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フェリクス ~この男、取り扱い注意にて~  作者: 大野半兵衛


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第14話 餌付け

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 第14話 餌付け

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 リエネッタ嬢、クラリス嬢、リリス嬢、パメラ嬢からお茶会に参加すると返事をもらった。全員参加だ。

 お茶会に出すものについて、どうするか選ばないといけない。

 こういうものは、センスが問われるとマイママが言っていた。

 だから、最後はアイリッシュに確認してもらい、合格にならないといけない。

 これ、俺が考えないといけないの?

 まあいい。

 ここで前世のスキルを使ってやろうではないか。

 俺は自慢じゃないが、アラフォーの独身だった。

 家事の一切は自分で行っていたのだ。

 三〇歳を過ぎた時、一念発起して料理教室に通った。

 料理が女性のものというのは古いと、何かのテレビで見たからだ。

 料理教室に通って、色々な料理の他に、スィーツも作れるようになった。

 会社にスィーツを持っていき皆に食べてもらったら、椎名に女子力高いと言われた。

 女性にモテるために料理を習ったのだが、『奥さん要らないね』と言われる始末だったのだ(泣き)。


 話が逸れた。

 本題に戻ろう。

 お茶はチーが一般的だけど、チーの種類には色々ある。

 そんなわけで、うちの領地で茶葉を探すならこの店だと言われているタージン茶葉店に向かった。


 貴族用の豪華な馬車が店の前に停まったからか、茶葉を揉むような手揉みをする店主が出てきた。


「ようこそおいでくださいました。当店の店主でタージンと申します。以後、お見知りおきくださいませ。フェリクス様」


 店の外までチーのよい香りが漂うこの店は、うちのご用達店の一つだ。

 本当なら屋敷に呼ぶのだけど、魔法の訓練が楽しくてあまり外に出てないからさ、たまにはね。

 もちらん、先触れを出しているから、店側もそれなりに準備し、高級茶葉を用意し、手ぐすね引いて待っていたはずだ。


「こちらはキモンの茶葉にございます。とても希少な品にございます」


 チーの有名産地はキモン、ウッパー、ヌワル、ダッサムとあり、キモンは最も遠方の産地ということで値段が一番高い。

 いい茶葉は元々高いが、運搬にも気を使うためとにかく値段が張る傾向にある。


 タージンに勧められたキモンの茶葉の香りを嗅ぐ。

 フルーティーで爽やかな香りだが、俺の好みではない。


「お気に召しませんようですね。では、こちらのダッサムはいかがですか? 帝国国内では最も流通しているものですが、その中でも最高級のものになります」

「いい香りだ」


 これに決めようと思ったところで、店の端っこにおいてあった木箱に目が留まった。

 その木箱には未発酵品と表記があったのだ。


 チーは茶葉を発酵させたものになる。未発酵はチーとは言わないのだ。

 つまり、それはチーではない。そういうことになる。


「あの未発酵とはなんだ?」

「あれは試しに仕入れたものにございます。なんでもキモンよりもさらに東の島国で作られた茶葉なのですが、チーのように発酵させた茶葉ではないのです」


 まさかとは思うが……。


「見せてくれ」

「はい。君、あれをここに」


 店員が木箱の中の茶葉を皿に盛って持ってきた。

 色は緑で、懐かしい緑茶の匂いがする。

 この世界で緑茶にお目にかかるとは思ってもいなかった。

 ちょっと感動する。


「これとダッサムをもらおう」

「ありがとうございます。こちらはウージーという茶葉になります」


 ウージーは懐かしい香りだ。

 俺はウージーで色々試してみたいと思った。


 屋敷に帰った俺は、まずそのままで飲んでみる。

 これは間違いなく緑茶だ。懐かしい味だ。しかも結構いい茶葉だと思う。


 さて、今度はウージー茶を焙煎してみた。

 そう焙じ茶を作っているのだ。

