盲点!
王都に戻り一週間経った。
たった一週間だが、なかなか濃い一週間であった。
学園に行けばクラスメイトは私をお化けでも見たかのように驚き大声をあげた。
一体なんなのかと思えば学園では私が学園から追放処分をされたと思われていた事が判明。
ただの長期休暇だって説明されていただろうに、言葉の裏を読みたがる貴族の悪い癖が出た結果だった。
殿下とアリスは相変わらず公認カップル状態。
皆二人を羨ましそうに見ている。
しかし、自分達が身分違いの誰かとくっつこうとはしない。
身分違いの恋は見るだけで充分であり自分達は手堅くいくようだ。
また、アリスはワトソン伯爵と接触し、聞くところによると男爵がアリスを手放したがりとの事でアリス本人よりも乗り気で養子縁組に必要な書類を速攻で準備して役所に提出したとのこと。
受理され正式に伯爵令嬢となるには今しばらくかかるがこれで舞踏会終了後私にとって都合の悪い貴族がアリスに手出しをしてくることはなくなった。頑張った甲斐があり私は満足する。
ルナ嬢には招待状の代わりに使用人として雇う便宜を図ったと伝えたら少し考えて『その方が自由に動けていいかもしれない!』と言っていた。
文句を言ってくるかと思ったがそんなことなくてよかった。
でも自由に動くってなんなんだ。
そんなこんなで一週間。
遂に舞踏会だ!!!
まずはドレス選びである。
ここまでくるのに湯浴みして体をメイド三人がかりで磨き上げた。
そして今大量のドレスを壁一面にかけて選んでいた。
何を着るかいまだに決まっていないのだ。
今まで舞踏会に行くたびにドレスを新調しそれを着て行けばよかったのだが、今回は違う。
手持ちのドレスで行くのだ。
選ぶ時間が必要ということを失念していた私はメイド三人に丸投げしてことの成り行きを見守る。
「ふう…!舞踏会に着ていけるボールガウンラインのドレスはこれで全てですね!」
「あまりに古いのはダメですから、これらは片付けましょう!」
ごっそりと片付けられたドレス。
それでも壁にはたくさんのドレスがかかっている。
「この中から選ぶのですが…」
「待ってください!このドレスは三ヶ月前の舞踏会で着用されたものです!
これはまずいのではないでしょうか!?」
「それでしたらこちらも…!」
「あちらも…!」
またもドレスが減った。
「では今度こそ選びましょう。」
「色はどうします?」
「王家主催ですから王家の色である金色は避けた方が無難ですね。」
ゴールドのドレスが片付けられた。
「なら公爵家の色である銀色は?」
銀色のドレスが目に入る。
そこにスチュワートがやってくる。
私はガウン一枚を纏っただけのあられもない姿なのだがスチュワートは無表情であり、また私も気にならないので普通に通す。
「お嬢様、王家より贈り物です」
「まあ!」
「殿下から!?」
メイドが反応するが殿下からでは絶対にない。
もしそうならスチュワートは殿下からと言うだろうから。
しかし王家からというのは気になる。
一体なんなのだろうか。
手渡されたのは薄い箱。
金色のリボンがかけられていた。
それをほどいて箱をあければ出てきたのは…
「……あの、今回の舞踏会は普通の舞踏会…ですよね?」
そういえば、私は知ってるけど他の人は知らない情報を私は握っていたのだったな。
一人箱の中身を見つめながら思う。
そして、ドレスを見直す。
「………銀色は却下」
私は箱の中身を取り出してそう言ったのだった。
箱の中身を見た後のメイド達のテンションは急降下した。
これをつけて出席するなら何を着せても同じだと思ったのだろう。
私もそう思う。
結果。
紫色のサテンドレスを身に纏い、金色の髪を結い上げ翡翠の髪飾りを取り付ける。
王家主催の舞踏会に行くにはあまりに質素。
しかし、何を着てもこれを身につければそこに目線がいくのだ。
私はそれを片手に馬車に乗り込み王城を目指す。
共に馬車に乗り込んだスチュワートは私をマジマジと見る。
「本日もお嬢様はお美しい。まさしくこの国一番の美姫でありましょう。」
「ありがとう」
私が着飾れば必ず褒めてくれる唯一の人がスチュワートである。
どんなに着飾っても本当に褒めて貰いたい人からは褒めて貰うことのなかった頃の私には聞くに耐えない暴言であったが今は違う。
もう、この言葉だけで充分であり何もいらなかった。
王家主催の舞踏会。
使用人の出席は認められておらず私はこれより一人で舞踏会に臨まねばならない。
私は王家より贈られたものを手に取る。
それは白い仮面。
左目のところに一筋の赤い線が描かれているが、それが涙にも見える。
これから開かれるのは仮面舞踏会。
この仮面は王家の人間から私が私だと知らせる為のもの。
おそらく、アリスにも仮面が贈られてらいることだろう。
私は一人だがアリスには味方がいる。
殿下、リュド様、ザック様。
三人が力を合わせれば彼女をこの場でうまくフォローして彼女を王家に認めさせることくらい余裕だろう。
私も陰ながらフォローに徹する。
私は王城に入り舞踏会会場へと足を踏み入れた。
そこでは軽やかな音楽が鳴り響き色とりどりのドレスを纏った貴婦人、令嬢、正装に身を包んだ貴族、令息。
皆仮面を被り誰が誰だかわからないが、そこかしこで楽しげな会話が聞こえる。
わかってはいたがとにかく人が多い。
そして、気づいた。
王家は仮面という印でアリスがどこにいるのかわかっているようだが、私にはさっぱりわからないということに…!




