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サスティナブル・バディ  作者: 夜野 綾


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25/62

Itinerary: 4日目 その8

 気晴らしに適当な話をしながら、二人は南下を続けた。どこそこのラーメンがおいしかったとか、ハコダテのあの店は他に何がおいしいのかとか。

 雪はなくなり、暖房は弱められた。

 流れていく景色は、相変わらず田舎の中だ。太陽は傾き始めてはいたが、まだ夕暮れには少しだけ間があった。

 話すこともなくなった頃、今野は世間話のようなノリで時宗に話を振った。

「なぁお前、なんで探偵やってんだ?」

 時宗は集中力が切れ、眠くなってきていた。少し前の休憩所で買ったメロンパンを食べているところだった。

 チョコレートがかかったメロンパンは、さくさくした外側がおいしい。ぼんやりと一口分ちぎって口元に持っていってやると、今野はステアリングから手を離さないまま、ひな鳥のようにパクンと食べた。その仕草が気に入って、時宗はさっきから自分はあまり食べず、今野の口元を眺めてぼけっとしている。

「んまいなこれ」

「あぁ……んまいな。もう一個買ってあるけど食べるか?」

「食う」

 いくらトラブルがあっても、差し当たり二人はトウキョウに向かう以外にすることがない。今から緊張し続けていたら、トウキョウに行ってから精神がもたない。そんなこんなで現在、二人の間には、妙なのんびり感が漂っていた。

「で? 叔父さんが所長さんって言ったべ? なんでそこで仕事するようになった?」

 お前、ほんとに俺に慣れてきたな。

 時宗はぼんやり思った。最初は無口な奴だと思ったのだが、けっこう野次馬根性があるらしい。

「まぁ……成り行きだよ」

「オレの仕事だって成り行きだ。探偵やってる奴なんて、初めて見た」

「大部分の人間は探偵なんか見たことないだろ」

 もう一口、パンをちぎって今野に食べさせる。弥二郎のことがなけりゃ、この旅は楽しいんだけどな。

「探偵って、どうやったらなれんだ?」

「どうって……俺の場合は単純に、叔父の手伝いやってるだけだからな……」

 なんで探偵なんかやってるんだろう。

 それは時宗が聞きたい疑問だ。

 そもそも弥二郎が、なぜ探偵をやっているのかわからない。仕事に情熱があるようには見えないし。宣伝活動もしていないどころか、この間、ものすごく難しい顔で端末をいじっているので横からのぞいたら、パズルゲームをやってるだけだった。

 まさか、ハードボイルド気取りの暇つぶしじゃないだろうな?

 弥二郎の場合、可能性がゼロではないところが怖い。南条グループのどの会社の株を持っているのか教えられていないが、そっちの利益でのほほんと暮らしているんじゃないかと時宗は疑っている。

 そんな弥二郎に『雇われている』ことになっている時宗も、給料はもらっているが、仕事がそこまで多いわけじゃない。まぁ……長期でこっそり続けているものはあるが、報酬が発生する仕事ではない。

 もこもこ動く今野の口元をぼんやり眺めながら、時宗はなんだか空しくなった。浮草のような仕事を続けていく今の人生に、行きつく先はあるのだろうか。唯から数ヶ月に一回情報チップを受け取り、地道に分析して、でも、それが思った通りの結果になるかどうかは保証されていないのだ。まして今、このタイミング。

 弥二郎を恨めしく思うべきではないのは理解しているのだが、せめてトウキョウから出るのはもう少し後にさせてほしかった。すべてが手遅れになったとしたら。自分がやってきたことが無駄に終わるとしたら。

 ずっと、ずっと今のように、押し潰された搾りかすみたいな気分で生きていかなければいけないのだろうか。

 気持ちを切り替えるべきなのはわかっていた。チップの分析が数日遅れたぐらいで、全部ダメになるようなものじゃない。マキはストライキについて楽観的だった。現場に近い人間があんなふうに言ったということは、まだ余裕があるはずだ。

