大会終了後の朝
「とりあえず、到着したぁぁ!」
私は宿屋の一室のベッドに倒れこんだ。
「うわぁ!久しぶりのベッドぉぉ!」
ごろんごろんと寝返りを打つ。
毎日ベッドで寝る事の素晴らしさを痛感する数日であった。
男爵を追い払った後行われたのは優勝者であるカランチームとの宴であった。
ボギーチームも加わっての宴であったので私にはかなり騒がしいものであった。
しかしスチュワート曰く人数が少ないからこれでも静かとの事。
宴と聞けば貴族の晩餐会が真っ先に浮かぶ私にとってそれは衝撃であった。
貴族の晩餐会は皆整然と席に着きフルコースを戴く。
その間に語られる話は政治、経済、経営、流行、芸術、個人的趣味まで幅広い。
腹を割って話すもよし、探りをいれるもよし、それは個人の付き合い方次第でもある。
ただ、礼儀作法の世界である貴族の晩餐会は優雅そのもの。
馬鹿笑いはしないし、食べ方も美しい。酒に飲まれる事もない。
それに対して今日の宴。
物語に出てくる山賊の宴かと思った。
皆、酒瓶片手にガハハと笑い興に乗って歌い出す。
食べ物はあれもこれもと注文した挙句食い散らかしていくが野菜は食べない。
まだたくさんあるのに一切れの肉を争い喧嘩までする始末。
かと思えばいつの間にか肩を組んで踊っていたりするのだから理解不能である。
テオは酒を煽って早々に寝込み、ロバートは給仕係のお姉さんの尻を触ってぶん殴られていた。
それを尻目に私は皆より早く宿屋に行き現在に至る訳だ。
付き合ってられるか、あんなの。
常識的貴族を地でいく私には少々きつい。
「失礼します」
そこにスチュワートが入室してきた。
「宿屋の質は問題ないでしょうか?」
「問題ないわ。」
森での野宿、ゴンドラでの睡眠に比べればここは天国だ。
ここは貴族御用達宿屋『金の鈴亭』
貴族専用という訳ではないが、ある程度金払いのよい者しか受け入れない代わりに高品質のサービスを提供してくれる。
この一室も自宅の一室より広い。
お風呂もあるし、これで文句を言ったら絶対バチが当たる。
「それはよかった。それでは本日はこのままお休みになられ、明日は必要な物を買い揃えた後、鉱山へオリハルコン採取と参りましょう。」
さらっと言われて今更ながら思い出す。
そうだ、それが目的だった。
あまりに過酷な旅路だったのですっかり忘れていた。
今迄の旅路は全て前座であって目玉はこれからだということを。
危うく一生旅人として暮らすところだったわ。
「そうね…明日は何時に起きればいいの?」
「早朝八時に起きて朝食、その後外出準備をなさり十時には宿屋を出ます。」
「わかったわ。」
「それではお嬢様ごゆっくりお休みください。」
深々とスチュワートは頭を下げて部屋から出ていく。
彼は階下の階級の低い部屋に泊まっている。
なんでも使用人用の部屋が用意されているとの事。
主人用の部屋をとらないと泊まれないらしい。
高級宿屋といった感じである。
私は今夜は久しぶりにお風呂を堪能しゆっくりと眠りについたのだった。
翌朝八時。
私はきちんと起きて服を着替えて部屋を出る。
スチュワートが迎えにくるかと思っていたがこなかったので一人で宿屋の食堂に向かう。
高級レストランのような場所で昨日のような雑然とした喧騒とは無縁であった。
「おはようございます。こちら、朝食用のメニューでございます。」
一瞬スチュワートかと思ったが全くの別人がメニューを持ってきた。
従業員のようである。
私は受け取り朝食を注文する。
スチュワートはこないのだろうか?
