事後報告とアリスの略歴
自宅に戻って一晩休み翌日、お父様の執務室へと事態報告の為に訪れた。
出立してからほぼ予定通りの帰還となり私はほっとしていた。
遅刻だけは免れたので、第一声が罵倒ではない事にほっとする。
「失礼します」
私は執務室に入った。
「遅い!!」
途端、執務室に響き渡る怒声!
ええ!?いきなり怒られた!?
「も、申し訳ありません」
私はとりあえず謝っておく。
だけど、遅刻はしていない!
内心不満でいっぱいだ。
「旦那様。せっかくお嬢様がいらしたのですから、落ち着いてください。」
お父様の横に控えるセバスがお父様を諌める。
「しかしだな!こやつは昨日帰ってきていたのだぞ!?
なのに、今日まで挨拶ひとつなかったではないか!」
「申し訳ありません。昨晩は疲れが出てしまい戻ってすぐに眠ってしまいました。
…帰還報告はスチュワートに任せましたが何か不手際でもありましたでしょうか?」
「〜〜〜もういいわ!」
だんっと机を拳で叩いて言い放つ。
何がいいのかよくわからないが、まあ置いておくことにする。
元々よくわからないことで怒り出す節のある人だから気にしたら負けだ。
「では、報告を聞こう。」
「はい、スチュワートから話があったとは思いますが、目的の品であるオリハルコンの採取に成功しました。
こちらがその品です。…スチュワート!」
「は」
スチュワートが白いスカーフをかけ、両手で抱えるように持つ物を机に置く。
そして、白いスカーフをそっと取り除けば、眩い光に満ちた最高級魔法金属オリハルコンが現れる。
「これが!」
いかな公爵といえどもこの量を見たことはないだろう。
そもそもオリハルコン自体見たことがあるのかも不明だ。
「これをお前の手で掘り起こしてきたのか。」
「はい」
「よくやった!」
お父様は手放しで褒める。
「我が公爵家の派閥貴族領地からオリハルコンが採れたことは実に素晴らしい!
これで益々我が家は王家になくてはならない王家を支える要となれる!」
お父様は興奮気味に言う。
「しかも、次期王妃と言われるお前自ら足を運び掘り起こした事は、王国民の生活を潤わせる事に直結する。
次期王妃としてこれほど素晴らしい行いはない。」
そのような意図は全くなかったが見方によっては確かにその通りだ。
「お褒め頂きありがとうございます。」
私は一礼する。
「しかも、聞くところによると、オリハルコンの謎に包まれていた精製方法まで解明してきたとの事。
これはワトソン伯爵にとってこの上ない朗報となろう。」
オリハルコンは精製方法も不明であった為に似たような物さえ作れず天然物に頼るしかなかった。
しかし、今回の件で精製には三種の妖精の力が必要とわかった。
大地と金属の妖精とあとひとつは力ある妖精。
この力ある妖精がそうそういない上にいたとしてもオリハルコンを作る為に力を貸すかはまた別問題。
さらに解明したといってもどの程度の力ある妖精が必要なのかは不明。
なので、今後も研究重ねていかなければ人工的にオリハルコンを作るなどと言う事は不可能であろう。
「今は伯爵領地ではこの量しか採れませんでしたが、現地で活動する妖精の様子からして約一年後を目処に再び鉱山からオリハルコンが産出されるようになるかと思います。」
「素晴らしい成果だ。危険を犯しただけはある。
…さて、これらの成果に対して私から特別に褒賞をやろう。
何を望む?」
「では。」
私は一呼吸おく。
「とある者達の支援を」
「支援?」
お父様は顔を顰める。
ドレスか宝石か、その辺りを望むと思ったのだろうが生憎その手の物はもういらない。
「はい、伯爵領地へ行く際、私達を手助けしてくれた者達が世界一周をしたいと申しております。
彼らの支援を我がミハルバーで総力を上げて手助けしてほしいのです。」
「…それほどの活躍をしたと?」
「彼らがいなければ私達は今この場にいなかったでしょう。」
私の言葉にお父様は息をのむ。
彼らがいなければ予定通りの日時に帰還できなかったと言いたかったのだが、お父様は別の意味でとったようだ。
まあ、そう取るようにわざと誤解を招く言い方をしましたが。
しれっとポーカーフェイスを貫く。
「成る程。次期王妃たるお前の命を救ったのならば公爵家としての支援は必須。
ここで何もしなければ寧ろ我が家の名誉は地に堕ちるだろう。
望みは世界一周だったな?