 そう自分に言い聞かせても、長年、心を蝕んできた淀みがすぐに消えるわけではない。自分はこの先、どう生きていくんだろうか。失った場所を取り返すことは、できるんだろうか。懐かしい、大切な場所が消滅してしまう前に、再び還れるんだろうか。

──どこに行っていたの?──

──お母様、遅くなってごめんなさい。新しい岩に寝っ転がってたら眠くなっちゃった。触ったら岩があったかくなって、おいでって言ったの──

──あら、じゃあ、あとでその場所を教えてね。おじい様がお待ちよ。食堂で一緒におやつを頂きましょう──

「なんで探偵なんかやってんだろうな……」

 ぽつんと呟くと、今野はお茶を飲みながら横目で時宗を見た。

「面白い仕事だと思うけどな。なぁ浮気調査とか、すんのか?」

「浮気……まぁ、時々やるな。実際はひたすら張り込みやってるだけの、地味な仕事だ」

「ふ~ん」

 溜息をつき、パンを一口ちぎって自分の口に放り込む。

「俺の場合は、なんていうか、仕方なくやってる部分もあるしな」

 今野の運転を眺める。仕事が嫌だとはいえ、運転自体は本当に好きなのだろう。今野はバックミラーを確認すると、再び滑らかに車線変更をした。ギアチェンジの仕草が綺麗だ。レバーの上に置かれた今野の手を見ながら、時宗は思う。自分には、本当に好きなことがない。友人もほとんどおらず、趣味らしい趣味もない。

 今野は、追い越しを終えて走行車線に戻ると、しばらく黙っていた。やがて静かに言う。

「オレも、仕方なくこの仕事やってる。旅は道連れって言うべ? やなことしゃべってみたら、いんでないか?」

「そうか? ……まぁ、お前の身の上話を聞いておいて俺は話さないってのも不公平か……」

 時宗はお茶を一口飲み、座席の上で座り直した。

「俺の話も、けっこう長いぞ?」

「暇つぶしにはちょうどいいべ?」

 今野はそう言うと、にやりと笑った。ほんの少し気が軽くなり、時宗はぽつぽつ話し始めた。

「なんていうか……。俺の実家はかなりの金持ちなんだ。会社をいくつも持ってて……多分、お前のおじいさんより大規模だと思う」

「へぇ。お前そんなんだけど、御曹司なんか」

「その言い方は好きじゃないんだが、まぁ、そういうことだな。で、家族関係は最悪なんだ。俺の父親ってのがとにかく性格が悪くて、なんでも威圧的に自分で物事を進めるタイプで……逆らう者は一切許さない。モラハラとパワハラの鬼みたいな奴。誰も自分に逆らえないと思って、やりたい放題してる。

 祖父もまぁまぁ頑固なんだが、経営のセンスは抜群だったし、信念があって筋が通っていたから、部下にも忠誠心があった。ところがその息子である俺の父親は、経営のセンスもない。さらに、自分におべっか使う奴以外はみんな追い出す。

 で、まず結婚する時に一悶着あった。

 父がそんなんだから、祖父はなんとかしようと、育ちが良くて真面目な女性を見つけて結婚させようとした。父はそれが嫌で、反発した。当時付き合ってた女性……その……派手に遊ぶ夜の店に通って、そこで恋人になった女性……その人をわざと妊娠させて、責任を取るという名目でそっちと結婚したんだ。女性の方も、金持ちと結婚できるってんで、その話に乗った。

 ところがいざ結婚してみたら、ま~モラハラがすごい上に一族の中にも味方が誰もいない。嫌になったその女性は息子を置いて、大金をせしめてさっさと逃げ出した。最初の結婚が失敗したことで、父親は次はしぶしぶ祖父が選んだ女性と結婚した。それが……俺の母だ」

