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旧交を温める人は置いておき、いざ鉱山へ!

私は改めてスチュワートに絡みつく二人の女性を見る。

右腕に絡みつく女性。

桃色のふわふわの髪に青い瞳。

白のイブニングドレスを着ていて空いている手には白銀の杖を持っている。

左腕に絡みつく女性。

右腕に絡みつく女性と同じ桃色の髪を短く切っていて青い瞳は私を舐めるように見ていた。

私は右腕の女性より左腕の女性にどうしても注目してしまった。

私はドレスには詳しいが防具は専門外である。

だからどんな防具が優れているのかとかは全然わからない。

だが、そんな私でもそれは絶対やめとけと断言出来る防具を彼女は身につけていた。

えーっと…確か名前を…

「…ビキニアーマー…着てる人初めて見たわ…」

ロバートの声にはっとする。

そう、それだ!ビキニアーマーだ!!!

彼女はビキニアーマーを身につけていたのだ。

ビキニアーマーは素肌に直接身につける露出過多の鎧だ。

つまり、ビキニアーマーは身につける事で逆に防御力が下がるという防具の存在意義を放棄した防具なわけで…。

多分製作者は洒落で作ったんだと思う。

それを平気で着こなしているのだから目が釘付けになっても文句は言わないで貰いたい。

腰には普通に剣が吊るされているがこの人娼婦じゃなくて剣士なのか…?

露出狂の痴女にしか見えない。

スチュワート、貴方のプライベートには口を出したくないけれど、もう少し色々選んだ方がいいと思う…。

「あの…彼女達は…」

スチュワートが紹介するより早く右腕の女性がスチュワートにくねっと絡みついて妖艶で挑発的な目を私に向けた。

「私はマリーよ。彼とは…うふふ、いい仲なの。」

「何を馬鹿な事を!」

すぐさまスチュワートが否定する。

しかし、それを無視してビキニアーマーの女性がスチュワートに体をこすりつけてふっと耳に息を吹きかける。

ばっとそっちを振り向いたスチュワートを見て笑い、漸くこちらを勝ち誇ったような目で見る。

「俺はエリーだ。」

俺?

「俺女…色々濃い女だな….」

ロバートがまたもや呟く。

俺女とはよく言ったものだ。

「あの…私はどのように紹介したら…?」

何を言ってるんだこいつは?と思ったが考えてみれば変身魔法を使っていない今の私は単なるご令嬢そのもの。

リズとして紹介するかリナリーバーとして紹介するのか迷ったのだろう。

「普通に紹介なさい。」

「はい。」

「やだぁ、なんでそんな無表情??」

「もっと笑顔笑顔ー☆」

二人の女性がスチュワートの顔をツンツンする。

無表情なのが通常なんです!それでいいんです!

何も知らないでスチュワートの顔をツンツンすんな!

スチュワートはそんな女性二人を無視して私の紹介を始める。

「マリエリお静かに。」

マリエリ!?

二人纏めてそう呼ぶの!?

そんなにこの一晩で仲良く!?

スチュワート、貴方何気にコミュニケーション能力が高いわね!

それとも女性限定!?もしそうなら幻滅だ!

「こちらリナリーバー・ミハルバー様。

我が王国最古の公爵家ご令嬢にして現在次期国王たるランバルト王太子殿下の正当なる婚約者様にあたります。」

時間が止まった。

ロバートは食べていたソーセージをほろりと床に落とし、テオは口を半開きにしている。

右腕の女性…マリーは目を見開いたし、左腕のビキニアーマー…エリーは嘘だろ…?と呟いたきり何もできないでいる。

「いや…男爵蹴散らしたあたりで大物貴族様だろうとは思ってた。

だけど、まさか次期王妃様とは…」

「リズって名乗っていたのはお忍びだから…?

と、いうか、次期王妃様が強すぎる件をどう処理すれば…」

「申し訳ありません。我々には我々の事情がありました。

因みに私はスチュワートと申します。

改めてよろしくお願い申し上げます。」

「は、はあ…」

ロバートはなんとか声を出すがテオは脳味噌が完全に動きを止めてしまったようで微動だにしない。

「まあ、落ち着いて。色々あって今は婚約破棄に動いているから。」

「は?」

「破棄!?」

マリエリが同時に口を開く。

「それって…」

ちらっとマリエリとロバートとテオはスチュワートを見る。

「殿下に想い人が出来たので私は奴を捨てるのです。」

『あー…』

四人は何故かはもってスチュワートを哀れんだ目で見る。

「それより貴方方の関係が気になりますわね?