ならば、追って必要な書類一式を準備しよう。
金はあるのか?ないなら支度金としていくらか出そう。」
言われて考える。
オリハルコンを手にした彼らの資金は潤沢だ。
しかし、金はあっても損にはならない。
「では幾らか融通をお願いします。」
「ふむ、よかろう!」
「それと、旅の途中とある妊婦と懇意になりまして。」
「ほう?」
世界一周程興味はひかれないらしいが一応聞いてくれるようだ。
「流れで出産まで手伝うことになりましたの。」
「…それは…」
お父様が何やら思い出したのか顔をひきつらせる。
私はお父様と違って家具よりかは役に立ちましたよ。
「まあ、せっかくそこまでお付き合いしたわけですから、出産祝いを我が家から出そうと思いますがよろしいですよね?」
「相手は貴族か?」
「いえ、違います」
貴族どころか人間ですらありません。
「平民なら何を贈っても我が家の好感はあがるか。お前の好きにしろ。」
よし、許可はとった。
お父様は相手を平民と思い込み贈り物は市販の菓子程度と思ったようだが、私の好きにしていいという言質はとったので遠慮なく紋章入りの服とおもちゃを贈ります。
「学園は明日からだったな?」
ぎく
別に後ろめたい訳ではないが、嫌な汗が流れる。
今日までまっったく勉強していない。
ついていけるか不安ではある。
しかも、定期テストも近い。
そして丁度来週の今日にあたる日は仮面舞踏会。
イベント目白押しだ。
「そ、そうですわね。」
「オリハルコンの活躍見事であったが、本来お前は学生だ。
学生の本分は勉強にある。
こちらを疎かにしては未来の王妃として本末転倒。
決して驕る事なく、励めよ。」
「畏まりました。」
すぐそこに迫る危機に体が竦む。
これは魔法ではどうにもなりません。
あの時丸投げした未来が返ってきたぁ!
「そ、それではこれよりワトソン伯爵の元に参りますので失礼します。」
スチュワートを伴いお父様に見せたオリハルコンを回収して私は部屋を出たのだった。
「おおおおおおお!」
ワトソン邸に伯爵の歓声が響いた。
「おおおお!遂に!オリハルコンの再発掘となったか!」
感涙を滝のように流して私の両手を握ってくる。
後ろに佇むスチュワートが咳払いをした。
彼は慌てて私から手を離す。
「これで我が家の領地も安泰だ!」
「ええ。調べたところ後一年で再び鉱山からはオリハルコンが産出されるようになるらしいわ。」
「なんと!」
「地下にいる三種の妖精の働きによってオリハルコンは作られるみたいだから、うっかり狩りとるとオリハルコンは手に入らなくなります。」
「成る程。では、早急に鉱山への侵入を禁じよう。」
彼の言葉に私は頷く。
それが一番いいに決まってる。
「ところで、私は約束を果たしました。次は貴方の番です。」
私の言葉に彼は笑う。
「勿論、我が領地の救世主たるミハルバー公爵令嬢様のご意志とあれば喜んで対応致します。」
「よかったですわ」
「しかし、私自身は男爵令嬢との面識がありません。
誰かしら間を挟んでいただく必要があるのですが。」
「確かに…」
私は暫し考える。
私が直接紹介する案は勿論却下。
たとえオリハルコン持ちの伯爵様と言えども、私の息があからさまにかかっていれば、殿下は塩を撒く勢いで追い返すだろう。
アリスも面識があって殿下も無碍には出来ない人物の紹介…。
あ、一人いた。
「畏まりました、では王妃教育に携わる人間…。
テレサ女史を紹介しましょう。
彼女を挟んで交渉をお願いします。」
「ほう、では早速テレサ様にお会いしたいのですが、いつ頃お会い出来ますか?」
「本日これから彼女の元に伺う予定なのですが…」
「よろしい、善は急げとも申しますし、私もご一緒させて貰ってもよろしいでしょうか。」
「勿論構いませんわ。」
私は頷いた。
こうして私は伯爵と共に王城へと向かう。
王城レッスンルーム
