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他言無用でお願いします

わぁぁぁ!

パチパチパチ!!

ひゅーひゅー


学園中から拍手喝采が沸き起こった。

これには流石に驚く。

だが、その中心人物はもっと驚いた。

『な、なんだ!?』

『ええ!?み、見られて!?』

そこに気づいた二人は見つめ合い真っ赤に染まり上がる。

『ええい!見るな!拍手するな!!

ちきしょう!聞こえないか!

アリス来い!』

『えっ!?』

殿下がアリスの手を引き強引に渡り廊下を渡り切ろうとする。

『えっ!?ランバルト、どこに行くの!?』

『誰もいない場所だ!』

『えっ!?えええ!?』

『邪魔されずゆ…』

ここで渡り廊下を渡りきり声が聞こえなくなった。

「残念、魔法の効果範囲から出ちゃった。」

「…と、いうか自分の声が拡大されていることに気づかないものなのでしょうか?」

「拡声と同時に隠密の魔法も使ったからね。」

「グッジョブ!」

私はサムズアップする。

「しかし、これで学園公認だな。」

いまだ騒然とする学園内。

学園中に響き渡った殿下の愛の告白とアリスの選んだ答えは暫く注目の的となろう。

「…今日中に王家に話がいくな。」

ザック様がちらっと私を見る。

「良い機会です。王妃教育の事もありますし、早急に手を打ちましょう。

…私は暫し悪役となりますので、これにて失礼。」

「は?」

「悪役?」

二人のクエスチョンには答えず一礼して私は踵を返す。

授業があるが、サボりだ、サボり!!

間違いなく私も注目の的だからね。

それに悪いが少し冷静になれそうもないのだ。

私は唇を噛み締める。


そして足早に廊下を歩き、校舎から出る。

馬車の前まで来た。

馬車の前にはスチュワートが直立不動で立っていた。

「お嬢様!」

スチュワートが少し驚きの声を無表情であげる。

かなり器用だ。

「先程の…」

「何も言わない。」

「…しかし…」

「何も言わない。二度も同じことを言わせない。」

「…は」

「さあ、帰るわよ」

「畏まりました。」

スチュワートは馬車の扉をあけて私を中へと入れてくれる。

スチュワートも乗り込み馬車は動きだした。

ちらっとスチュワートを見る。

相変わらず無表情でこちらを見ている。

何を考えているのかさっぱりわからない。

…。

限界だ。

うん、限界。

「……スチュワート?」

「は」

「貴方口は硬い方かしら?」

「お嬢様が命じられるのならばたとえ拷問で生爪を剥がされ、耳を削ぎ落とされましても、何も話さないと誓いましょう。」

「そこまで重くなくていいんだけど。

この馬車の防音性は?」

「この中では赤子の泣き声さえ完全にシャットアウトする特殊魔法がかかっております。」

「そう…なら、いいわ、色々限界なのよ…。

これから見る事聞く事は他言無用よ?

わかった?」

「は」

最初から姿勢がよかったにも関わらずさらに一段スチュワートは背筋を伸ばした。

何か秘密を打ち明けられると思っての行為。

そう、ある意味で間違ってはない。

だが大きく外している。

私は大きく息を吸って…吐いた。

そして何もかも吐き出す。

「あははははははは!!!」

絶叫とも言うべき笑い声が馬車の中で響き渡った。

「あははは!!ひーーーおかしい!!!」

抱腹絶倒とはまさに今の私のことだろう。

「ねえ、見た?見た??見てないか?

でも聞こえたんだよね!?」

意味もなくスチュワートを指指しながら言う。

「あの茶番!!あーーーーおかしーーーー!」

バンバンとクッションを叩きながら私は途切れ途切れに言う。

「ランバルトちょろいーーー!何それ、愛してもいない人と義務で結婚するのはおかしいって!

超平民的思考!!!

それに納得する殿下バカすぎぃぃい!!」

涙ちょちょ切らせながら爆笑は続く。

「大体、卒業後は国を導き磨耗する日々って何!?

そこまで大変かよ!国家運営!

うちは独裁国家じゃない!法案の可決は議会がやって王様は施行許可を出すか否決するかの二択だっつーの!

そんな程度で磨耗する神経ってどんだけか細いんだよ!!」

今度は怒鳴り散らす。

私のチョーカーの青色点滅の間隔が段々と短くなっていく。

「アリスもアリスよ!私は殿下に相応しくないって?

わかってるなら最初から近づくなっつーの!

ばぁぁぁぁぁか!!」

クッションを馬車のドアに投げつけた。

ぼよんと跳ねて私の腕に返ってくる。

「あーーーったく!しかもなんであんな目立つところで茶番をするかね!?

