第19話 突然
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第19話 突然
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お茶会のお礼状が届いて、俺も四人に手紙を出した。
このまま文通が始まる予感がする。
もしかして俺はこのまま女の子たちと青春を謳歌してしまうのか?
ふむ、それもいいな。
ハハハ。この俺がそんなリア充なわけないよな。気のせいだ。
「「しかし暑いですね」」
アル・エドの声はいつもハモる。おかげで余計に暑く感じる。
「ロッククラン伯爵領の夏の暑さは厳しいですから、これから大変ですね」
この国の夏は俺からしたら耐えられる暑さだ。
あの茹だるような日本の暑さを経験している俺にとって、この国の三〇度にも達してないような夏日程度では堪えもしない。
若い頃は三五度以上の猛暑日であっても、冷房もない道場で地獄の窯に焼かれたような暑さの中で稽古をしていた。
あれに耐えた俺たち柔道マンは、こんな暑さではへこたれないのだ。
「だらしないぞ、アル・エド、ヴァスト。気合を入れろ、気合だ」
「「「は、はい」」」
よし、走ろう! 走れば暑さなんて忘れるさ。
「身体強化を最大で発動させて、走るぞ!」
うおーっ!
「「「待ってください!」」」
今日のおやつはアイスクリームか。
アイリッシュは速攻で熱属性と氷属性持ちのお菓子作り専属料理人を雇った。
家臣の奥さんばかりだから、情報秘匿食品を扱わせても安心だと言っていたよ。
「冷たくておいし~♪」
ジョルジュが幼い顔を破顔させている。
「食べ過ぎには注意だぞ。お腹を壊すからな」
パテシエを雇ってから、ジョルジュたちのお菓子への執着がすごいらしい。
「はい!」
最近は暑い日が続いたから、アイスクリームの需要が高い。
冷凍庫とかあればいいが、そんなものはないからその都度作る必要があるのだ。
そんな夏のある日、家庭教師のリッテン男爵夫人が言った。
「フェリクス様に、お教えできることはもうありません」
「え?」
「フェリクス様はわたくしの想像をはるかに超えて知識を吸収されました。わたくしでは、これ以上お教えできないのです」
「お、おう……」
どうやら俺は優秀な生徒だったようだ。
そんなわけで、リッテン男爵夫人は俺の家庭教師としてその役目を終えた。
ただし、俺はいいけど小姓たちは違う。
三人にはまだまだ教えることがあるということで、リッテン男爵夫人は三人の面倒を引き続き見ることになった。
三人は一〇歳になったら俺と共に帝都の学園に通うため、入学できるくらいの知識が必要になる。
そのための勉強を続けるという。
俺は自室でワイバーンの卵を磨きながら考えた。
せっかくできた時間を有意義に過ごそうと考えたが、どう有意義に過ごすのかと考えていた時、バニアスに呼ばれた。
「私は二日後に出征する」
「え……」
「ビンライドが兵を集めているという情報が入った」
ビンライド王国は帝国の南に隣接する国だが、長年争っている。
「もっとも我が国に攻めてくるか、それとも同じく国境を接するフレンジス国へ攻め込むかは、まだ分からぬがな」
ビンライド王国はビンライド半島の国で、国境を接しているのは帝国とフレンジス国しかない。
そのため、領土を拡大させようとすると、どうしてもこの二カ国を攻めるしかないのだ。
海を隔てた先にも国はあるけど、あまり海軍が強いという話は聞かないので、陸続きのところを攻めるのだろう。
ビンライド王国の国王は三代に渡って領土拡大の野心を持っていて、帝国に攻め込んでくることが多い。
逆に帝国はビンライド王国のような森林ばかりで統治しにくい土地にあまり興味を持っていない。
だから防衛戦が基本の方針になっている。
「私がいない間は、お前がこの屋敷の主だ。頼むぞ」
「はい。ご武運を祈っております」
「うむ」
まさかいきなり戦争モードになるとは思わなかった。
こういうことは唐突にやってくるのだなと、実感する。
父バニアスの執務室を出て廊下を歩いていると、戦争の準備で慌ただしくしている騎士団員たちが窓の外に見えた。
これまでの日常とは違う世界が広がっている。
訓練場の横には倉庫があり、今日はその訓練場が物資の集積場になっている。
騎士団員たちが倉庫から武器や防具を荷車に載せていく。
また、別の倉庫からは食料が運び込まれてくる。
今回の出征の動員兵数は一〇〇〇名。
歩兵隊が五〇〇、騎馬隊が一〇〇、従魔隊が一五〇、弓隊が一〇〇、魔法隊が一〇〇、輜重隊が五〇となっている。
従魔隊のうち一〇〇は地上戦力で、五〇が空を飛ぶ航空戦力になる。
兵科は色々あるけど、従魔隊を一五〇も確保している家はあまりない。
従魔は魔物なので基本的に人に懐かない。それに懐いても育てにくいし、ほとんどは肉食なので餌代が莫迦にならないのである。
部屋でもできる魔法の訓練を行う。
無属性の念力でお茶を飲んだり、文字を書いたり、絵を描いたりして精密な制御ができるようにする。
特に文字や絵を手で書く(描く)のはかなり精密な制御が必要で、いい訓練になっている。
そんなことをしていいると、小姓たちが勉強を終えて戻ってきた。
「「「何をしておいでなのですか?」」」
俺がワイバーンの卵を磨きつつ念力で絵を描いている光景を、三人がガン見してくる。
「何って、卵を磨いて絵を描いているのだが?」
「卵が宙に浮いていて、タオルが勝手に動いているのですが?」
「「筆も勝手に動いてますよね?」」
「念力で磨いているんだよ」
「「「………」」」
「俺が手で卵を磨いても、念力で磨いても、磨いていることに変わりはないだろ? 絵も同じさ」
「まあ、そうですが……」
なんでそんなに納得いかなそうな顔をしているんだよ?
俺は愛情を込めてワイバーンの卵を磨いているんだからな。
本で読んだところ、ワイバーンの卵は四カ月くらいで孵化するとのことで、秋の始めには孵化すると思われる。
今から楽しみだ。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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