王妃候補と教育係の為の特別室であり他の者はそれなりの理由がなければ入れない。
今回伯爵は私の手引きで入室する。
今、この場にはアリスはいない。
心置き無く内緒話が出来るというものだ。
「テレサ様、こちらワトソン伯爵です。」
「お初にお目にかかります。」
「お会い出来て光栄です。」
二人は儀礼的な挨拶を交わした。
「本日はどのようなご用件でいらしたのでしょうか?」
優雅にソファに座り、テレサ様は問いかける。
察しのいい彼女の事だわかっているのに敢えて聞いてくる。
「実は彼がアリス様の養父として名乗りをあげることになりましたの。
しかし、彼はアリス様と面識は御座いません。
そこで妃殿下から覚え目出度く、またアリス様を直接ご存知のテレサ様から彼をアリス様に紹介して頂きたいのです。」
「なるほど、貴女が直接紹介出来れば話は早いのですが、そうもいきませんものね。」
テレサ様は頷く。
「…ワトソン伯爵と言えば先日、領地に光の羽が降り注ぎ神の祝福を得たともっぱらの噂となっております。」
あれか!もう王都に噂が届いたのか!
人の口に戸は立てられないとはよく言ったものだ。
「はっはっは!その話で社交界は今持ちきりでして!
普段は音沙汰のない高位貴族様からのお誘いがひっきりなしですよ!」
「まあ、そうですの。実際何か変わった事がお有りだったのですか?」
「実は我が領地の鉱山が息を吹き返しまして。
オリハルコン産出の目処がたったのですよ。」
「それはめでたいですね。」
「ええ、それでこれを機に少しばかり王家に食い込んでみようかと思いまして。」
「と、いうと?」
「オリハルコンが採れなかった時期、我が領地は窮地に立たされておりました。
しかし、その窮状を幾ら王家に訴えてもなんら手を差し伸べてはくれず。
今回は偶々鉱山が息を吹き返したからよかったものの、そうでなければ、我が領地は荒れ果てていたでしょう。」
…彼の言い分もわかる。
しかし、私は彼に関しては王家の対応は正しかったと思う。
オリハルコンで潤っていた時期に浪費をするだけでなく、万一を考えてオリハルコンに頼らない特産品を生み出すとか、一部を蓄財するとか、出来たはずなのだ。
それをせず、どころか見栄をはるための浪費を続けたのはこの伯爵自身。
以前から特産品の開発に力をいれており、蓄財してある財産の放出をしてなお民が飢えるならまだしもそうでないなら基本それは伯爵の経営手腕によってなんとかしなくてはならない。
間違っても王家は手出しはしない。
しかし、私の考えなどお構いなしに彼は続ける。
「そこで私は今後また領地が窮地に立たされた時の為に王家にツテを持とうと考えまして。」
「…ツテですか?」
「ええ、たとえば未来の王妃様が我が義理の娘ならば、万一領地が窮地に立たされても手助けして貰えるでしょう。」
なるほど、彼は彼で考えているのね。
それが正しいかは置いておくとして、小賢しく浅知恵は働くタイプのようだ。
個人的には王妃とのパイプよりまずは特産品の開発だろうと思うのだが、きっと彼はそういう地味で結果が出るのに時間のかかる行為は苦手なのだろう。
そんなつまらない行為よりも王妃とのパイプを持って困った時に泣きつけば国庫が開くようにして置いた方が彼的には賢い選択ということか。
「なるほど、国に声を届けるのも内部に親戚や知り合いがいた方が届きやすいし無碍にされたりはしませんものね。」
テレサ様は伯爵様の意見に賛同するが、賢い彼女は私と同意見であるはずだ。
そして、諌める必要もないところも同じ。
何も知らない伯爵はうんうんと頷いている。
「そうなのですよ、ですから是非アリス様と養子縁組をしたいのです。」
「リナ様とも親しいようですし、何もそこまでなさらずとも?」
意地の悪い質問が飛ぶ。
「はっはっは!ミハルバー様とはもう大分懇意な間柄ですので、王妃になられた暁には充分私を助けてくれると信じておりますとも!
