いざ行かん!王城へ!!
日間ランキング2位となりました!
読んでくださる全ての方に感謝をお送りします。
針の筵となってはいたが私は臆することなく堂々と授業を受け、一人で食事もした。
体育の授業ではペアを組む必要があったがなり手がおらず、先生と組むという有様だった。
今までの私なら切れていたか心が折れたかしていただろう。
しかし、私の心は波一つたっていなかった。
一人って素晴らしい!
私は密かに感動していた。
殿下とアリスだけでなくありとあらゆる他人と関わりたくないと感じてしまう私にとって遠巻きにされて仲間はずれの状態は寧ろ願ったり叶ったりだった。
しかし、周りの人はそんな私が気にくわない。
「なにあいつふてぶてしい!」
「なーに、明日には殿下に捨てられた惨めな女だよ」
そんな囁き声がする。
殿下一行には満面の笑みを向けた次の瞬間には唾を吐き捨てるかのような顔を私に見せるクラスメイト達になんの疑問も持たず…というか彼らの二面性に全く気づかず未来の王妃様のつもりか声をかけられればいちいち笑顔で手を振る始末だった。
遠くで他人として見てるぶんには面白い逸材だとは思う。
あれだ、舞台でみる芸人は面白くて好きだけどプライベートで付き合うにはうざそうと感じる感覚に似ている。
そうか、彼女は私の中では芸人枠なのか…。
そんな事をぼんやりと考えていたら本日の授業が終わってしまった。
「リナ嬢!」
殿下が大声で声をかけてきたので振り向いた。
鬼の形相で私を見ている。
君達が今ラブラブなのって私が発破かけたからってのが大きいんだけど、それって彼らの中ではどのように処理されたのだろうか。
今度リュド様に聞いてみよう。
「逃げるなよ!」
三下なセリフだと思ったが、そこをどうこういうつもりはない。
彼にとってそれが限界なのだから。
「勿論ですわ、王城にてお会い致しましょう!」
ほーほっほっほっ!と意味もなく高笑いをしながら私はクラスから出た。
背後で、クラスメイト達の殿下頑張って!のセリフを聴きながら…。
馬車にて自宅に戻った私はまず最初にお風呂に入った。
これから心身磨耗するのだ、今のうちにリラックスをしたい。
それに陛下との謁見するのだ。
小汚い格好では恥をかく。
なにより…
「格の違いを見せなくてはならないから…」
かつて好きだった着飾りというのもやらねばなるまい。
私は頭の中でたくさんのドレスやアクセサリーを思い浮かべる。
溺れる前はお風呂に入りながらドレスのコーディネートを考えるのが何より好きだった。
しかし…。
「あー、面倒臭い。」
頭の中でドレスが舞っては消え舞っては消えていく。
ドレスやアクセサリーの事となると途端に注意力散漫になってしまうのだ。
それでも考えねばとうんうん唸っているとメイド達が入ってきて体を磨いてくれる。
これから王城に行くと知っているので普段の倍は丁寧に磨いてくれる。
彼女達は必死だ。
私の希望に添えなければ折檻と思っているのだから。
目を覚ましてから一度だって折檻してないが、前はしょっちゅうやっていたのでビクビク度に変化はない。
まあ、今後も気に入らなかったらやると思うのでその緊張感は大事だ。
お風呂からあがって全身マッサージを受ける。
終わったらガウンを羽織ってドレスルームに移動する。
どうしよう、何にも考えてない。
メイド達は大人しく指示をまっている。
私のコーディネートは全権委任済だが、さすがに王城へ来て行くドレスを選ぶ勇気はないのだろう。
私はドレスルームで固まる。
いや、考えているのだ。
しかし、全く形にならない。
…あー、もういいや…。
遂に私は匙をなげた。
「任せる」
「え!?しかし…」
「コーディネートは全権委任済。なら、やりなさい。」
「か、畏まりました!」
真っ青になりながらメイド達がひたいを寄せ合い相談を始める。
「ど、どうする?」
「前回王城に来ていったドレスは…」
「ダメよ!」
「今回はなんか良くない呼び出しなんでしょ?」
「なら、とりあえず反省してます系は?」
「反省?お嬢様怒られるの?」
「ほら、例の池ぽちゃ関係で呼び出されるんでしょ?」
「あー、成る程、未来の王妃が溺れてごめんなさいって内容でいくのね?」
うんうんと彼女達は頷くが違う!
違うが真実を話すのもアレなので行く末を見守る。
「なら、水にひっかけて青は?」
「真逆に赤は?」
「…赤では反省らしさが出ないし、青でいきましょう。」
「ぶわっと広がる系はまずいかな?」
ぴらっと出された青いふりふりドレス。
「んー…。ゴージャスな感じがしちゃうし、反省なんだから地味なこっちかしら?」
対抗馬はマーメイドドレス。
「マーメイドドレスはお嬢様お似合いにならないし、こちらにしましょう。」
フリルたっぷりのドレスになった。
「アクセサリーは?」
「そうね、アクセサリーは…」
ここで私はある事を思い出して慌てて宝石箱をあける。
確かこの中に…!