ここは主人用なのかもしれない。
使用人用の食堂が別にありそこで食事をとっているのかもしれない。
まあ、あまり気にせず朝食をとる。
パンは白くふかふかで卵の焼き加減は絶妙、ソーセージは熱々でベーコンはカリカリ。
果物と野菜は新鮮で食べ応え抜群。
果汁は甘くて美味しい。
満足度の高い食事であった。
だが、世の中想定外というものは常につきまとう。
不意に外が騒がしくなった。
私の耳が捉えることがなんとか出来る程度に距離は離れているが明らかになんらかのトラブルである。
私は一人での食事、周りは静かというのもありついつい意識して聞き耳をたてた。
『だーかーらー、ここに知り合いがいるっていってんだろう?』
『申し訳ありません。当店では紹介状がないと外部からの方とのお取り次ぎは出来かねます。』
『そんなんしなくても、勝手に探すって言ってるだろー!?』
『当宿では身嗜みに一定の規則がございます。
申し訳ありませんが、旦那様では内部にいらっしゃる方が外に出ていらっしゃるのをお待ち頂くのが最良かと…』
…
やめときゃよかった。
私は聞き耳をたてた事を後悔した。
しかし、聞いてしまったからには無視は出来ない。
宿屋に迷惑がかかるのを良しとは出来ないからだ。
スチュワートがここにいれば彼を送りだすのだが生憎いないのだから仕方ない。
私は中座して声の方へと向かう。
そこは宿屋の門前。
文字通り門前払いを受けている二人の男がいた。
一人は義足で野盗の親分ヅラしたロバートでもう一人はふるふる震えている小動物ことテオだ。
「あのー…」
私はそっと声をかける。
「これは失礼しました。」
宿屋の従業員が謝罪する。
「すぐに道を開けますので…。」
「あー…大変言いづらいのだけど、知り合いなのよね…。」
「は?」
宿屋の従業員は固まる。
まさか本当に内部に知り合いがいるなど思いもよらなかったのだろう。
「ほら!言った通りだろ!!」
「兄さん…。偶々会えたからよかっただけで…
運がよかっただけだよ…。
騒がしくしてしまったのだからきちんと謝らないと…。」
「あー?めんどくせー!なあ、俺達飯まだなんだよ!
なんか食わせてー!」
言われて私の席に案内…していいのかと思い従業員を見る。
従業員は客である私に失礼をしてしまったのかと青ざめていた。
「ねぇ、ここって使用人用の食堂とかってある?」
「いえ、申し訳ありませんがそのような設備はご用意しておりません。」
「そうなの?」
意外な回答に目を丸くする。
ではスチュワートは何処へ?
…普通に考えて外に食べに行ったか?
でも、仮にそうだとしても一言くらいありそうだが…?
「なーなーめしー!」
「兄さん…」
ぐるるる…
欠食児童のようなロバートの求めとテオの腹の虫の催促に思考を一時中断する。
「私との相席は?」
「構いませんが…」
「何か問題があれば私に言ってくださって構いません。」
「それでしたら、ご案内致します。」
明らかにならず者な二人を宿屋内部にいれるのは他の客からの苦情が懸念されたが、それに関しては私が引き受けると言った為ロバートとテオは通されて私との相席で食事をとる。
テオはメニューを見て一番安いのを選ぶがロバートは一番高いのを数人前注文した。
そんなに食べるのか?
