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リュド様は演技派

日間一位…!?

何事でしょうか?

ありがとうございます!!

「おかえりなさいませ!」

使用人一同の出迎えを経て部屋に戻った。

お父様はまだ帰ってきていない。

宰相補佐官の仕事は忙しいのだ。

おそらく今頃王城で小間使いをしているのだろう。

時計を見ればまだ授業中だ。

しばらくは空き時間である。

「お嬢様、食事の準備が整いました。」

時間があけば当然食べ損ねたお昼を食べる。

スチュワートの先導で私は食堂に行き菜の花のパスタを食べた。

カフェテリアで食べる予定のメニューなのは当然食べ損ねたパスタに未練があったからだ。

食べ終わり、お茶で一服した後お風呂に入ってエステを受ける。

その後、メイド達に着替えを頼んだ。

結果かなり無難な姿となる。

派手すぎず地味過ぎないまさに貴族のご令嬢の見本のような服装だ。

「い、如何でしょう…?」

ビクビクとメイド三人が判定を待つ。

「いいんじゃない?」

鏡をチラ見して私は了承する。

そして見計らったように来客の旨、スチュワートから齎される。

「応接間に案内してアフタヌーンティーの準備を。」

「畏まりました。」

言ってスチュワートは下がり私は応接間に向かう。

「失礼しますわ」

「…忙しい僕を呼びつけて何の用?」

入室してソファに座ってすぐにその一言。

長い足と腕を組み薄紅色の瞳で私を冷ややかに見る。

「まあ、落ち着いてください。

用件は勿論殿下とアリス様の事です。」

「…で?」

「アリス様を王家に嫁がせる為の内緒話をしましょうという事です。」

「内緒話ねぇ…?何か僕にやれって?」

「ご名答!さすがは天才と謳われるリュド様ですわ。」

「ここは天才全く関係ないから。」

冷たい声で私の褒め言葉を否定する。

ここでスチュワートが入室してアフタヌーンティーを用意してくれる。

「で?何しろって?」

ツンケンした物言いに私は眉をひそめる。

…が、飲み込むことにした。

失恋したばかりで、しかもその片恋相手の結婚の片棒担ぎはけっこう精神的にくるのかもしれない。

簡単に協力を得られたからといって喜んでばかりはいられない。

私はリュド様がスコーンを手にとり口に運ぶのを見ながら話す。

「間違いなく、明日には王城から呼び出しがくるでしょう。

その際、私は『悪役』として立ち振る舞いアリスを王城に呼び寄せます。」

「それ、なんなの、悪役って?」

「当て馬って奴ですわ。『男爵令嬢ごときが殿下と結婚して王妃に!?キーー!許せない!格の違いを見せてやりますわ!!』って感じで動くのよ。」

「成る程。格の違いを見せるという名目で共に王妃教育を受ける事が出来ると。」

「まさしく。」

我が意を得たりと頷いた。

「でもそれだと本当に格の違いが如実に現れるんじゃない?」

「あら?私が格上とみなしてくださるの?」

「それ以上にお前の醜悪さが目立つがな。」

「……まあ、悪役を演じれば私の性格の悪さも際立ち、彼女が天使に見えるのは間違いないでしょうね。」

それもあって数多の格上男子を落とせたと私は思ってる。

「お前がいなくてもアリスは天使。これ確定。」

サンドイッチを頬張りながらリュド様は言う。

やはりお腹が空いていたようだ。

「………話を続けましょう。えーっと格上がどうのって話でしたわね、最初はどうしたってそうなりますわ。

伊達に10年王妃教育受けておりませんもの。」

「だったら…!」

