否定した。
多くの家臣も正妻と嫡男が侯爵を殺す動機がないと考えた。
だが、かなり大きな力を持つ家臣が異を唱えた。
そこから側室の生んだ三男が、嫡男の対抗馬として名前が急浮上したのだ。
そしてそれは侯爵家の内部武力抗争、つまりお家騒動に発展していくのだった。
「何をしているのか……」
ライジングバーン侯爵家はロッククラン伯爵領と強い繋がりがある。
俺の祖母―――帝都で暮らす前ロッククラン伯爵夫人がライジングバーン侯爵家の出身で、父バニアスは毒殺された侯爵と従兄弟という間柄になるのだ。
つまりライジングバーン侯爵家は親ロッククラン伯爵家ということになる。
そのライジングバーン侯爵家がお家騒動で力や求心力を失うのはよろしくないことだ。
「ローランド。侯爵は本当に毒殺されたのか、調べることはできるか」
「なかなか難しいことにございますが、手を尽くしてみましょう」
「頼む。あと、侯爵家が力を落とすのはよくない」
うちにとってよくないだけではない。
これは異民族に対する戦略的な問題になるのだ。
先にも触れたが、ライジングバーン侯爵家は異民族に対する主軸なのだ。
その侯爵家が異民族と戦える状態でなくなるのは国防の観点からもよろしくない。
「なんとか騒動を治めることはできないか?」
「これまた難題にございます。報告によれば、すでに死者まで出ているとか。しかも死者の中には、次男ライド様も含まれております。正妻エルメラルダ様は決して引くことはないでしょう」
武力衝突が何度か起こり、その際に次男ライドが死んだ。
正妻エルメラルダと嫡男オリバルトの怒りはかなりのものだと聞いている。
おかげで側室とその息子の四男オーベンの首に懸賞金までかけたとか。
まさに泥沼だ。
「中央(皇帝)に仲裁を頼むわけにはいかないしな……」
側室のビニエラは中央貴族のランブ伯爵家の出身で、ランブ伯爵は皇帝の側近の一人だ。
皇帝が下手にランブ伯爵の肩を持ったら、それこそ国を分けた内乱になりかねない。
皇帝《お爺ちゃん》よ、決してそんなことをしないでくれ。
「そもそも毒殺が本当に正妻によるものか、その証拠があって側室のビニエラは正妻に反旗を翻しているのだろうな」
「怪しいところですが、でっち上げることは可能かと」
「とりあえず、使者を出そう。その証拠を見せろとな」
「介入されるのですか?」
「そうじゃない。親族として、証拠があるのかないのか、ちゃんと確かめないといけないだろ」
「なるほど。では、使者を手配します」
「そうしてくれ」
このお家騒動が東部と中央に飛び火するのだけは避けたい。
亡くなった侯爵やライドには悪いが、こんなことで内戦を起こすわけにはいかないのだ。
って、七歳の俺に何をさせるんだよ、ローランドは。
しかし今は俺が当主代理としてこの家を仕切らなければいけない。
今回のようなかなり危険な話は、名目上でも最終的に俺が許可を与えないといけないことだ。
「フェリクスの判断をわたくしは支持するわ。自信を持ちなさい」
「お母様が判断されてもよいでしょうに……」
この話がもたらされた際、アイリッシュは俺が考えて対応をしろと言った。
使者を送って詰問するだけだから、判断とか対応というほどのものではないが、それでも冷や汗ものだ。
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