恋人…ではないでしょうし、一夜の関係…にしては随分と仲良さそうですし…?」

「うふふ、気になる??」

マリーがスチュワートに擦り寄る。

「お嬢様にはわからないふかぁぁい仲なのよ、俺達は!!」

エリーがスチュワートにしなだれかかる。

…が、ここでスチュワートが二人を振りほどいた。

「お嬢様、今、何を仰いました?」

「え?恋人?」

「その後です。」

「一夜の関係?」

その言葉にロバート達をスチュワートは見る。

「お二方、お嬢様に何を吹き込まれたのですか?」

「な、何って…」

口ごもるロバート。

テオはふるふると震えている。

「お嬢様のような純真無垢なお方がい、一夜の関係など破廉恥な事を口にする訳がないのです。

貴方方がよからぬ事を吹き込んだのでしょう?」

バンっとテーブルを叩いて二人を詰め寄る。

ロバートが救いを求めて私を見た。

「スチュワート、落ち着きなさい。」

「は。申し訳ありません、私とした事が取り乱しました。」

スチュワートが謝罪する。

「彼らは男の人は適宜朝帰りをするものだと教えてくれただけです。」

「貴様ら死ぬか?」

懐からぬらりとナイフを引き抜くスチュワート。

『ひいっ!』

兄弟仲良くひっつき命乞いをはじめる。

その様子を見てマリエリは体をくの字に曲げて笑う。

「やだ、スチュワート!!笑わせないで…!」

「おかし…お前…俺達と別れてから何やってればそんな面白い人間になれるの!?」

…?

「別れてから….?」

はてと首を傾げる。

「お嬢様、私と彼女達はそのような淫らな関係ではありませんし、他の男性と違い私は愛しい方としか体を重ねたいとは思いません。」

ヒューとロバートが口笛を吹き、スチュワートに睨まれる。

「酷い!あれから私達成長したのよ?

…色々…ね?欲しくなるでしょ??」

「なりませんし、つきまとわないで頂きたいのですが?」

「旧交を温めてるだけなのに冷てぇなぁ。」

「旧交?」

「お嬢様、知らなくて結構ですから…」

「私達三人は昔冒険者パーティを組んでいたのよ?」

髪をふぁさーりとかき上げながらマリーが言う。

…

冒険者パーティ!?

私は三人を見る。

スチュワート、冒険者時代いつもこの二人を腕に絡めて歩いていたのかなぁ…?

言い知れぬ不安が胸を過ぎる。

「両手に花…。絵に描いたようなハーレムパーティだったんだな…」

「ハーレム?」

「一人の男に女が複数のパーティをそう呼ぶんだよ。」

「へぇ…」

なんと言えばいいのか困り相槌を打ちごまかす。

「お嬢様には刺激が強すぎたかしらぁ?」

「なあ、俺達はお前ならいつでもオッケーなんだぜ?」

「折角の再会なんですもの…寧ろ体で旧交を温めましょう?」

くねくねとスチュワートにまとわりつくマリエリ。

その二人をあしらうスチュワート。

が、その態度大いに不満である。

…もっと強く出ればいいんじゃない?

それをしないってことは満更でもないとな?

まあ、かたや妖艶な美女、かたや露出過多な痴女。

なーーにが、想い人以外とは体を重ねない、よ?

鼻の下を伸ばして馬鹿じゃないだろうか。

「…スチュワート?遠慮しなくてもいいのよ?」

気づけば口が動いていた。

「は?お嬢様?」

「どうぞ、三人仲良くお過ごしになっては?

私は私で勝手に鉱山に行きます!」

バンと足をふみ鳴らす。

「は?お嬢様、何を…」

「ロバート!」

「はい!?」

まさかここで名前を呼ばれるとは思わなかったのか素っ頓狂な声があがる。

「行くわよ!」

「行くってどこへ!?」

「鉱山よ!さっき道案内するって言ったじゃない!」

「いや言ったけど…」

「来ないの?来ないなら後ろ盾の件は反古にするわよ!?」

「うわっ!汚っ!」

ロバートは席を立つ。

「どうぞ、ごゆっくり?」

私とロバートは三人の横を通り過ぎる。

「え?お嬢様…!?」

『スチュワート!』

追いかけようとするスチュワートをマリエリがサンドイッチのように前から後ろから抱きついて邪魔をする。

だから!

そんなの本気になれば幾らでも振りほどけるでしょうが!!