「私は『悪役』。即ち倒すべき敵。敵が巨大ならば巨大な程努力のしがいがあるというものです。」

「しかし、一介の男爵令嬢には荷が重すぎる!」

「そこで貴方の出番です!」

びしっと指を指して言い放つ。

「挫けるアリス様に優しく声をかけてとにかく励ますのです!」

「え?それ僕の役目?殿下じゃなくて?」

「正確には貴方とザック様の役目です。

殿下はアリス様の支えになり私を一緒に倒す相棒となるべきです。

…そうなるように誘導してくださいね?」

「え?それ僕の仕事?」

「ええ、その為に呼んだのですから。」

「……なんで僕?」

「ザック様に出来ると?」

「無理だね。」

即答してくれた。

「殿下に直接頼めば?」

「殿下にとって私は今も純粋な悪役のまま。

何企んでんだあいつ状態です。

そんな私の話を聞くと思います?」

「……ないねぇ」

「でしょ?」

私は勝ち誇ったような顔をする。

あのメンバーで使えるのは貴方だけなのだ。

「つまり僕の仕事は王妃教育の最中落ち込むアリスをここぞというタイミングでザックと共に慰め、さらには殿下を鼓舞してお前を倒すよう話を持っていけということか。」

「ええそう、特に殿下。私は結構きつくいくからさぞお怒りになるでしょうが暴走しないようきっちり手綱を握ってくださいね。」

言われてリュド様は嫌そうな顔をした。

難しい役目だが、全うしておくれ。

「…さらにはお前のフォローもか?」

「あら?それは期待してなかったのですがそこまでしていただけるならありがたいですわ。」

自分で悪役を名乗りでたが私は役者ではないので完璧な演技などとてもではないが出来そうもない。

当然演じていくうちにボロだって出るだろう。

そこをフォローして貰えるならばありがたい話だ。

「悪役なんて一番重要で立ち回りもうまくないと出来ないでしょ?

フォローは必須だと思うよ?」

「まあ、そうなんですけどね。」

「なんでそんな役わざわざ名乗りでたかな?」

「メリットがありましたからね。」

最短でアリスを王妃に出来る。

それ即ち縁切りまで最速ってこと。

その為なら悪役だってやれる。

今だけ、ほんの一年と思えば奴らとの関わりも我慢出来る。

「メリットねぇ?僕にはどんなメリットがある?」

言われて考えてみると無いなぁ。

「…強いてあげるなら、優しくする過程でひょっとするとがある?」

「…あっていいの?」

「ダメです」

「でもさ、メリットがないんだもん、口説いたっていいよね?」

組んでいた足を直してこちらに身を乗り出してくる。

「….あの茶ば…堂々たる愛の告白を見た後でよくそれが言えますね?」

感心してしまう。

普通なら心折れて失恋を甘んじて受け入れないか?

「僕は君とは違うんだ」

「私とは違う?」

はて?意味がわからない。

「唇噛み締めて負けを甘んじて受け入れ、貴族としての立場をとった君と違って僕はまだチャンスを狙ってるよ?」

…え?

リュド様視点の私ってそんな可哀想な子なの?

「僕は決めたよ、アリスに告白する。

君の悪役ぶりが好調なら好調なほどアリスは絶不調なはず。

そこにつけこんで口説いてやる。」

親指の爪をガリガリ噛みながらリュド様は言う。

すごい、男の執念を見た気がした。

「文句ないよね?」

あるよ、タイミングさえかち合えばマジで流れる気がするもの。

「ダメです」

「それぐらいいいだろ!?」

バンとテーブルを叩き大きな音をたてた。

並んだアフタヌーンティーがガチャリと音をたてる。

「こっちはまだ心の整理がついつないんだ!