注文を終えて改めて彼らと向き合う。
「で?わざわざ来たのって気球の件よね?」
「そうだ、今回は大会での優勝ができなかったがカランの奴らはいい奴だった。
俺の夢を聞いて協力を申し出てくれた。」
「それはよかったわね。」
「それだけじゃねぇ、ボギーの奴らも一枚噛むことになった。」
「随分と大ごとになってきたわね?」
「だろ?だが、規模がでかくなるとそれぞれの持つスポンサーだけじゃ足りなくなってきた。」
「えっと、ボギーチームのスポンサーは男爵だったわね。カランチームは?」
「彼奴らはノース地方都市の市長がスポンサーだった。
優勝した暁にはノース地方の永住権を所望するつもりだったらしい。」
「へえ?ボギーチームは?」
「奴らは優勝したらその名誉として勲章が欲しかったと。」
「随分つまらないものを欲するのねぇ。」
大会優勝後、スポンサーに願うものは人それぞれということか。
「だが、俺の夢に乗るってなると話は別。
市長程度じゃ金も権限もねぇし、男爵の協力は見込めねぇ。」
「でしょうねぇ」
男爵の昨日の無様な敗走を思い出す。
私が脅せばいくらでも協力するかもしれないが、そういつまでも関わってはいられない。
「で、ここからが本題なんだけどさ。」
ここで彼らの朝食が運ばれてくる。
「スポンサーとして協力しろって話かしら?」
私は果汁を飲みながら問う。
もう、それしか話はありえないだろう。
「う、まさにそれなんだ。」
頭を搔き搔きしながらロバートは言う。
「なあ!頼むよ!!今回、仲間が出来て夢が叶いそうなんだ!
金だ権力だで諦めたくねぇんだよ!!」
ロバートがテーブルに頭を擦り付けて懇願してくる。
なんで彼らはこんな勘違いをしているのだろう?
不思議に思って彼らを見る。
テオもロバートに倣って頭を下げる。
「兄さんの夢なんです。どうかお願いします。」
「…ってか、テオは単なるおつきあい?」
「えっとその…」
テオはもじもじして顔を赤らめる。
あの気球内にいて強制的に打ち解けたと思ったが気球から降りたらこの通りか。
「テオは地上じゃ生きにくいんだ。」
ロバートは言う。
「本来のテオはもっと堂々としていて自由奔放な奴なんだ。
そして気球を操らせたらピカイチの天才でもある。
こいつは地上で生かしておいたら燻っちまう。
俺とは違って天職ってものが存在する貴重な奴なんだ。
俺はほら暴力的だし?女にも金にもだらしないクズだけど弟の生きる手助けくらいはしてやりてぇ。
俺の夢は弟の手助けをして気球で世界を周ることなんだ。
幸い俺は荒事には慣れてるし、風をよむのも得意だ。
こいつを助けて世界をまわって人生費やすだけの力もある。
無いのは金と権力だけ。
なあ?俺に出来ることならなんでもするから、テオを助けてやってくれねぇか?」
「僕からもお願いします。兄さんは僕に付き合うという形をとっていますが、本当は僕以上に世界を見て見たい人なんです。
兄さんが生きるには一つの国では狭いんです。
僕には幸い気球という兄さんの手助けが出来る道具があります。
これを使って兄さんに広い世界を見せてあげたいんです。
僕は兄さんと違って荒事は全くダメです。
地上じゃ何一つ満足に出来ない厄介者です。
そんな僕ですが、兄さんの為に何か出来るならなんでもやります。
だから、兄さんを広い世界へ連れて行く手助けをしてください。」
麗しき兄弟愛。
私にも兄がいるが彼は私の為に何もしないだろう。
何故なら私が彼の為に何もしないから。
私は息を吐いた。
「貴方方先程から何か勘違いしてませんこと?」
食後の紅茶を飲みながら言う。
二人は頭を下げた状態で微動だにしない。
「私が最初に出した条件覚えていらっしゃる?」
ちゃんと覚えていればこんなことしないだろう。
「貴方方は私達をワトソン領地へ一日で連れて行く。
それが出来たら貴方方のスポンサーとして夢とやらを叶える後ろ盾となる。
……………………覚えていらして?」
「…勿論だ。」
「なら何故頭を下げるのかしら?」
二人は私の問いに無言だ。