それをしない時点でその気ありとみなすわ!

ふんと鼻息荒く私はロバートを伴い宿屋の外に出たのだった。



「おい!嬢ちゃん!」

追いかけてきたロバートが声をかけてくる。

「嫉妬はちょっと焼くくらいが可愛いのであって焼きすぎると怖い…」

「あ?」

「なんでもありません、ごめんなさい」

私の睨みにロバートは頭を下げる。

誰が嫉妬ぉぉ?なんでぇえ??

私は心底三人が旧交とやらを温めることが出来たらいいなって思って置いてきたのであって、別に見ててイラつくって訳じゃないし??

大体私にはやるべきことがあるのだ!

同窓会なんぞに気を取られている暇はない!

「あんな三人の事はほっといて私達だけで鉱山に行くわよ!」

「はあ!?冗談だろ!?死ぬっ!」

「貴方私を誰だと思ってるの!?公爵令嬢にして魔法使いたる私がそう簡単に死ぬ訳ないでしょ!?」

「確かにあんたは殺しても死ななさそうだが、俺が死ぬんだよ!」

「あんたも殺しても死なないタイプよ!」

「そんなことねぇよ!」

「文句があるなら後ろ盾の話…」

「わかったよ!行けばいいんだろ!?行けば!」

そうそう、スチュワートなんざほっといてさっさと行くのだ。

で、あいつが楽しんでるあいだに全て終わらして役立たずの烙印を押してやるのだぁぁ!!!

「で?これからどうすんだよ?」

「んと…まずは買物をするって言ってたわね?」

「ああ、必要な物を買うわけか。なら市場に行かないとな。」

「何が必要なのかわからないんだけど?」

「食い物、水は必須。あとはカンテラ、羅針盤、それに上着も必要だな。」

「成る程。じゃあ早速買物に行くわよ!」

私はロバートを伴い市場へと向かった。


市場は丁度開いたところらしく所狭しと商品が並べられており、また買い物客も多く大変賑わっていた。

「おい、金はあんのか?」

「当たり前でしょ?」

私はポケットから小さな皮袋を出してロバートに放り投げる。

片手で簡単に受け取ると彼は中を改めて…。

「おおう、金貨がみっちり。金はあんたが握ってたのか?」

「旅先での活動資金はスチュワートが管理保管しているわ。

これはお父様が別枠で私にくれたお小遣いよ。」

「…子供にやりすぎだろ…?」

「そう?ちょっといいドレスを買ったらふっとぶ程度のお金だからしみったれてるなぁって思ったのだけど?」

「貴族様の金銭感覚は理解不能だ!」

ロバートが叫ぶ。

「そんなことより、それで足りる?」

「充分すぎるわ!」

「じゃあ買いましょう!買物に関しては貴方に一任するわ。」

「へーへー」

ロバートは肩をすくめてやる気のない返事をしたのだった。

「まずは鞄だな。」

「鞄?」

「これから大荷物になるんだ。鞄がなきゃダメだろ。」

成る程!基本中の基本か!

私達は鞄屋に足を踏み入れる。

貴族御用達のような高級な鞄は鞄屋の癖にない。

あるのは機能性のみに特化した皮鞄のみ。

私は店内をぐるりと見て回るが心踊るような素敵な鞄はひとつもなかった。

だが、ロバートはあれもこれもと見比べながら物色している。

結局二枚の大小の鞄を購入した。

ロバートは小さい方を私に渡してくるが、現在の令嬢ワンピースには不釣り合いすぎて泣ける。

「そういや、そのワンピースって言うのか?

それで鉱山に行く気か?」

「ダメ?」

「寒いぞ?」

「そうなの?」

「ああ、それに靴。ヒールはやべぇ。さすがに、怪我すんぞ。」

「そうなのか….」

ならば、服も購入するか。

「上着も購入しなくちゃならねぇし、ついでだ買いな!」

「了解。見立ては宜しく。」

「まて!女の服なんてわかんねぇぞ!?

センスもからっきしな俺にそこまで全権委任しないでくれ!」

「私だって服に興味ないから何買えばいいのかわからないもん!」

「あんた、俺がいなかったらどうする気だったんだ?」

「どうするって…」

スチュワートが全部やってくれた。

機能性デザイン性全てを兼ね備えた物をどこからともなく用意してくれただろう。

….が、そんな彼は今旧交を温めるのに大変忙しいのだ。

頼るわけにはいかない!