「お母さん、いい人だったんか」

「あぁ。真面目で、一生懸命、夫を愛そうとした。でも、そういう事情だからどうにもならなかった。今時、政略結婚なんか……母も拒否すりゃよかったのに。父が一人よがりでパワハラ体質なくせに無能なせいで、部下たちがだんだん、母に助言を求めたり、祖父に渡りをつけられないか頼むようになったってのも、よくなかった。

 結果、母は身一つで屋敷から追い出されるように離婚された。俺の親権をなんとか取ろうと頑張ってくれたんだが、父の方が社会的権力は圧倒的に強い。政治家やメディアなんかには、強いリーダーとして父は評価される部分もあったからな。俺が初等五年の時だ。母親は何度も何度も俺に謝って、振り返りながら、家を出ていった。今どこにいるのか……あれ以来、俺は一度も母に会っていない」

 今野は黙って聞いていた。

「俺には家庭教師が五人ぐらいつけられて、ずっと監視されてる状態だった。母が出ていってから高等二年まで、俺の記憶はほとんどない。ただ機械みたいに勉強してるだけだった。

 叔父はずっと俺を心配してくれて、よく屋敷に遊びに来た。すでに探偵稼業を始めていて、不規則な時間に体が空く。父親のいない時間を狙ってやってきては、叔父は仕事の時とかの面白い話をして、一緒に飯を食べて帰っていった。俺も時々は叔父のところに行って、しばらく泊まったりしてた。

 そして、俺が高等二年の時、大事件が起こった」

 時宗はお茶を飲んだ。そう、弥二郎はいつも心配してくれた。だから孤独について文句を言うべきじゃない。

「その日の夕方、俺が学校から帰ってくると、家の前に訪問者がいた。父の部下のひとりだった。その人はちゃんとスーツを着ていたし、仕事上の用事で家に来たことがあったから、警備も疑わなかった。

 その人は俺に近づいて、父が在宅かどうか尋ねてきた。知らないと俺が答えた時、その人の右手に……構えた銃が見えた。警備の死角で俺は銃口を突き付けられて、指示されるまま、仲良く話すふりで彼の車へ行き……要するに……誘拐された」

 今野の眉が上がったが、特に感想は出てこなかったので、時宗は続けた。

「車に乗った途端にテーザーを撃ち込まれて、気がついた時には、俺は縛り上げられて、どっかの倉庫に転がされてた」

 自分のことを話しながら、やっぱり、と思った。やっぱり、今になってもまだ、感情がうまく出てこない。頭では覚えているし、誰かに触れられるのを体が拒否するのだが、肝心の記憶自体はどこか他人事だ。あの時、確かに恐怖感があったのに。体が震え、冷や汗でシャツがぐっしょり濡れていた。

 ワイシャツの生地越しに感じた、コンクリートの床の感触さえ思い出せるのに。

 でも今、自分のことを語ろうとしても、ほうっておいた端末がつまらない動画を自動再生したように、情景はただ、頭の中を流れるだけだ。

「俺を誘拐した人は……通話で父と話していた。自分の要求が通らないのであれば、俺がどうなるか、それを説明していた。

 条件は……身代金じゃなかった」

 車内に沈黙が流れる。

 喉に言葉が引っかかったように、時宗は次の言葉を出しあぐねていた。何を、どう説明すればいいのだろう。情景は相変わらず自動的に流れていくのに。

 スーツを着た男が、押し殺した声で通話を続けている。体の下になった左腕がしびれてきて、時宗は身じろぎをする。テーザーを当てられた脇腹に鋭い痛みが走る。

 潮の匂いがかすかにしていた。海が近いのかもしれない。トウキョウの超高層建築群の真ん中ではない、ということは確実だ。

 高いところにある窓から、夕暮れの光が射しこんでいた。

「身代金が目的でないなら、何が欲しかったんだ?」

 今野の質問に、時宗は窓の外を見た。

「父の辞任さ。パワハラと脱税、横領、背任。……他にも色々。自分がやったことすべてを記者会見で告白して辞任すること。父がそれを受け入れなければ、俺は切り刻まれる」

 こくんと今野が唾を飲み込んだ。

「で、父は一時間待てと言って通話を切った。警察を動かすためか、あるいは条件について検討するためか……当時の俺はそんなことを考えた。俺を助ける可能性について、少しは……考えてくれたのかと」