明日と言わず今日中に陛下とお父様の耳に入って呼び出しくらうじゃないの!」

がばっと立ち上がった。

「クソったれぇぇぇぇぇぇえ!!!!」

腹の底から大声で叫んだ。

チョーカーの点滅が止み、うっすら黄色くなってすぐに青色へと落ち着いた。

元の純金に戻る気配がない。

暫しの無言。

私の荒い呼吸だけが支配する。

ちらっとスチュワートを見れば無表情で私を見ていた。

この状況下でも無表情とは天晴れである。

私はすとんと座った。

「どうぞ、お茶です。」

馬車に備え付けられているマジックアイテム『フローズンボックス』から冷たいお茶をコップに注いで手渡してくれる。

「ありがと。」

私は落ち着きお茶を一気飲みする。

「他言無用でよろしく。」

「畏まりました。…しかし、ストレスが溜まっているのでは?」

「そりゃたまるわよ…」

私はコップをスチュワートに手渡しなが項垂れる。

「解消をお勧めします。」

「ストレス解消ってどうやるのよ…」

一瞬、私の頭の中にいる英雄様がモンスター狩ろうぜっ!と言ってくるが容赦なく却下する。

「…趣味とか…」

「趣味ねえ?」

私は己の趣味ってなんだろうと考えてみる。

溺れる前はとにかく着飾ることが好きだった。

従って買い物の量も半端なく多かった。

しかし、着飾ることに興味のもてない私は買い物にも興味をもてない。

「…私、無趣味だわ」

「でしたら新しくお待ちになられては?」

「新しく…」

頭の中で英雄様がモンスター狩りなんてどう?とか聞いてくる。

「刺繍や編み物が婦女子には人気と聞き及んでますが」

「出来なくはないけど、作品をどうするかという問題が浮上するのよ。」

貰い手がいない。

何が悲しくて自分で繕ったハンカチやセーターを使わないとならないのか。

「宜しければ私の方で対処しますが。」

「対処って具体的にどうするの?」

「…」

視線を外された。

さては捨てる気だったな。

「…まあ、私の目に触れなければどう扱っても構わないか…。

じゃあ、ストレス解消になるかはわからないけどちょっとやってみるから作品の処理は任せるわ。」

「おまかせください。…ところで」

「何?」

「そのチョーカーの色、戻りませんね。」

「う!」

私は指を引っ掛け見てみる。

がっつり青色になっていた。

これ貰ってまだ一日どころか半日も経ってないのに!

このままのペースでいけば明後日にはリーチがかかり明々後日には暴走という結末が待っている。

やだ!死亡フラグが立っている!

馬車の中でスチュワート相手に絡んでる場合じゃない!

「スチュワート!行き先変更!神殿に行くわよ!」

「畏まりました。」

「…それと、リュドに連絡を取って放課後家に一人で来いって伝えて。」

「何故かお伺いしても?」

「いいわけないでしょ?貴方はおとなしく私の言うことを聞けばいいの。」

「…畏まりました…」

渋々ながらメッセージを起動するスチュワート。

とりあえずはこれでよし。

私は小さく頷くと背もたれに体を預けた。

そして、目を閉じる。

軽く一眠りだ。

目を閉じながらハンカチに何を刺繍するか考える。

まずは簡単なものからがいいだろう。

…兎とか?クマとか??花の方がいいか?

モチーフ案が貧困すぎる。

我が家の書庫にその手の本があったかどうか…。


そうこうしているうちに神殿に到着する。

朝から満員御礼だった神殿だが、今は信徒は誰もいない。

やはり、朝は神官長の挨拶目当ての女性が集まっていただけだったんだな。

「…貴女様は…」

人の気配に気づいたのか祭壇の奥から神官が出てくる。

今朝方世話になった神官だった。

「リナリードナー・ミハルバーが来たと神官長に言付けて頂戴。」

「その必要はないよ。」

やはり祭壇の奥から声がした。

声の主こそ神官長、ジョセフその人だった。

「あら?随分とタイミングがいい登場ね。」

「君の甘い香りに誘われんだよ。」

「そんなことより、話せるかしら?」

「…流すね…結構今のぐっとくるって女性多いんだけど…」

「そんなセリフよりもっとインパクトのあるセリフを今日聞きましたので。」

「?」

「それより早く案内してくださる?」

「畏まりましたっと。」

彼はおどけて私を案内する。

行き先は今朝と同じ懺悔室。

二人別々の扉をくぐって同じ部屋に入る。

仕切りの向こう側とこちら側に分かれて座った。

椅子は今朝と同じだった。

早めの変更を願う。

「それで、朝に会ったばかりなのにまた会いに来たのは私が恋しかったからかい?」

「冗談は顔だけにしてくださる?」

「…つれないなぁ…」

「それより、これ!」

私はチョーカーを外して仕切りの隙間に差し入れる。

「うわっ!もう青のまま戻らないの!?」

「やっぱり戻らないのはまずいのね?」

「かなり。このままのペースでいくと明々後日には…」

「その計算をしたから今来たのよ!