諦めがついてないんだよ!!わかるだろ!?お前なら!!!」

わからない。

全くわからないがそう言えない雰囲気だ。

「このままじゃ、一生気持ちに蹴りがつかない。

うまくいかなくても構わないんだ。

一言伝えて彼女なりの答えを聞きたいんだ。」

両手で顔を覆って彼は言う。

泣きそうな声…いや、もしかしたら見えないだけで泣いているのかもしれない。

彼からしたら、あの二人は両片思いのまま学園生活は終わり殿下は私と強制結婚、二人の甘酸っぱい恋は思い出として泡沫のごとく消え去るはずだった。

少なくても私が私のままならそうなる確率が高かった。

しかし、急転直下で二人は学園公認のカップルとなってしまう。

くっついた二人はいいが、学園卒業後に賭けていた二人の気持ちは宙ぶらりん状態なのだろう。

このままの気持ちではいられないと彼は訴えてくるのだ。

宙ぶらりんの気持ちがどれだけ苦しいかはわからないが申し訳なかったかなとは思う。

「なあ、一言伝えるだけでいいんだ、頼むよ…」

手が顔から離れた。

見えた表情は私が思っていたよりずっと酷かった。

『天才』と謳われいつも当然と偉そうな態度で逐一私に悪態をつく彼とは違った。

私に懇願する様は例えていうなら死にかけの子供の命を助けてくれと乞うしょぼくれた親のようでもあった。

そんな彼に抱いた感情は一言でいえば同情だった。

罪悪感も手伝った。

私にとって不利に動くことも重々承知。

だけどノーとは言えなかった。

「…お好きになさいな。どうせ結果は見えてます。」

そう言った瞬間。

「!?」

私は目を見開いた。

あのしょぼくれた表情が一転いつものふてぶてしい顔立ちとなったのだ。

え?え??

私の驚きを他所に彼はニヤリと笑った。

「言質はとったぞ?」

言われて私は漸く気づいた!

「え、演技ぃぃい!?」

なにこいつ!役者すぎ!!

「演技は君の専売特許じゃないんだよ。」

「し、信じられない…」

こいつにプライドはないのか?

ないんだろうな、だから泣けるし私に懇願だってできたのだ。

プライドが高い天才様は高々男爵令嬢に告白する為にこの世で一番毛嫌いしている私に泣き真似したのだ。

プライドも何もかもかなぐり捨てた行為には素直に賞賛を与えたい。

と、いうか私なら黙って告白したと思う。

それでも一応の筋を通すという男気まで見せてきた。

つまりはそれだけ本気ということ。

私には理解不能だ。

ま、万が一上手くいきそうなら全力で邪魔してやる。

「まあ、好きにしなさい。」

私はその話は終わりと言葉を吐き捨てる。

「それと、もう一つ…」

「なに?まだあるの?」

露骨に嫌そうな顔をしてくる。

「これよ」

言って私はチョーカーを見せびらかす。

「え?もう青から戻らない?」

彼は驚いた表情をする。

しかし、先程の件もあり本当に驚いているのかと疑ってしまう。

「信じられない…」

「それってそんなにやばいの?」

「そりゃ、精神不安定ですって宣伝しているものだし。

…それ、不良品じゃないの?ちょっと見せて」

言われて私はチョーカーを手渡す。

カチャカチャといじくるリュド様。

「…不良品ではなさそうだけど…」

「けど?」

「なんかこれデザインが一般と違うよね?」

「え?そうなの?」

「…わざわざ特注品を作らせたんじゃないの?」

「まさか!一分一秒争うなかそんな余裕ないし。」

「じゃあこれはどうしたの?」

「知らないわよ、神官長が渡してきたのをそのままつけてるだけ。」

「ふーーーん」

あ、信じてないな。

でも本当だし。デザインが他と違うって初耳だし。

「でもデザインが違うだけで効果は変わらないんでしょ?」

「うん、それは問題ないみたい。」

「ってことはさ」

「明々後日には…」

「その計算は飽きた。

ねえ、あんたから魔法協会に魔力コントロール講習の日程を早めるよう言ってくれない?」

「…そうだね…前なら君が死ぬことにメリットこそあれ助ける理由がなかったけど、今は一応同盟関係だしね。」

「同盟初日にして騙してくれたけどね。」

「あはは」

「うふふ」

しばし私達は朗らかに笑いあう。

ええ、朗らかに。

「で、どれくらい早めることが出来る?」

「そこまではわからないけど君の実情のヤバさはわかった。

可能な限り急がせるよ。」

「頼んだよ」

私の命は貴方にかかってると言っても過言ではない。

「じゃ、話は終わり?」

「ええ」

「じゃ、僕は忙しいから帰るよ。あ。見送りは結構。」

すっくと立ち上がるとさっさと彼は部屋から出て言った。

その直後スチュワートが入室してくる。

「あの無礼はよろしいので?」

「構わないわ」

どーでもいい。

別に無礼でもなんでもさ、見送りの時間分関わりが少なくなって万々歳だ。

同盟といっても所詮嫌いな人間なのだ。

互いにいがみ合っていたほうが逆にストレスが少なくていい。

私は冷めた紅茶を一口飲んだのだった。


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