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裁判開始直前

前話一部改稿しました。

愛するふりとは中々に難しいと悟った。

あれからナグはここに入り浸っている。

一体彼はいつ仕事をしているのだろうか。

まあ、お陰であれからネクロスラーズ嬢達はこなくてすむのだから文句はない。

しかし、ご飯の食べさせあいっことか膝枕をするとか、何が楽しいのかさっぱりわからない。

わからないが、ナグは楽しそうなので一生懸命頑張る。

穏やかに時間は流れていく。

明日は裁判だ。

裁判で私は二週間ぶりにスチュワートと会う。

「明日は手筈通りよろしくね」

「任せてくれ。」

言いながら彼は私の髪を撫でながら肩にもたれかかってきた。



裁判所に移送される。

護衛にナグがついた。

金でも積んだのだろうか。

裁判前に私は小部屋に通される。

私は至って気楽にしていた。

何せ判決は決定している。

問題はスチュワートだけだが、ナグと結託すればそれは解決したも同然。

特に恐るものもない私はのんびりとお茶を飲んでいた。

そこに、足音を響かせて足早に来る人がいた。

この足音は…

意外というか当然というか…

ドアが開いた。

そこには、お父様がいた。

随分憔悴しているように見える。

まあ、娘が王家に弓を引いたのだ、お家取り潰しの危機である。

自身の地位も爵位も没収だろうし、連座で死刑すらあり得るのだ。

憔悴するのも当たり前だ。

「あら、お父様、お久しぶりです。」

「お、ま、え、はぁぁ!」

パン

頬を平手打ちされる。

「一体!!何をやって!!!」

「何もしてないのですけどねぇ。」

頬をさすりながら私は言う。

後ろに控えるナグは止めるべきか悩んでいた。

一応、公爵様だものね。

いや、もしかしたらすでに元かもしれないが。

私の知らないうちに既に爵位剥奪されていても驚かない。

「ふざけるな!!何もしてないだと!?」

「ええ、まあ、これといって特に。」

「では何故このような事になってる!?」

「それは私が聞きたいです。」

しかし、誰に聞いても答えられないだろう。

私の態度に何を言っても無駄と悟ったかお父様は髪をぐしゃりと掻き毟る。

「なんだ!?あれか!?あの男爵令嬢と一緒になりたい王子の差し金か!?」

「お父様、滅多な事いうものでは…」

「それとも…」

私の言葉など無視して色々な貴族の名前をあげつらう。

私の知らない貴族の名前もあったし、大半が格下だが中には同格なものもいた。

そんなに恨まれている自覚があったのですね…。

半ば呆れているとまたも足音。

この足音は意外すぎた。

そして、ドアを開けて入ってきたのは赤い髪の神官長だ。

相変わらずそこらの神官よりいいものを着ている。

「お久しぶりですね、神官長様。」

「君はこんな状態なのに落ち着いていますねぇ」

呆れたように言う。

「まあ、もう、決まってますし?」

「足掻かない主義?」

「ええ、不必要な事は足掻きませんよ?」

「…不必要なこと…ね?」

ちらっと神官長は視線をお父様にうつす。

まだ彼は指折り貴族を数えていた。

視線を戻して私を見る。

「まあ、君にとって不必要でも彼にとっては必要だから必死に足掻いているんだよ?」

「…?」

意味がわからない。

そりゃ確かに私には金がかかっている。

しかし、ここまで来たらもう損切りだろう。

いつまでも抱えていたら損害が大きくなるだけだ。

「クスクス…」

私の表情をみて神官長は笑う。

実に不快だ。

「ところで、一体なんの用ですの?」

「何の用とは酷い。君の弁護人として来たのに。」

「ええ!?」

さすがにそれには驚いた。

まさか、負け確定の裁判に弁護人が出てくるなんて!?

「君のお父さんが、王都中の弁護士事務所に弁護士を探して駆けずりまわったんだ。」

「お父様が!?」

私はお父様を見る。

「何をしているんですか!

そんなことしている場合ではないでしょう!」

私が言う立場ではないが、反逆罪で投獄されている娘の弁護士を探している暇があるなら、公爵家存続の為に出来ることをすべきだ。

公爵家の派閥貴族を纏めて、嘆願書の提出くらいはしないと。

あと、お父様の補佐官の仕事も失うかもしれないから、今までの功績を纏めてとどまれるように周りを説得して…。

他にもあれもこれもと指折り数える。

気のせいか、その姿はお父様にそっくりだった。

「君達親子だねぇ」

神官長が呆れたようにいう。

「だけど、まあ、引き受ける弁護士はいなくてね、僕にお鉢が回って来たって訳」

言われて私は合点がいった。

莫大な金を積んでも弁護士が引き受けなければ弁護士不在の名ばかり裁判になる。

それを避けるには教会に救いを求めるしかない。

しかし、神官は神に仕える者であって弁護士ではない。

法律は門外漢だ。

それでも、我が国の法律では弁護人は弁護士資格の持主もしくは神官長となっている。

神に仕える者は人の世界では中立平等の観点からだが、弁護士事務所が乱立する昨今神官長が弁護士の代わりに裁判に来たなんて聞かない。

「はあ、またご苦労様です。」

こんな吊るし上げ裁判にご足労とは神官長などという仕事も楽ではなさそうだ。

「まあ、私は私で旨味があるのでね。」

旨味?

はてさてそれは何なのか。

まあ、死にゆく身の上では関係ない。

「そうですか?では一緒に吊るし上げにあいましょう。」

「ははは!」

愉快そうに笑う神官長。

こいつもなんだか余裕そうだ。

「ところで、君に渡した例の宝石。あれ、どうなった?」

「え?知りませんよ」

「そうかい?まあ、壊れていても文句は言わないから安心してね?」

いやいや、壊してませんから。

なんでまたこのタイミングでそんなどうでもいいことを言ってくるのか。

「ふふ….さて、裁判が始まるね。」

「ええ、あ、念の為言っておきますけど、私の邪魔だけはしないでくださいね?」

「ん?そういうってことは何か企んでる?」

「ふふ…さて?まあ、大筋には変化ないですよ?

貴方は精々無駄な弁護をよろしくお願いします。」

「ふふ。無駄かどうかはやらなくてはわからないよ?」

「夢を見るのはおやめください」

私の有罪は決定事項。

そして二週間後には斬首刑。

首を触る。

繋がっている今しかできない事を私はやる。

それだけだ。

「リナリーバー・ミハルバー!

貴様の裁判が始まる!法廷に出廷するように!」

裁判長の小間使いが偉そうに私を呼ぶ。

その言葉でお父様は我にかえる。

私と神官長は互いに頷きあう。


さて、茶番といきますか!



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