もしかしたらこの条件を理解していないのではないだろうか。
「この条件に『優勝』は含まれてませんのよ?」
さすが兄弟同時に顔をあげた。
「貴方方は一秒とて遅れる事なく一日で私達をワトソン領地へ連れて行ってくれた。
ならば、約束を守り貴方方の後ろ盾として家名を貸しましょう。」
「本当か!?」
「勿論、私は嘘はつきません。」
「うわぁぁ!よかったぁあ!」
「兄さんぁぁん!」
二人は抱き合い喜びあう。
夢とやらに一歩近づいたのがそんなに嬉しいのか。
夢などない私にはよくわからない。
「貴方方を世界に送るにあたり準備は必要。
その準備は王都で行いたいのですが….」
「それは問題ない!どこでも俺達はいく!」
「それは当然です。問題は私達はここで用事があるということ。
それが終わるまでは貴方方は足止めです。」
「用事ってなんだ?いつまで足止めになる?」
「ちょっと鉱山でオリハルコンを採取するんです。因みに期間は一週間。」
「…待って!」
以外にもテオが声をだす。
「鉱山って….もしかして、あの鉱山?」
テオが窓の外を指差した。
その先には大きな山がひとつ。
「オリハルコンがかつて取れた鉱山ならその山で間違いないわ。」
私の言葉にテオとロバートは顔を見合わせる。
「そこって兄さんが男爵殴って送還された鉱山なんだけど…」
…
まじか。
あれ?確かロバートの怪我ってさぁ。
「鉱山でやったって言ったの覚えてるか?」
ああ、勘違いじゃなかった。
「覚えているわ。」
「元々あの鉱山はオリハルコンが採れて数多の冒険者の一攫千金を狙う夢の山だった。
しかし、掘り尽くされて今じゃオリハルコンどころか金属らしいものは何ひとつとして出ない。
だがなぁ、いつだったかどこぞの冒険者パーティが未発掘の領域を発見した。」
「それは知ってる。」
そこに数多の冒険者が送られているはずだ。
「そこに行った冒険者の帰還率はかなり低い。
そこで冒険者ギルドは安易に冒険者パーティを送り込む事を禁じた。」
まあ、なかなか帰ってこないのではそうなるわな。
「だが、ワトソン伯爵は諦めない。
そこで俺のような犯罪者の出番だ。
犯罪者には俺みたいに荒事に長けた奴が多い。
後ろ盾となるギルドもいなく死んでも問題ない人足として『強制労働』という刑執行の名の下送り込まれた。」
あまり褒められた事ではないが、得てして犯罪者とは捨て駒として使われる運命にある。
「そこで俺は九死に一生を得て腕と足を引き換えにして刑期を短縮し、現在に至るわけだ。」
「…一体、何があればそんな大怪我するわけ?」
当然の疑問を口にする。
「モンスターに決まってるだろ?」
「話には聞いてた。何がいるの?」
「わからない。」
わからない?襲われたのに?
「俺の知らないモンスターだ。俺の知る限り山に出るモンスターにあんなのはいない。」
「….どんなモンスターなの?」
「人間の女にしか見えなかった。」
…?
「何それ?事実人間なんじゃないの?」
「未発掘領域は鉱山の地下だ。かなり深く太陽の光も空気もろくにない環境で生きてられる人間の女がいるか?」
…普通に考えればあり得ない。
と、なるとそれはモンスターの可能性が高いわけだが…
「それ以外にはいないの?」
「鉱山の地下に足を踏み入れた途端妖精がいた。」
「妖精?」
「ああ、俺が出会ったのは大地の妖精とコボルトだ。」
「…コボルトって妖精だっけ?」
「見た目はアレだが妖精の仲間だぞ?」
そうだっけ?教科書を今度見直しておこう。
「つまり、鉱山には最低二種類の妖精と謎の女性型モンスターがいるわけね。」
「ああ、俺はその女型モンスターとの戦闘時に下手打ってこうなっちまった。」
「よく助かったわね。」
「運がよかったんだろ。」
「そうなの…。」
私の経験は浅い。
あまり荒事に長けてるわけではない。
果たして私が鉱山に入って無事に済むのだろうか。
スチュワートに迷惑をかけて終わるのではないだろうか。
下手に迷惑をかけるならばスチュワート一人に行って貰うべきか?