なんとかしなさい!!」

私は強く求めた。

「そう言われてもねぇ。魔法協会はお役所仕事だから今日あげた報告書が上の決済通って日程組まれるのは…普段だと一ヶ月後…ですね。」

「遅い!」

「遅いと言われましても…」

カシャリ

白金硬貨を隙間からちらつかせた。

しかし…

「すみませんが、神殿からは多少急ぐよう要請することは出来るのですがそれ以上は…」

と、いいつつ手を伸ばしてくるのでさっとお金は引っ込める。

軽い舌打ちが聞こえた。

「なんともならない?」

「…魔法協会にツテはないのですか?」

「ツテ…知り合いの魔法使いなんて…リュドくらいだわ。」

「それでいいじゃないですか!

彼に頼めば融通してくれるでしょう!

なんてったって魔法師団長の息子で天才侯爵子息様なのですから!」

「なんか嫌味入ってない?」

「気のせいですよ。」

「まあ、奴が使えるなら使うか。」

私は納得する。

「それでもどの程度短く出来るかはわかりませんからね。

心の安定を心がけてください。」

「そうしたいんだけどね…」

私だって好き好んで波風たててる訳ではない。

「深呼吸ですよ、深呼吸。」

「荒波に揉まれている最中はそんな余裕ないのよね。」

「荒波に揉まれない生活を送ってください。」

「それは無理な相談ね。」

もう逃げられないところに私は立っている。

「…でしたらせめてストレス因子に極力近づかない、ストレス溜めない、溜め込んだストレスは小まめに発散を心がけてください。」

「………善処するわ……」

そう言ってみたけど出来る気がしない。

「大体なんでそんなストレス過多な生活しているんですか?」

なんでって…そもそもの原因は…

「……あれだ、気にくわない女を一人殺そうとしたのが運の尽きだったんだわ。」

「…あれ?今さらっと凄い告白しませんでした?」

「知らなかったの?私の悪事は結構広まってると思っていたけど。」

「さすがにそれは知らなかったですね。」

「そうなの。私達の初対面の日が殺人未遂三日後だったわ。」

「結構最近の話ですか。」

「ええ。気にくわない女を池に突き落としたんだけど、失敗して私も池に落ちたのよ」

「間抜けですねぇ」

「うっさい!」

仕切りの向こう側から呆れた声が聞こえた。

「きっとその時頭でも打って…後天的魔法使いになったのよ。」

「そんな訳ありますか。それが真実なら私ちょっと溺れてきます。」

「でも目が覚めたら魔力があったのよ?

原因はそれでしょう。」

「ターニングポイントらしいのは認めますが、溺れたら魔法使いなんて事はありませんから。」

「まあ…確かに」

もし溺れたら魔法使いになれるのなら一緒に溺れたアリスも魔法使いだ。

だが今のところその予兆はない。

「そのあたりで何かあったのか貴女方を助けた方に何か聞いた方が早いのでは?」

「………あ」

「なんです?」

「そういえば私、誰に助けて貰ったのか知らない!」

今の今までそこに頭が回ってなかった。

私とアリスは二人して溺れていたのだ。

と、言う事は助けてくれた人がいるはず。

だけど私はそれが誰か知らないし、助けてくれるような人に心当たりもない。

アリスなら殿下にザック様、リュド様と助けてくれる人が揃っているがついでに私も助けてくれるかといえば、私達の普段の関係を思えば無いだろう。

これ幸いと放っておくに一万票賭けてもいい。

「……まあ、公爵令嬢を助けたんです。

そのうち謝礼目当てに名乗り出るでしょう。」

「貴方じゃないんだから。」

私はため息混じりに言うのだった。

「さて、私はそろそろ行くわ。」

カタンと音をたてて私は席を立つ。

「おや、残念。貴女との話はとても楽しいのですが。」

「私は別に?」

「くくく…そういうところが実にいい。」

私はこんな阿保に構ってられないのでさっさとドアをあけて部屋から出る。

数秒遅れて神官長も出てきた。

「お送りしますよ。」

「忙しいでしょうから結構よ。」

「いえいえお得意様ですから。」

金蔓か。

私は眉をひそめた。

早急に彼の弱みを握らねば。

当たり前のように私をエスコートして一階に上がってくる。

ここで離れるが、彼は馬車のところまで送ってくれる。

馬車ではスチュワートが待っていた。

「お待ちしておりました。」

深々と頭を下げて彼は馬車のドアを開けた。

私は躊躇いなく馬車の中に入る。

ドアがバタンとしまった。

「神官長様、お見送りありがとうございました。

それでは失礼致します。」

そう言ってスチュワートは馬車の反対側に回りドアを開けて乗り込んだ。

馬車はすぐに走り出す。

窓から覗くと神官長は口元に手をやり姿が見えなくなるまで見送ってくれた。




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