しかし、何事も万が一というものもあります。
私としてはどちらに転がってもいいように手を打つだけです。」
ニヤリと悪どくみせたい笑顔を浮かべる。
「ほほほ、では私の名前でもって伯爵様を養い親にするよう推薦致しましょう。」
「それはありがたい!」
「いえいえ、とは言えアリス様の事を何も知らないのは少々不味いでしょう。
簡単に現状をお話ししておきますね。」
テレサはアリスの略歴から話す。
「彼女はベルガーネット男爵が自身のご領地でお忍びで食事をしていたところを給仕係だった母君様を見初めて関係を持ち、生まれた子供です。」
「まあ、ありがちな話ですな!」
「ええ、本人は身分を超えて愛し合った結果が自分であると強く思っているようで、その為、王妃にもなれると信じ切っております。」
成る程、自分がある意味身分違いの恋の果ての存在だから自分でも王妃になれると思うのか。
「しかし、これは本人も知りませんが王家の調査の結果少しばかり話が違いまして。」
「ほ?」
「え?」
話が違う?
「まず母君の仕事は食堂の給仕係ではなく売春婦でした。」
ひくっ
私とワトソン伯爵の顔がひきつる。
「かなり人気な芸妓だったようで、男爵もその話題に乗るべくお忍びで売春宿に行かれたのでしょう。」
淡々と言う。
「勿論、一度味見して満足した男爵は以降一度も宿屋には行っていないようです。
無論、連絡先の交換もしていなかった模様。」
えー…。身分違いの恋どこいった?
現実なんてそんなものなのか。
「そして、翌年女児を母君は出産。
その際、直接母君は男爵の邸宅に足を運び、養育費の請求を行っています。」
うわー。
なんと言えばいいのか…
「男爵は心当たりも時期も合う為、口止めの意味合いを含めて金を渡しています。
以降、母君は働くことなくそのお金で生活していきます。」
おおう…。
私は言葉もない。
「そして、昨年母君病没。一人になったアリス様は男爵を頼り現在に至るわけです。」
身分違いの恋なんて碌なもんじゃないというか、そもそも恋心なんてどちらもなかったのか。
アリスだけが両親は愛し合っていたという夢を見ている状態である。
それを滑稽というか哀れというか。
迷うところだ。
「なお、男爵からの養育費は最低限であり親子揃って生活には困窮していた模様。
その為、生活にお金をかけるという感覚がアリス様には欠落しています。
贅沢をしたいという克己心も彼女には無いようです。
それは彼女の長所とも言えますし、短所ともいえましょう。
王妃となられた時にどのように作用するかは私どもも測りかねております。」
私が彼女と同じ出自なら絶対一攫千金狙う。
いつか絹の服を、食べ物をテーブルいっぱいに並べてやる、そう思いながら生きていくし、男爵の子供として生きることが可能だとなればこれで人生大逆転と大喜びしたと思う。
しかし、彼女は違う。
平民だった時からあるものだけで生き、人より持っているものが少ないと不満も抱かず、貴族となっても変わらずにいる。
貴族社会において彼女は異質であるが、故に殿下の目にとまる。
彼女は意識して殿下と恋仲になったのではなく、なるべくしてなったのだろう。
ただ、惜しいことに彼女は頑固だ。
貴族には貴族の生き方があるのにそれに合わせず周りを変えようとする。
貴族の生き方が平民と違うのには理由があるのだが、そこを理解していないし、理解しようともしない。
貴族の生き方そのものが彼女には悪に映っており、私などは恋のライバルであるという事も含めてまさしく悪の権化に見えているのだろう。
現実主義者の私と理想主義のアリス。
私と彼女はまさしく真逆であり相入れぬ存在なのだ。
「そして現在ですが、王妃教育を初めて間もないですが、決してさぼることなく真面目に取り組んでおります。」
おー!
