第17話 お茶会
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第17話 お茶会
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お茶会の日がやってきた。
この日のために服を新調したけど、なぜか三着増えた。
俺、お小遣いもらったけど、未だに一回も使ってない。
お茶を購入した時はお茶会用なので、マイパパが出してくれた。
貴族として当然のイベントはパパの財布からというか、家の予算から出るらしい。
もちろん、ホットケーキなどのお菓子作りでも同じだ。
そう考えると、俺ってあまり外出してないな。
せっかく外出できるのに、勉強や訓練(魔法や武術)ばかりだし、時間が空いたらスィーツを作っているもんな。
ロッククラン伯爵家の庭園の中に、テーブルが設置され準備が進んでいく。
使用人たちは慣れたもので、テキパキと設置が終わった。
「坊ちゃま。ベルザード准男爵家のリリス様、イシュラン騎士爵家のパメラ様がお越しになりました」
「了解。今いく」
リリス嬢とパメラ嬢はロッククラン伯爵領の領都フランチェスコに住んでいるから、ご近所さんだ。
「フェリクス様。お招きいただき、嬉しく思っております」
「お招きいただき、ありがとうございます」
二人を出迎えると、貴族らしい綺麗な所作で挨拶をいただいた。
俺も礼をもって二人を出迎える。
「お二人とも、今日もお綺麗ですね」
歯の浮くような言葉がしれーっと出てくる。俺も成長したな。
二人には控室で待っていただき、ランドン公爵家のリエネッタ嬢とベルテス子爵家のクラリス嬢を待つのだが、二人もすぐにやってきた。
リエネッタ嬢は明るい緑色のドレスにプラチナのティアラ、クラリス嬢は黄色のドレスに大きなエメラルドがついたネックレスでお洒落をしている。
「きてあげたわよ!」
リエネッタ嬢は相変わらずのツンデレ風だ。
そういうのもいいものだよ。フフフ。
「フェリクス様。お久しぶりですわ」
クラリス嬢は光を反射する黒髪がとても綺麗だ。
元日本人としては、黒髪の少女を見ると懐かしさを覚えるよ。
四人を庭園に案内し、リエネッタ嬢から椅子を引いてエスコートしていく。
四人とも俺がしないといけないらしい。
そういうところは、メイドや執事がしないんだね。
「今日は遠いところをきていただき、本当に感謝しています。ささやかな持て成しですが、楽しんでいってください」
しかし四人とも美少女で目が癒される。
お茶会だから、先ずはお茶を出す。
最高級ダッサムチーの香りが俺たちを包み込む。
皆が一口チーを飲んだところで、あれがでてくる。
前に置かれていくその皿に、四人の目が釘付けになる。
「見たことがないものですわ。これはお菓子なのかしら?」
リエネッタ嬢は公爵家のご令嬢だから、大概のお菓子を口にしてきたはずだ。
その彼女でも見たことないホットケーキのアイスクリーム載せです。
どうぞ、しっかりと味わってください。
「これはホットケーキというお菓子です。ナイフで簡単に切れますよ」
俺が最初にホットケーキを切り、その上にアイスクリームを少し載せて食べる。
うん。ハチミツは少し控えめにしてあるけど、アイスクリームの甘味があるから安定の美味しさだ。
俺の食べ方を見た四人がそれぞれのホットケーキにナイフを入れる。
「柔らかいですわね!」
「はい。とてもふわふわとしています」
どうしても公爵家のリエネッタ嬢が主導になる。
そこに子爵家のクラリス嬢が相槌を打つ形になる。
リリス嬢とパメラ嬢はさすがに口数が少ない。
でもリエネッタ嬢の言葉に頷いたりして、反応はしている。
「っ!?」
ホットケーキを口に入れた瞬間、リエネッタ嬢が目を剥く。
それを俺は微笑ましく見ていたが、クラリス嬢たち三人は戦々恐々として見ている。
「お、美味しい! 何これ!? なんでこんなに美味しいの!?」
畳みかけるように喋るリエネッタ嬢は、俺に掴みかかりそうな勢いだったから彼女つきのメイドが止めに入った。
「お嬢様。ドウドウ」
ドウドウって馬じゃないんだから……まあいいけど。
ハッと我に返ったリエネッタ嬢は、少しはにかんで頬を染めた。
中身オジサンの俺にとっては、とても初々しい反応だから頬が緩みそうになる。
「皆さんも食べてみなさい。とっても美味しいわよ、これ」
リエネッタ嬢が仲間を増やそうとしているのかな。
今のリエネッタ嬢の反応を見ていたからか、三人とも気合を入れてホットケーキを口にした。
三人の目は見開かれ、そしてまるでとろけるような表情になって頬が上気したのが分かる。
ハチミツの甘味にバターの塩気が絶妙に絡まり複雑な美味しさを醸し出し、さらにホットケーキの柔らかさとアイスクリームの冷たさと甘さで脳天を撃ち抜かれたような衝撃を受ける。
砂糖ばかりのただ甘いだけのお菓子では味わえないものだからね。フフフ。
「これは、このホットケーキは、どこで購入できるの!? 教えなさい、フェリクス!」
リエネッタ嬢の質問に、他の三人も聞き耳になっている。
「それは当家の秘伝なので、他所では購入はできません」
「な、なんてことなの……」
そんなこの世の終わりみたいな顔をしないでよ。
俺がとても悪いことをしているみたいだ。
でも、ある意味、とても悪いことをしてしまったのか?
彼女たちはうち以外でこれを食べることができないのだから、なんてものを食べさせたのよ! って感じなんだろうな。
四人との楽しい時間はあっという間に過ぎた。
彼女たちはそれぞれ趣味があって、リエネッタ嬢は魔法、クラリス嬢は剣術、リリス嬢は刺繍、パメラ嬢はクロコスだった。
リエネッタ嬢はその言動から魔法が趣味と言われても違和感なかったし、リリス嬢の刺繍は女性貴族のオーソドックスな趣味だけど、クラリス嬢の剣術はその儚げな容姿から想像できなかった。
そしてパメラ嬢のクロコスも意外だった。
クロコスというのは、チェスや将棋のような盤上のゲームで、戦術ゲームだから主に男性貴族の嗜みのようなものだ。
俺もクロコスを指すことはできるが、あまり上手くはない。
無事にお茶会が終わった。
四人も可愛い女の子に囲まれていると、楽しかったけどちょっと疲れた。
でもいい疲れだ。
アイリッシュ曰く、マメに女の子たちを呼んでお茶会をしなさいということだ。
マメというところが大事らしい。
俺にできるだろうか……。
最後に、四人にお土産を渡した。
木箱を二重にし、氷を入れたその箱の中身は、プリンだ。
プリンはおまけなので、本当のお土産はガラスのソーサー型シャンパングラスになる。
グラスにはそれぞれ四人の似顔絵とうちの紋章をつけており、それぞれに四個贈った。
「中のものはできるだけ早めに食べてくださいね」
「「「「食べ物なのですね!」」」」
ホットケーキが衝撃的な美味しさだったようで、四人は喜色満面で帰っていった。
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