 甘い考えを持った自分は、幼かったのだろうか。あるいはほんの少しでも、血のつながりを信じたかったのだろうか。

「通話を切った後、俺と犯人とは、ただ、時間が過ぎるのを待っていた。そのうち、犯人が言った。君は、父親の言いなりなのか、と。正しいことを行う気がないなんて、父親と共犯だと。

 それで初めて、俺は……その人の顔を正面から見た」

 あの顔をどう説明すればいいのだろうか。憎しみが煮詰められすぎて制御できなくなったがために、その暴走を止めることを諦めた絶望、とでも言えるだろうか。

「俺は、答えることができなかった。当時の俺は成績について、進路について、友人関係について、ありとあらゆることで怒鳴られ続け、父に圧し潰されそうになっていた。犯人の言葉どおり、俺は言いなりだったのかもしれない。父のところへ帰りたいのか、それとも死にたいのか、俺はわからなくなっていた。黙ったまま、俺は転がってた。

 一時間が経って、犯人はもう一度、父と通話した。

 俺は隣で聞いていた。

 父は……グループ全体を率いる立場の自分が犯罪なんぞに屈するものか、と言った。息子もその重要性は理解している。私の立場と重責を守るためなら、息子は死を受け入れるだろう、だってさ。

 そうして、通話は父の方からガチャ切りされた」

 お茶を一口飲んで、時宗はぼんやりと前を見た。

「俺は……何をやってたんだろうな。勉強すれば何とかなるとか、専門院に行けば少しは自由になれるとか、なんにも意味なんかなかった。

 犯人の方も、たぶん俺を誘拐する前から、もう、おかしくなってたんだと思う。

 お互いにどうしたらいいか、わからないまま時間だけ過ぎて。

 突然、倉庫のドアと窓がブチ破られた。

 叔父と、警備の人たちが突入してきて、事態は急変した」

 目をつぶり、時宗は息を吐いた。

「犯人はパニックを起こして銃を出し、俺に突きつけて盾にした。

 必死で犯人を説得しようとしてくれたのは、叔父だった。

 叔父は……犯人を知っていた。犯人のその人は、内部告発に失敗してクビになったところだった。

 ただ失敗しただけじゃない。父はその人の言葉がメディアに流れてもダメージがないように、金を積んでいた。その人の社会的な信頼性をなくすために、徹底的な手を打っていた。浮気のでっちあげ写真が撮られ、勤務態度は最低だったという嘘の証言がネットに流され、すさまじいパワハラをしていたのは、その人だということになっていた……その人は再就職先を失っただけでなく、奥さんに離婚され、子供に会えなくされ、社会的に抹殺されたんだ。

 叔父は、なんとか犯人を説得して、俺だけでも解放させようとした。

 最後の最後に、犯人はそれに応じた。

 ように見えた。

 でもそれは、叔父の油断を狙ったものでしかなかった。

 叔父が手を差し伸べた、その瞬間に俺は腹を撃たれた。床に倒れ込んだ俺に見えたのは、その犯人が、自分の頭を銃で撃ちぬくところだった」

 今野は一言もしゃべらなかった。車の振動を体に感じながら、ひたすら窓の外を見る。

「父は別に、俺のことを考えて一時間の猶予を要求したわけじゃなかった。俺が誘拐されるのをちょうど見ていた叔父が、父を説得しただけだったんだ。即答だけは待て。自分が俺を見つけて助け出す。その時間だけでもくれと。父は最初から迷わず俺を切り捨てる気しかなかった。