それは偉い!
「礼儀作法は間近に迫る舞踏会を想定したものを学習しております。
通常の舞踏会でしたらなんら問題なく対応出来る作法は身につけさせましたし、機転の利かせ方もある程度は出来るようになりました。」
正直想定以上だ。
テレサ様は世辞は言わない。
事実のみを淡々と述べる…いや、どちらかと言えば辛口評価者だ。
それが舞踏会のみとはいえここまで言わせた。
中々出来ることじゃない。
これなら舞踏会は安心か。
「そして、学問の方ですが、こちらも舞踏会での会話を念頭に置いて各貴族の家族、歴史、領地の場所、特産品に絞って進めているようです。」
絞ってと言ったが驚くほどその範囲は広い。
今回の舞踏会には通常より多くの貴族がやってくる。
それら全ての貴族の家族構成に歴史、領地に関する情報ともなれば頭がパンクする程の量となる。
「カイル曰く必要量の半分は覚えたようです。」
それでもこの短期間で半分覚えたか!
やっつけ仕事の暗記でも半分覚えたら上出来だ!
オリハルコンを採りに行く直前殿下達とばったり出くわしたが、その時に私などすぐにぬかしてやると殿下は言っていた。
その時は鼻で笑ったが、案外事実かもしれない。
優秀な王妃が王に愛され王家を繁栄させる。
素晴らしい事ではないか!
「カイルは不満なようですよ。」
「カイル様は完璧主義者ですからね。」
「ええ、まあカイルの言葉は置いておくにしても、アリス様は問題なく王妃としての資質を兼ね備えた立派なレディです。
今はまだ人知れず野原の片隅で芽吹いている蕾でしかありませんが、手入れを続ければ大輪の花を咲かせることでしょう。」
「それは素晴らしい。では私がその花を花壇に植え替えて手入れをしていきましょう。」
ワトソン伯爵が言う。
「そろそろアリス様が来る頃合いです。
早速伯爵を紹介致しましょう。」
「では、アリス様に出くわさないよう、私はこのまま退散致します。」
私は席を立った。
そして、ふと思い出し駄目元でテレサ様に聞いてみる。
「ところで、舞踏会の招待状ですが一通融通とかききませんよね?」
「招待状ですか?申し訳ありませんが、私にはそのような権限はございませんが、どなたかお呼びしたい方がいらっしゃるのですか?」
「ええ…まぁ」
呼びたいわけじゃないのだけど、呼ぶことになった人がいる。
「王家主催の舞踏会ですからね、そう簡単には招待状など手に入りませんよ。」
「そうですよね…」
「最も使用人ともなれば話は別のようですが。」
「使用人?」
「はい、今回の舞踏会では多くの人出が予想されます。
その為裏方の人間を募集しているようですよ。」
「裏方ってどのようなことをなさるのですか?」
「給仕係と料理人、雑用係を募集しているようですよ。
舞踏会に呼ばれていない下級貴族はこぞって応募しているとか。」
「そうなの…」
そんなことが行われていたのか、全く知らなかった。
でも、ルナ嬢は舞踏会に行きたいと言っていただけであり踊りたいとか貴族の令息とお近づきになりたいとかは一言も言ってなかった。
なら、これでいいんじゃないか?
「もし、これに応募した人を必ず合格させることはできますか?」
「あまり多くの人数は無理ですよ?」
「入れたいのは一人です。」
「それくらいでしたら、人事担当者に頼み込めばなんとかなると思います。」
「でしたら一人お願いしますわ。」
「おまかせください」
色よい返事を貰い私は満足して家路に着いたのだった。