奴がいなくてもぜーんぜん平気だということを証明してやるのだ!

「…店の人に見立てて貰ったかな?」

「ならそうしてくれ!」

ロバートの悲鳴があがった。

服屋に入り店員を呼び止めハイキングするのに相応しい格好をあつらえてもらう。

馬鹿正直に鉱山行くと言えば現在は犯罪者に類する存在と思われかねないというロバートのアドバイスに従った結果の嘘だった。

まあ、山に行くのは間違いではないので全てが嘘という訳ではないが。

店員の見立てで私は丈夫な綿生地の長ズボンに長袖シャツ、皮のブーツという動きやすい格好へと変わった。

店員さんが髪を結わいた方がいいですよというので皮紐を購入してポニーテールにする。

「おー、そういう格好しているとお嬢様には見えないな。」

「でしょ?」

言いながらロバートは上着を購入しようと店員に商品を手渡す。

「あ、私にはローブがあるから上着はいらないわ。」

「そうか?」

ロバートは私の分にあたる上着を棚に戻した。

私が着てきた服は邪魔なので売り飛ばす。

銀貨二枚になったのでズボンのポケットにしまう。

「すげぇ、中古の服が銀貨二枚って…」

「高いの?安いの?」

「高いわっ!」

「ふーん?よくわからないわぁ。」

「さらっと高級品着てる貴族様の感覚が俺にはわからねぇよ。」

言いながら私達は市場を進む。

「カンテラは二つ、鞄に括りつけられる金具も二つ。燃料は少なめ。」

「少なくていいの?」

「後半役に立たないから。」

「…役に立たない?」

「ああ、こんな小さな明かり前半しか使えねぇよ。」

「じゃあ後半は?」

「感覚が研ぎ澄まされ、その場に自分が適応するのを待つしかねぇな。」

「正気?」

「そうやって皆やってるんだよ。」

ロバートはぶっきらぼうに答える。

モンスターがいる鉱山内でカンテラの明かりが役に立たない程の暗闇。

それだけで生存率が低いとわかる。

「あと、羅針盤ひとつあれば充分だな。」

カンテラと一緒に買い込んでいく。

「最後に水と食いもん。」

「どういうものを買うの?」

「干し肉、乾燥きのこ、保存パン、缶詰。

ジャムに蜂蜜、チョコバー。あと、冷え対策で生姜と蒸留酒も持ってく。

生姜はあった方がいいぞ。強制労働者にはカンテラと最低限の食いもんしか支給されねぇから、本気で体が冷えてそれで死ぬかと思ったわ。」

「へぇ。」

「あと、水。水は嵩張るから可能ならマジックアイテムで代用したいんだがいいか?」

「そんなものがあるの?」

「あんた魔法使いなのになんでしらねぇんだよ。

魔法屋で見かけたことねぇか?見た目は小さな水筒なのに水が尽きないで出てくる奴。」

「んー?知らないなぁ。」

何せ魔法屋には一度しか行ったことがないのだ。

「ああそうかい。それがひとつあれば飲み水としては充分だろ。」

「そうね。」

「金はまぁ足りるだろうよ。」

そんな訳で私達は魔法屋で魔法の水筒を買い見た目的に私が腰から下げた方がいいということになり身につける。

食べ物もロバートが値切りながら購入。

食べ物を鞄にいれた途端パンパンになった。

「これだけ買ってどれくらい持つ?」

「二人なら一週間節約してギリ持つかって感じだな。」

こんなに重たいのにそれしか持たないのか。

「まあ、準備は整ったし、鉱山行くか?」

「そうね、あ、ローブ取ってこなくちゃいけないからまずは宿屋に戻りましょう。」

「いいけど、スチュワートとその女二人と出くわすかもだぜ?」

「あれはスチュワートの女じゃない。」

「…おう。」

何か言いたげだが睨んだら口を閉ざした。

「宿屋には転移魔法でいくから出くわさないわ。」

「お!転移魔法使えんのか!それならギリギリまでオリハルコン探索が可能だな。」

「任せなさい!」

言って私はロバートの手をとり転移魔法を発動させて宿屋の自室に戻る。

ベットの上には洗濯済みの白ローブ。

どうやらやるべきことはきちんとやってくれたようである。

色ボケしてなくて何より。

私はローブを羽織るとすぐさまロバートの手をとり再度転移魔法を発動。

最初の場所に戻る。

「さあ、行きましょう。」

「….だな。」

ロバートは頷いて鉱山へと向かったのだった。




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