しかし、私の物を採って貰うのに他人に行けというのはなんだか変だ。
それにスチュワートだって万能ではない。
もしかしたら私がいた方が手助けになるかもしれないのだ…。
「道案内くらいならしてもいいぞ?」
ロバートが意外な申し出をしてくる。
「え?」
「鉱山はかなり入り組んでいて地下への道筋を見つけるのも中々に骨が折れる。
俺はオリハルコンがあるのではと言われていた場所に一番近づいた男だ。
…モンスターにさえやられてなけりゃオリハルコンを手にしていたかもしれねぇ。
そんな俺の道案内があるのとないのとでは攻略の難易度が違ってくるぜ?」
確かに…!
私達にはあっちかな、こっちかな?と道に迷っている時間はないのだ。
「それは最短順路を踏破出来るということ?」
「ああ、任せろ」
「これで死んでも責任はとらないわよ?」
「コボルトくらい二体までなら今の俺でも倒せる。
だが、大地の妖精は無理だし女型のモンスターに至っては見つけ次第隠れる。
それでもいいか?」
「死ななきゃいいんじゃない?」
私は肩をすくめる。
「よし、じゃあ任せてくれ!」
「僕は大人しく留守番してます。」
「誰もお前にゃ期待してねぇ。」
「うっ…」
テオの目に涙が浮かぶ。
だが別に本気泣きしている訳じゃないのでほっておく。
「ところであんたのお目付役はどこに行ったんだ?」
「それが朝から行方不明なのよ。何処に行ったのかしら…?」
「あー…」
ロバートとテオが目を合わせてさっとそっぽを向き合った。
「何?」
心当たりでもあるのか。
「いや、嬢ちゃんは知らなくてもいいと思うぞ。
うん。」
「僕もその方がいいと思う…。」
「何よ?気になるじゃない。」
ジト目で二人を見る。
「あー…」
誤魔化せないと踏んだかロバートは視線を泳がせながらも口を開いた。
「男にはな、興奮した体をどうにかしなくちゃならねぇ時ってもんがあるんだ。」
「?」
「えーっと、つまり…女性の手を借りているのかなって。」
…。
な…!?
彼らの言いたい事を察して赤面してしまう。
つまりスチュワートはそういうことをしている為不在であるとな?
「伝わりました?」
こくこくと頷く。
そっかぁ、あまり考えた事がなかったけど…男性だものね…。
女性が必要な時もある…のかな。
「あいつが帰ってきてもそこは触れないでやれよ?」
こくこくと頷く。
朝帰りの男の人を捕まえて根掘り葉掘り聞く勇気は私にもない。
「それと、聞きたいことが…あっ!」
ロバートが何かを問おうとて後半変な声を出す。
後ろを見て何か驚いているので私も後ろを振り向けば女性二人を両腕に絡ませて通り過ぎていこうとするスチュワート!
….え?
お持ち帰り?
なんというか…うん、お持ち帰りはやめて欲しかったなぁ…。
しかも、二人??
二人も必要なの???そういうことって!!?
世の中まだまだ私の知らない事で満ちているようだ。
私が呆然とスチュワートを見ていると視線に気づいたのか私の方を向く。
そして、驚いたような顔をする。
…まあ、雇い主の娘にそんな所を見られたら驚きもするわな…。
女性二人がそんなスチュワートの顔を見て視線を追うように私を見た。
そして半ば無理矢理女性二人はスチュワートを歩かせて私達の所へやってくる。
….いやいや、来なくて結構ですから!
大丈夫!私何も見てないふりするからさ!!
私がアワアワしていると三人は目の前にやってきた。
「お…」
スチュワートが何やら言い訳を始めるより早く、両腕に絡みついた女性二人の方が口を開いた。
「えー?もしかしてこの子が例の??」
「趣味わりぃな!」
アワアワして意味もなく動かしていた手がひたっと止まった。
「嬢ちゃん!顔!!顔怖い!!!」
ロバートが中々失礼な事を言う。
私は努めて笑顔を作った。
初対面の方に座って挨拶は礼に欠く行為だと思いゆっくりと立ち上がる。
「紹介してくださるわよね?」
私はスチュワートに返事はひとつの質問をした。