「あ、ピアスはこれで。あと、チョーカーはこれ外せないから。」
「か、畏まりました!」
慌ててメイド達が頭を下る。
そしてまたひそひそ話す。
「やばい、聞こえてた!?」
「鞭打ち!?」
「嘘です!お嬢様はなんでもお似合いです!」
この子達も中々な逸材だ。
「それより、早急にコーディネートを!」
「そうでしたね!えーっとピアスはこれ?」
私が渡したピアスはとっても地味だった。
しかし…
「これって伝達魔法のピアスだよね?」
「やだ!これ一つで私のお給金一年分…!」
くらっと立ちくらみを起こすメイド。
「お嬢様、持ってらしたんですね。」
持ってましたよ。
地味だから完全にお蔵入りだったけど。
便利さよりも見た目重視だった過去の私だ。
「チョーカーもアレに決定なんですよね?」
「あのチョーカーも妙に派手よね。」
「もう、アクセサリーはあれでいいでしょ。」
「ごてごてしすぎてもね。」
「なら、髪型よ。髪型。」
「派手にいく?」
「お淑やかにいく?」
「派手にいくがいい人!」
一人手があがった。
「お淑やかがいい人!」
二人手があがった。
私の髪型は多数決で決まった。
こんなやりとりの後完成した私はまあまあ纏まりのとれたお嬢様ルックとなったのだった。
流れる金の髪は軽く巻いて真珠のカチューシャをつけておでこをだして、ゴバルトブルーのドレスがふわりと広がる。
耳には魔法のピアス、首には青く染まったチョーカー。
ほんのりと薄化粧を纏った私は、王城へ招かれたご令嬢そのもの、まさに見本といっていいだろう。
「ありがとう。」
私は軽くお礼を言う。
彼女達は私がお礼を言うと身を震わせて顔色が悪くなる。
以前の教育の賜物だろう。
…さて。
私はピアスに触れる。
久しぶりに使うからうまくできるかな…っと。
〈起動〉
心の中で呟けばピアスに込められた魔法が発動する。
私の脳内に私が伝達できる人間のリストが浮かぶ。
ピアスでは同じピアスを持つものにしか伝達できないという欠点がある。
ピアスを持っていても身につけてなければ勿論使えない。
私の知り合いでピアス付きの人間はたったの二人。
スチュワートとセバスだ。
しかし、例外でリュド様にも伝達できる。
何故なら彼は魔法使い、ピアス無しでこの魔法が使えるから。
私は脳内でメッセージを送りたい人でリュド様を選択する。
そして…
〈やっほー!〉
〈うわっ!〉
話しかけたら驚きの声が返ってきた。
勿論、脳内で、であり他人には聞こえない。
〈な、まさか、リナ嬢!?〉
〈そのまさか!〉
〈ピアスか?それとも魔法を習得したのか!?〉
〈ピアスに決まってるし…〉
〈あぁ、そうか…それで何の用だ。〉
〈久しぶりに魔法を使ったので単なる試し打ち。〉
〈この僕を試し打ちなんてものに使うとはいい度胸だ。〉
〈まぁまあ、全く用事がないわけではないのよ。〉
〈なんだよ?〉
〈今日の王城、貴方来る?〉
〈ああ、殿下が来いってさ。〉
〈それはよかった。私、今日はピアスつけていくから、なんかの時は合図するんでフォローよろしく。〉
〈ぐはっ!また面倒な役を…!〉
〈働くって約束したでしょ?では、後ほど王城でお会いしましょう!〉
私はすぐさま伝達魔法を切った。
異論は認めない。
そして、次にスチュワートを脳内で選択する。
〈スチュワート!〉
〈は、お嬢様。〉
〈リュド様とは大違いね。〉
落ち着いた彼の返答に思わず呟く。
〈は?〉
彼の不思議そうな声が頭の中で響いた。
心の中で呟く声だからか、普段より幾分感情を感じさせた。
〈なんでもないわ。それより王城に向かうわ。
準備は?〉
〈すでに整ってございます。〉
〈そう。なら、すぐにそちらに向かうわ〉
〈お待ち申し上げております。〉
その答えをきいて私は魔法を切った。
さあ、いよいよ王城に行き陛下との謁見だ!
うまく立ち回りアリスに王妃教育を施す!
そして、王妃になって貰う!
そうすれば、私は王妃にならずにすむし、国の要となった彼らは私のことなど忘れてくれよう!
さすれば私はこの世で一二を争うほどに嫌いな連中と縁を切れるというものだ。
物凄く面倒だし、本当は誰とも会わずに家で篭っていたいけど、今だけだから、頑張ろう!
そう、自分を鼓舞したのだった。