 いい具合に茶色になったので、お湯で蒸らして飲んでみる。香ばしい中にも甘味がある、ほっとする味だ。

 これも美味しい。


 最後は抹茶にチャレンジ。

 抹茶は石臼製作からだから、かなり時間がかかった。

 まず石臼が上手く作れなかった。

 粉がかなり粗かったので、到底抹茶とは言えないものだ。


 土属性魔法で石臼を造り続けて数百個。

 やっと満足いく石臼ができ上った。

 シャインたちは何を作っているのかと、呆れて見ていたようだ。

 器も自作した。ただ、茶筅ちゃせんは魔法では作れずに、不満が残るもので抹茶を立てた。

 それでも抹茶は美味しい。この苦味がいいのだ。


 緑茶(煎茶)と焙じ茶と抹茶をシャイン、メイン、ヴァスト、アル・エド兄弟に飲んでもらった。

 皆、渋い顔をした。


「私はチーのほうが好きです」


 シャインの意見に皆が同意する。


 緑茶のよさが分からない愚民どもめ!


 とはいえ、この世界の人たち全員が緑茶よりチーのほうがいいと言うので、お茶会にはチーのダッサムを出すことにした。


 だが、俺は諦めないぞ!

 愚民どもに目にものを見せてやる!


 次はお菓子だ。

 砂糖を使えばいいというこの世界のお菓子は嫌いだ。糖尿病になってしまう。


 ミルク、薄力粉、砂糖、塩、重曹を用意した。

 そう、ホットケーキを作ろうと思っている。

 本当はベーキングパウダーがほしかったけど、重曹で代用する。


 ベーキングパウダーは加熱しなくても膨らむけど、重曹は加熱しないと膨らまない。

 そこは俺の腕で対処可能だ。


 真平な鉄板を作るのもちょっと時間がかかったが、いいものができあがった。

 鉄板を熱魔法で加熱し生地を引こうとした時だ、ここで俺は大事なことを忘れていた。


「バターがない!」


 ということで、バターを作ります!

 ミルクを密閉した容器に入れて……。


「ヴァスト。これをとにかく振ってくれ」

「振る、のですか?」

「俺がいいと言うまで、振り続けるんだぞ」


 最初は余裕な顔をしていたヴァストだが、五分も振っているとキツそうな顔になってきた。


「フェリクス様。いつまで振るのですか?」

「もうちょっと」


 もうちょっとと言っても最低でもあと五分は振らせるけどね。がんばれ。


 ヴァストのおかげでミルク内にある脂肪分が固まってくれた。


「アルはこれをかき混ぜてくれ」


 脂肪分に少し塩を加えてかき混ぜる。

 まあ、振るよりは楽だが、それでも料理初心者は無駄に力を入れるからすぐに疲れる。


 よし、バターができたぞ。

 といっても少量なので、ヴァイスとアル・エド兄弟にもっとバターを作ってもらう。


 三人が必死にバターを作っている間に、鉄板をしっかり熱して生地を広げる。

 直径一〇センチメートルくらいで、ちょっと厚めにしておく。

 徐々に生地が膨らみ、厚みが五センチメートルくらいになった。

 ひっくり返して両面に茶色の焦げ目をつけるが、その時にプルンプルン揺れる。

 これだけで美味そうだ。


 よし、これでいい。

 二つを重ねて皿に盛り、バターを載せ蜂蜜をかける。

 見ためは間違いなくホットケーキだ。後は味だが……。


「いざ、実食! あむ……」


 う、美味い! これだよ、これ!

 やっぱホットケーキは美味い!

 この柔らかさと、バターの塩味、そして蜂蜜の甘味が調和して口の中に広がる。


 だらしなく頬が緩むのを感じるぜ。


 視線を感じる。シャインとメインがガン見していた。


「食べるか?」

「「はい!」」


 切り分けてまずはシャインに、あーん。


「あーーーん……お、美味しい!」


 頬を押さえて上気するシャインは年齢なりの可愛い女の子だ。


「坊ちゃま。わ、私にもくだしゃい!」

「はいはい」


 メインにもあーん。パクッ。


「うぅぅぅん。美味しいでしゅ~♪」


 鳥の親になった気分だが、二人が喜んでくれて何よりだ。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
味見はバター作りを手伝った小姓達じゃなくて、メイド達なんだ(*T^T)
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