 退院して家に戻った俺は、父に食ってかかった。せめて不正をやめろって。でも、父は自分の不正を糾弾されたことより……俺が死ななかったことに激怒していた。しばらく実家にいたけど、やっぱり耐えられなくなって……。専門院を受験する直前に、父は専攻を押し付けてきた。要は、卒業したら父の言う通りの仕事をしろっていう命令だ。で、また大喧嘩をし、家を出て叔父と暮らすようになった。

 ……この世界では、誰かの人生を踏みにじっても何とも思わない奴が、自分にとって快適な正義を作り出す。世界は、その正義によって動かされている。

 どいつもこいつも……自分が正しいと思うなら、そのために他人を蹴散らしてもいいと思ってる」

──私は一族の当主として、お前の人生を正しいものにする義務がある。社会のことを知らんくせに、偉そうな口をきく権利があると思っているのか。育ててやった恩も忘れて。犬でさえ三日飼えば恩を忘れないと言う。お前は犬以下だな──

 ああ。あんたは本当に自分が俺を育てたと思っているのか?

──君は悪くない。ただ、私の正しさをわかってほしいだけなんだ。君は、父親の不正について自分の考えを持つってことはないのか? 正しい考えを持たなければ、君は生きている価値もないと思わないのか──

 ああ。あんたのことは気の毒だよ。でもじゃあ、俺はどうなるんだよ。


 黙りこくった二人を乗せ、車はトチギに入ろうとしていた。

 太陽は傾き、空は赤みを増してきている。

 血に濡れた指先が、俺の頬を撫でる。正しさはいつでも銃声と共に、俺の体にめり込んでくる。

 絞り出すように、時宗は声に出して自分に言い聞かせる。

「でも、大丈夫だ。圧し潰される寸前に、手を差し伸べてくれたのは叔父の弥二郎だった。だから、孤独について文句を言うべきじゃない」

 突然、今野が手を伸ばして時宗の髪をくしゃりとかき混ぜた。乱暴だけれど、優しい仕草だった。時宗は驚いたが、なぜか、嫌悪感や恐怖はなかった。ずっと、誰かに触れられるのは無理だったのに。

「お前そんだけ頑張ってんだ。文句言ってもいいべ? いいふりこきなんかしなくていい。誰もいねぇならオレ友だちになってやっから。な?」

「早すぎるだろ。お前の人生が、この仕事で終わりにならなかったらじゃなかったのか?」

「人手不足なんだから、採用前倒しでいんでないか? オレも……友だち認定できないまんま死んでも、しょうがねぇし」

「今野……」

「海斗でいい」

 不意に何かが込み上げてきて、時宗は慌てて今野から体を離した。助手席の窓の外を眺める。ずっとずっと、道の両脇は防音・防風のために林が続いている。大地を見通すことはできないけれど、車は確実に南に向かっている。

 海斗と一緒なら、もしかしたら、俺たちは広く自由な場所へ行きつけるかもしれない。

 鼻の奥が、詰まったようにツンとなっていた。何年も何年もこらえていたものが目から落ちそうだ。時宗はそれが零れないように目を精一杯見開き、息を殺して心の波が静まるのを待った。

 三十分以上経って、時宗は絞り出すように声を出した。

「時雄って……いうのは探偵の仕事してるときの通り名だ。俺の名前、ほんとは時宗っていうんだ」

「お前も名前、嘘ついてたんか!」

 びっくりしたような海斗の声に、時宗は振り向いた。

「俺は……ほら、仕事だから」

「オレだって仕事だからだ! エラい剣幕でオレに怒ったけど、お前だってそんな資格なかったんでねぇか!」

「……すまん」

「ほんっとしょうがねぇなお前」

「悪かったってば。お互い、仕方なかったってことで。お前に怒ったのは謝る。な? 晩飯おごるからさ」

「……ほんとか?」

「あぁ」

「ラーメンに炒飯つけていいか?」

「……うん」

「チャーシュー足してもいいか?」

「…………わかった」

「じゃあこの話はおしまいだ。トウキョウ行ったらお前の好きなラーメン屋を教えれ」

 そう言って、海斗は時宗を励ますように笑った。


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